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26話 冥府の絶対者

 

 ━━━魔界深層 冥府━━━


 2本の青と赤の大鎌を手の届く範囲に置いた筋肉質な黒い肌の男は骨と魔鋼で出来た玉座に座っている。

 その男はバアルと名乗っていた。

 対峙するのは、四人の悪魔、名をガリル キャリコ ツァスタバ ヴァルトロという。

 ガリルは黒い燕尾服を着ており白い手袋をしている。

 その手には黒紫のナイフが握られていた。

 キャリコは純白の悪魔には似つかわしくないドレスを纏っている、手は紫の片手斧を握っている。

 ツァスタバはスーツの様な服を着ており、手にはリボルバーの様なものが握られている。

 ヴァルトロは槍を持ち、ジャージの様なラフな格好をしている。


 一体四、数ではガリル達が有利だが玉座に座る男の武器が危険だ、赤の大鎌は精神を断ち切り、青の大鎌は肉体を切り裂く。


 ガリルが逆手に持ったナイフでバアルへ斬り掛かる、一瞬で後ろに回ったバアルがガリルの腕と足をを赤の大鎌で切り落とす。


「ッ!」


 ヴァルトロが槍を投擲する、魔力で作り出した槍は軌道を変えバアルへと向かっていく。


 しかし難なく捕まれ投げ返される、そしてヴァルトロの腹部を貫き、壁へと貼り付けられた。


 ツァスタバが手に持ったリボルバーの様な物でバアルに照準を合わせる。

 そして引き金を引く、銃口からは音速を超えた闇の弾が発射される。

 しかしその弾丸を避け、バアルは赤の大鎌を投げつける。

 回転で威力が増したその大鎌はツァスタバを二つに切り分ける。


 キャリコは片手斧で無手のバアルへと斬り掛かる、しかしその攻撃全てを無手で捌かれる。

 それが意味するのは圧倒的な実力差である。


 バアルがキャリコへ向かい拳で殴り掛かる、その拳はキャリコの頭を砕き、キャリコは糸の切れた操り人形のように倒れ込んだ。


 最後にガリルの首を折り、四体の悪魔は動かなくなった。


 この攻防は10秒すらかかっていない。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ディアボロは自らの家に歩いていた、雪乃とフレナドールを下僕であるバルメに任せ、ステアを連れて。


 慣れ親しんだディアボロの玉座、そこには見ず知らずの悪魔(おとこ)が座っていた。


「よう、俺様の部下が世話になったみたいだな」


 ディアボロは玉座に座る悪魔に声をかける。


「ああ、これお前の部下だったのか、悪ぃな壊しちまった」

「気にすんな、別にそんなんじゃ死なない」

「本当かぁ、お前の武器で斬り裂いたんだがな」

「そうか、お前が俺様の武器を奪った身の程知らずか」


 ディアボロは玉座に座るバアルの前で止まる。

 そして、魔力の解放をする。

 ディアボロは冥府に来た時点で名を思い出している、それは力を取り戻したことを意味する。

 ディアボロ、真の名を”ハデス”、名を付けたのは異世界の女だった。

 その女はディアボロを召喚し、国を滅ぼした、それはこの星では無く別の異世界で、だ。


(あの頃は楽しかった、なあ、ミカ、ありがとう、お前のことは忘れない、そしてユキノ新たな名をありがとう)


『ハデス ディアボロ、名の統合を開始、新たな名を”ハスディア”』


 驚くことに自らの名を、魂を表す名を自らの意思で統合したのだ。


「俺はバアルだ、お前は?」

「俺様はハスディアだ」


 またしてもディアボロ、いやハスディアの持つ魔力の質が変わった、その魔力は最早底が見えない程に、まるで深淵の様な異質の魔力へと。


 ハスディアは雪乃に負けたあとの名付けで、既にフェルナより少し弱い位までに強くなっていた、そして冥府での名を思い出した、そしてそれら二つの名の統合、それは2倍どころの騒ぎではなく、全てにおいて勇者セシルを超えた。


