20話 魔王城にて
今回グロいかも。
━━━魔界 頂上 魔王グレリアの城━━━
男は笑みを浮かべている、
何しろ1000年以上探し求めた、体の片割れが現れたのだ。
笑わない方がおかしいだろう。
(しかし、どうしたものか、ただ殺してしまうのはつまらない)
男は考える、どうすれば楽しく遊べるかを。
(そうだな、奴はまだ覚醒していない、覚醒してからがいい、それはいつまでかかる?)
焦れったい、早く遊びたい。
そんな事を考え、一つ思いつく。
俺が覚醒させれば良いのか。
そう決まってしまった、男は7対14枚の白い、悪魔らしからぬ羽を広げどこかに飛び立っていった。
「まったく、困った人ね」
そう呟いたのは、とても言葉では表せないほどの美しさを持った
美女だった。
彼女もまた上位魔神であり”魔王 グレリア”の配下である。
長いブロンドヘアーが風になびく、乱れた髪ですら美しく、妖艶な雰囲気を醸し出す。
「貴方は行かないの?」
大きな扉を開け妖艶な美人に話しかけるのは”魔王 グレリア”だ、彼女もまた美しかったのだろう、だが、今では面影を残し至る所にある傷が邪魔をする。
「私が行ったら、貴方様は嫉妬なさるでしょう?」
「そうね、彼に手を出したら消すから」
「怖いわね、一体どうしたらそんな恐ろしい思考ができるのかしら?」
「私は歪んでるから…」
暗く病んだ笑みを浮かべグレリアはそう呟く。
「そっ、でもそんな所も嫌いじゃないわ」
妖艶な美人、アデシスモはグレリアの頬に手を当て、瞳を覗く、そして魔法”魅了”を発動させる。
「それ以上すると本当に消すわよ」
グレリアの瞳は変わらずどこか遠くを見つめたままだ。
「ごめんなさいね?貴方の瞳に映る私が美しくてね」
「ばっかみたい、今回は許すけど次魔法かけたらただじゃおかないから」
呆れたように閉じられていない瞳で睨みつける。
(本当に狂ってるわね、あれが効かないってことは貴方の心は本当に彼しか見えてないのね、可哀想、でも愛おしい、ふふっ狂ってるのは私かもしれないわね)
本当に狂っている、アデシスモもグレリアも、どこか歯車が噛み合っていない。
女はグレリアに背中を向け、自分の部屋に帰っていく。
アデシスモの部屋には骨で出来た椅子に骸のテーブル、お世辞にも趣味がいいとは言えない。
そして、男が鎖に繋がれている、
「ただいま、愛しの玩具」
鎖に繋がれた男は、
「いい加減にしてくれ!」
泣き叫び、疑問を投げつける。
「チッ、まだ反抗的なのね?、これはお仕置きかしら?」
その一言に男の瞳を恐怖が支配する。
「ひいっ、わかった!わかったから!お仕置きだけはやめてください!」
怯え用からしてそのお仕置きとやらは尋常ではないのだろう、
よく見ると男の指には爪が無い、そして足は指が無い、おぞましいほどの、数えきれない傷が男の体には刻まれている。
男はかつて、冒険者だった、それもSクラスの、魔界に入ったのもギルドからの依頼で魔王の様子を見に来たからだ。
魔王城の敵は化物揃いだった、Bランク上位の悪魔が数十体、それも進化を遂げているのだろう、一体で聖騎士の戦闘力を上回る。
何故そんなことがわかるのか?、それは男の持つスキルのおかげだ、スキル”鑑定者”によってある程度の強さ、種族が分かる。
特Sクラスの魔物、ケルベロスが門の前に居た、隠密行動に優れたスキルを持つ男は何とか城の中へ侵入することが出来た。
それだけならばなんと楽だったことか。
中へ入ったはいいが隠れるところが少なすぎる、何とか天井と2階の床の間に入れたからいいものの、もし無かったら男の人生はここで終わっていた。
廊下に敷かれている絨毯の毛皮はAランク上位のフェンリルのものだった。
廊下を見ているだけで、気が狂いそうになる。
男はスキル”狂気耐性”を獲得している。
それがなければ魔界に入った時点で発狂していてもおかしくはない。
廊下を三体の上位魔神が通る。
一人の後ろに二人がついて行く。
先頭の男はセシルだ、セシルのしている行為はただ歩いているだけ、それなのに、それなのに男の額には脂汗がびっしりと出ている、男の細胞は告げる、危険だ、と、そんなの分かっている、たがここで逃げて物音を立てれば確実に待っているのは死だ。
「セシル様、ネズミが居たらどうします?」
後ろからついて行ってる二人のうちの一人、大きな鎧を付けた男がセシルに問い掛ける。
「決まっている、消すさ、そうだろう?」
明らかに男の方を向き、そう男にも聞こえるように言った。
男の鼓動が今までにないほど早くなる。
「ふふっ、気まぐれで逃してやる、喜べネズミ」
男は安堵した、だが、その安堵も束の間、天井から手が生えてきたのだ、いや、正確には天井を突き破り手が男の首を掴んだのだ。
天井をまるで紙切れのように破り、男を持ち上げる。
持ち上げたのは大男ではなく、美しい女性だった。
その細い腕のどこにそんな力があるのか不思議に思うまもなく、男の足は切り落とされていた。
「ッア!?ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
足の感覚が無くなり、見ると足が床についている。
認識し遅れてやってきた痛みは耐え難く、男の意識は既に朦朧としている。
だが、意識を失うのを許さないかのように、女は時間を開け、指を潰していく。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!いだィィ!やめてッ!」
男は泣き叫ぶ、それに対し女は顔が恍惚と艶やかになっていく。
「いいわね、貴方、気に入った、特別に生かしておいてあげる」
女は手に付いた血を舐め、色っぽい仕草で男を眠らす。
止血などはしないと遊べないと思ったのか、おもむろに懐から液体の入った小瓶を取り出す。
「ちょっと勿体いないけど、ふふ」
小瓶に入った液体は”魔王 グレリア”が抽出したポーション、なんでも傷口に一滴垂らすだけで完全回復するそうだ。
男の足に一滴ずつ垂らし、指にも垂らす。
すると患部は癒え、傷は跡形もなく無くなった。
「本当に何者なのかしらね、彼女は」
その微笑みは何時までも、消えることの無い傷跡を男に残した。




