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25話 魔界の冥府

 

 ━━━王立魔道騎士育成学院 フェレノア 地下━━━


 朝日が登り、地下にディアボロと雪乃が待機している、そして重厚な扉を開き、男が入ってくる。


「よう、フレナドール、お前何があった?」


 雪乃はフレナドールの変化を問う、それ程までに変化は著しく、明らかな魔力の変化が見て取れる。


「ああ、ちょっとな」


 フレナドールは変化にあまり気に止めていない、自分の魔力が変化しているのにも関わらず、だ。


「お前、”霊体化”を取得したのか」


 今まで黙っていたディアボロがフレナドールに問いかける。


「ああ、そうみたいだな、なんでも、こいつが俺に与えたそうだ」


 フレナドールは大剣をディアボロに見せる。


「そうか」


 ディアボロはただそれだけしか言わなかった。



「最初に言っておくが、これから行くところは魔界の最深部『冥府』だ、ここは魔界の上位存在体ですら入れない、それはそこが精神または魂のみでの活動しか出来ないからだ、本来死んだ体から魂が『冥府』へと行くが、その死という条件を俺様の権限ですっ飛ばす、体には尋常じゃないほどの負荷がかかる、それだけで常人は死ぬ、いいか、フレナドール、お前はまだ弱い、わざわざ危険を冒してついてくる必要は無いんだぞ?」

「俺はお前らの役に立ちたいんだ、行かせてくれ」

「……はぁ、分かった、勝手にしろ」


 フレナドールに根負けしたディアボロは魔力で門の形を作り、詠唱する。


「…nwanwas/o57&8'A8yMkegA/s/a/457」


 その詠唱は人では発音、認識出来ないようで、どうしてもいびつな音としか聞こえない、悪魔や魔界に住む者に聞かせれば意味が通じるのだろう。


 そして詠唱が完了し、魔力が形作っていた門が実態として触れれるような重みと軋む金属の音が聞こえる。


 その門はおおよそ趣味がいいとは言えないであろう、なぜならその門は骨と黒い何かで出来ている、黒い何かが形を作り骨が飛び出て門を装飾する。


「行くぞ」


 そう言いディアボロは門に手をかける。

 ギィーと軋んだ金属音とミシミシという騒音が鳴り響く。

 その音は不安と恐怖の原点とも呼べる程に、そしてその音を聞いたフレナドールの心を酷く揺らす。


「大丈夫か?」


 雪乃はフレナドールに声をかけ、意識を確かめる。


「……あ、ああ、…大丈夫だ」


(なんでお前は平気なんだよ、この先は人間が入れる場所じゃない…、これがディアボロが静止していた理由か…、行くって言ったじゃねえか!、今更怖いのでやめますってのはかっこ悪りぃそれじゃなくても俺は強くならないと行けないんだ!)


 フレナドールは震える心を隠し、足を踏み出す。


(決心がついたみたいだな、フフ、楽しみだ久々の我が家は)


 ディアボロは内心笑っていた。


 ディアボロの記憶は既に殆どが戻っている、それは召喚され、雪乃に名を付けられたことで更に加速した。

 思い出せないのは元の名だけだった。

 なぜ隠していたか、簡単だ記憶は戻っても力が戻っていないからだ、そして何よりも重要な名を思い出せないのは恐らく力を冥府に置いてきてしまったことによるだろう。

 悪魔は精神体である、名は力を表し、記憶は体を表す。


 雪乃は目の前に広がる光景に絶句していた、空は黒く月は更に黒い、木は生えているが葉は生えていない、そして至る所に十字架が刺さっておりその十字架には名前が刻んである。


「スゥー、我が名に従い顕現せよ!」


 ディアボロはいきなり叫んだ、その叫びに呼応するかのように目の前に数千もの数え切れない数の悪魔が現れた。


「「我ら一同!貴方様の帰りを心待ちにしておりました!」」


 その中から前に出てきた三体の悪魔が声を揃えそう言った。


「…アーセナル ステア バルメ、俺様が留守の間ご苦労だった、俺様の武器は何処にある?」


 笑顔でディアボロは三体の悪魔の名前を呼び、問いかける。


「……恐れながら申し上げます、悪魔の涙(デビルティア)は…奪われました」


 三体の内一番右の悪魔が恐怖に顔を染めながら答えた。


「そうか、アーセナル、こっちに来い」

「…ハッ」


 アーセナルと呼ばれたその悪魔はディアボロに歩いて近づいて行く、そして目の前で止まった。


「覚悟はいいな?」

「はい!」


 メキッ、という音と共にアーセナルは首を逆方向に曲げられていた。

 そして力なく倒れる、誰も駆け寄らない、何故なら今動いてしまえばアーセナルの二の舞になるからだ、そうでなくとも精神体なので首をおられた程度では死なないから、かけよる必要も無いのだが。


 雪乃とフレナドールは目の前で起きた光景に唖然としている。

 数千もの悪魔が出てきたと思えば三体がディアボロに話しかけ、その内の黒髪の美少女の首が縦に180度曲がったからだ。


「ステア、相手の爵位は?」

「ハッ、伯爵(アール)です」

伯爵(アール)ごときに奪われたと?」

「は…い」

「はぁ、そうか、お前らがそこまで使えなかったとはな」

「…お言葉ですが、貴方様は一体何をしてられたのですか?私達に何も言わずに、忽然と姿を消したのは何故なんです?」

「なるほど、つまり、俺様がいなかったからこうなったんだよ、そう言いたいんだろ?」

「そうです、それに先程から後ろにいるのは人間ですよね、それも生きたままの、一体どういうつもりなのですか?」

「そうか、紹介がまだだったな、おい、ユキノ、フレナドール名乗れ」


 ディアボロは雪乃とフレナドールに名乗れと言った、それには二つの意味が込められていた、一つはバルメにどっちかの相手をしてやれ、どっちかは任せる、というものと二つ目は何か言われたり実力行使に来た場合は助けない、と言うような意味だ。


「十六夜雪乃だ、異世界からの転生者で勇者だ、今回来たのは俺の修行とディアボロの力を取り戻すためだ」


 雪乃は恐れずに名乗った。


「そうでしたか、勇者でしたか」


 最初しか喋っていなかった初老に見える男、バルメが近付きながらそう言った。


「お、俺はフレナドール・グレイドだ、その付き添いで来た」

「付き添いで冥府に来るとは命知らずですね」


 バルメは魔力を解放し、フレナドールを威圧する。


 それに気付いた雪乃はその間に割って入る。


「ほう、せっかく見逃したというのにわざわざ相手をすると?」

「このままいったらフレナドールは殺される、そうだろ?そんな所は見たくないだけだ」

「フフッ、そうですか、気に入りました、主が許すのなら貴方を手伝いましょう」


 悪魔バルメは笑顔になると、元の位置に戻っていった。

三柱


アーセナル

黒髪長髪の美少女。


ステア

紫髪の美女。


バルメ

初老の男、髪は灰色。


簡単な紹介でした。

三柱というのは呼びやすいのでそう呼んでるだけなので気付いたら変わっているかもしれません。

ご了承ください。


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