 そんなハスディアが一介の悪魔ごときに苦戦すらありえない、それは武器が無くとも、である。


 悪魔バアルは開放された魔力によって押し潰される。

 それに対抗(レジスト)しようとしたのだがいかんせん格が違いすぎる、自分を3乗しても勝てないほどの魔力だった、それほど高い魔力だと言うのに解放しただけなのだ。

 わかりやすく言うなら水道の蛇口を少しだけ捻ったにも関わらず一瞬でシンクの中に水が溜まった様なものだ。


「……ッ」


 それでも尚バアルは生きていた、それほどバアルの精神は強靭だったのだろう。


 その強靭さがバアルにとって最悪の結果をもたらす。


「ふむ、これは中々骨があるな」

「……何者なんだ!」


 バアルは血を吐きながらそう叫ぶ。

 その血がディアボロの服についた、ついてしまった。

 超えてはならない一線というのは案外近くにあり、簡単に超えてしまうのだ。

 超えてはいけない一線、それは冥府の絶対者である、ハスディアの逆鱗である。

 この服はフェルナに貰った物でハスディアのお気に入りであった。


「…」


 無言でバアルの足をもぎ取り、その足をバアルの胴体に突き刺す。

 そして地面に刺さっていた赤の大鎌がハスディアの手に収まる。

 その大鎌を扱うハスディアはまるで踊っているかのような優雅な鎌捌きを魅せる、そしてバアルは指先から等間隔で切り刻まれる。

 激しい痛みがバアルを襲う。

 そしてハスディアはあるスキルを使う、そのスキルは”常黄泉トコヨミ”冥府の絶対者にして、闇の王たる片鱗を具現化したようなスキルだ、しかしこのスキルは攻撃系では無い、自身の魔力を強化するものだ。

 それでもバアルにとっては抗えないほど強力だ。

 1秒に満たない時間はバアルに絶望を与え、悪魔としての死を迎える。


 悪魔としての死は、精神が折れること、つまりは負けを認める事、勝てないと思ってしまえば悪魔としての死は訪れる。


「さて、武器は返してもらったし、玉座も無事か」


 ハスディアは倒れている四体の悪魔に近寄ると、


覚醒せよ(おきろ)我が下僕、ガリル ヴァルトロ ツァスタバ キャリコよ」


 そう命じた、冥府の絶対者であるハスディアにとって欠損など程度は直ぐに直せる、それが少数なら魔力を集中させることで時間をかけずに治すことも可能だ。


 四体の悪魔は動き出す、頭が無いまま、体が二つに分かれたまま、腹部に孔が空いたまま、首が逆方向に曲がりながら、だ。


 そして欠損部を闇で覆い、傷を再生させる。


 傷の治った悪魔達はハスディアの前に跪き、


「申し訳ございません!我ら、マスターの手を煩わせまいと勝手な行動を致しました!それだけでは飽き足らず無様に敗北致しました、この行動は私の一存であり、上司であるバルメ殿の命令ではありません!」


 ガリルがそう言った。


「かまわん、だが、敗北した事に対しては罰を与える」

「なんなりと」

「ガリルお前には俺様と共に地上でソウリアの攻略だ」

「な!?」


 ハスディアの言葉にはガリル以外の悪魔達が絶句していた。

名前 ディアボロ改め ハスディア

種族 悪魔皇帝デーモンエンペラー

異名 冥府の絶対者

レベル 935

身長 166

体重 46

加護 冥府の加護(常闇の魔力)

スキル 魔体化,幻惑,闘鎌術A,常黄泉,

魔法 闇系全て


魔闘力

魔力 170000

精神力 5000

戦闘技術 23000



書いてて盛りすぎたなって思いました。

悪魔皇帝デーモンエンペラーは存在体としては上位魔神越えです。

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