2話 水属性の勇者
日が昇り目を覚ます。
主導権はカルミナのままだ、昨日の森に向かいながら話してくる。
今日は簡単な魔法を教える。
(どんな魔法を教えてくれるんだ?)
まあ、教える前に魔力系統を見なきゃならんけどな。
(系統は何で分かるんだ?)
水に魔力を流してその変化で確認する。
水の温度が上がるか蒸発すれば『火』で、水が凍るか水位が増せば『水』、波紋が出来たら『風』、植物か苔が生えれば『木』、水が濁るか泥になれば『土』あと『光』と『闇』属性があるが変化が分かりずらい。
着いたぞ。
(以外と広いな)
そりゃあ広いだろうよ、森の中でも結構な大きさの湖だからな。
大きさはゆうに1kmを超えてるだろう。
朝日が木々の隙間から湖に差し煌めいている、水底が見える程透き通っていて幻想的という言葉がよく合う。
”所有権の変更を確認”
(さて、まずは魔力の放出からだな)
どうすればいい?
(魔力は血と同じで体を流れてる、その流れを手の先から出すイメージだ)
コントロールとかは必要無いのか?
(適正を見るだけだから今は必要無い)
そうか。
魔力の流れを感じる、か。
目をつぶり深呼吸をして心を落ち着かせる。
すると少しだが何かが流れているのを感じた。
意識を集中させたまま、左手を湖に向け、流れを手先に、少しの虚脱感があり、湖の一部が凍りついた。
〔スキル”魔力操作”を獲得〕
(一回目で成功か、湖の一部が凍ったから、水属性だな、ついでに魔力操作も獲得したみたいだ)
成功したのか。
(最初に教えるのは氷弾だ)
どんな魔法だ?
(魔力で氷を作り打ち出す魔法)
簡単なのか?
(初級魔法だから難しくは無い)
詠唱とかってあるのか?
(良く知ってるな、確かにある、俺に続いて詠唱しろ)
安全の為に木の方を向いてっと。
詠唱か、小っ恥ずかしいな。
手先を気の方へ向け詠唱を開始する。
(我が身体を流るる魔力よ雹の体を成し敵を打ち払え氷弾)
「我が身体を流るる魔力よ雹の体を成し敵を打ち払え氷弾」
テニスボール程の氷塊が木に向かっていく。
約1m幅の木を貫通し2本目の幹を抉った。
えげつないな。
(…中々の威力だな)
やっぱり威力が大きいよな?
(ああ、一回目で出していい威力じゃねえ)
よし、ほかの魔法教えてくれ。
(フッ、分かった)
できるだけ簡単なヤツでな。
(分かってるよ、そうだなぁ、順序で言えば創氷だな)
どんな魔法だ?
(そのまんまだよ、氷を作り出す魔法だ、形はイメージに左右されるが割と使い勝手のいい魔法だと聞く)
聞くってお前は使った事ないのか?
(無い訳じゃないが、系統的に水魔法は苦手なんだよ)
へー、やっぱり苦手系統とか有るんだ。
(まあな、詠唱は知ってるから安心しろ)
それならいいが。
(我が身に宿る魔力よ氷を創造せん創氷)
「我が身に宿る魔力よ氷を創造せん創氷」
2m位の大きさを持つ氷塊が地面から出てきた。
それと同時に目眩がした。
症状としては立ちくらみが近いかも知れない。
(大丈夫か?)
大丈夫じゃ無いな…
頭痛もするし、上手く立てない…
変わってくれ。
(りょーかい)
”所有権の変更を確認”
(この後はどうするんだ?)
町に戻って日用品を買う。
(それだけか?)
ああ、そろそろ契約期間が終わるからな。
(契約?何の?)
ギルドから受けたこの街の護衛。
(へぇー)
街に戻ると門番に声を掛けられる。
「カルミナさん、今日もありがとうございます、近くでゴブリンの群れが発見されたようです、ギルドの方が探してましたよ」
「ああ、分かった向かってみるよ」
他愛ない会話を交わし。
カルミナはギルドに向かって行った。
ギルトは中世の酒場の様な外見をしている。
(ギルドって以外と大きいんだな)
ここのギルドは大きい方だから特にデカい。
ギルドに入ると受付の女性が声を掛けてきた。
「カルミナさん、来てくれたんですね、ギルマスをお呼びしますね」
「済まないな、えっと…」
「レミリナです! レミリナ! いい加減に覚えて下さいよ!」
受付のレミリナは頬を膨らませ怒りながらそう言った。
「ハイハイ、レミリナね覚えた覚えた」
(ちっ、女ったらしが…)
聞こえてるぞ。
(マジか、すまん)
雪乃は聞こえないように呟いたつもりだったのだろうが、カルミナに聞こえていた。
数分待ってギルドの2階に案内された。
「来てくれて感謝するカルミナくん」
「別に構いませんよ、特に問題は無かったですから」
「ここを訪ねてきたということは知ってると思う、ゴブリンの群れがブエサ湖の近くで見つかった、今のところ上位種は確認されていないが群れの規模からして近いうちに発生するだろう、そうなる前に討伐を頼みたい」
「期限はいつまでですか?」
「期限か…そうだな一週間以内のうちに依頼を受けるか決めてくれ」
「そういう事じゃ無いんだが…まあいいか、その以来受けよう」
「そうか、受けてくれるのか、良かった」
「じゃあ、明日行ってきますね」
そう言い残し部屋を出た。
(そんな簡単に受けていいのか?)
ああ、お前の練習相手にはもってこいだろ?
(…俺一人?)
俺は手を出さないからな。
(…せめて武器をくれ)
お前は確か杖術Aを持っていたよな?
杖でいいか?
(ああ、構わない、だが、仕込杖だともっといい)
仕込杖か…物によっては高いんだよなぁ、はぁ、近くの武具屋見に行くか…
(済まないな)
別に奢る訳じゃねえからな、貸1つな。
(出世払いで)
チッ、そろそろだな。
━━━ゴーメト武具店━━━
初級武器から上級までほぼ全ての武器防具を取り扱っている
(凄いな色々ある)
だろ、ここの店は何でもあるんだ。
「よっ、久しぶりだなゴーメト」
「あ?おっ、カルミナか、今日は何の用だ?」
「ああ、いい杖を探していてな」
「魔法の杖か?」
「いや、仕込杖だ」
「また珍しい物を探してるな…悪いがあんまいい品は無いぞ?」
「そうか、まあ、最悪ただの杖でもいい」
(おいぃ!?)
いいから黙れ。
「まあ、掘り出し物ならある、が俺でも扱えねえんだ」
「ふむ、どんな物だ?」
「これだ、材質は聖木だが不自然に魔石が着いてるんだ、俺の見立てだと仕込杖だと思うんだが抜けねえんだよな」
そう言って店の奥から出して来たのは質素な杖。
いや、杖と言うよりただの棒が近いか。
だが、魔石が先っぽにくっついてる。
(おいこれいくらだ?)
「ゴーメトこれ、いくらだ?」
「これか?銀貨3枚だ」
「安いな」
「そりゃあ、買い手も居ないし使い方も分からないからな」
(おいこれ、”聖杖 ハイリル”って言うらしいぞ)
むっ、聖杖だと?
お前は使えるのか?
(使いこなせるかはわからん、使えなくは無いがな)
分かった、買うか。
「分かった、銀貨4枚で買おう」
「いいんですかい?」
「ああ」
「まいどあり」
カルミナは料金を払い杖を持ち店を出る。