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18話 雪乃の受難

 

 ━━━王立魔道騎士育成学院フェレノア━━━


 食事を終え教室に戻った雪乃達は席に座り、教師を待つ。


「さて、3限目だが魔術言語についてだ」


 アデマンは黒板に文字を書いていく。

 内容は火 水 木 風 土 光 闇の漢字だ。


(魔術言語?漢字じゃん)


「覚えてるよな?これらは七大元属性だ、それぞれが単体で意味を持つ、これらは勇者や異世界人によってこちらに伝えられたものだ」


 更に黒板に弾と創という字を書き足す。


「これらもよく使われる、主に球体や作り出すという意味を持つ」


 続けて、


「これら以外にも様々な意味を持つ言語があるがあまりにも膨大過ぎて伝えきれてないそうだ、伝えられた文字と意味は教科書に乗っているため各自予習しておくように、これまでで何か質問はあるか?」


 しばらく無言だったがスレイが手を挙げ、


「はい!新しいノートが欲しいです!」

「そうか、熱心なのはいい事だ、後で職員室に来てくれ、用意しておこう」

「はーい」


 スレイは笑顔で返事をし、そのまま机に伏せる。


(えへへ〜これで今日も会える♪)


 そのまま時間が流れ、鐘の音がなる。


「今日はここまでだ、各自予習だけでなく復習もしっかりとな、じゃあな気をつけて帰れよ?」


 雪乃が教室を出ると廊下からディアボロが走ってくる。


「ユキノー!どうしよう全然分からん」

「…何がだよ」

「べんきょう」

「じゃあ勉強会でもするか?」


 後ろからフレナドールがそう声をかける。


「いいわね」

「では場所はどこにします?」


 続けてメリザとソーンズが出てくる。


「僕は用事があるから先に帰るね♪」


 スレイは廊下を走りながらそう言った。


「いい場所、知ってる」


 ヒムニの声が雪乃の隣から聞こえる。


「!?」

「最初からいた、その反応は傷付く」


 ヒムニはため息をついた。


「私の家、広いからそこで勉強しよう?」

「そうね」


 ヒムニの提案にメリザが同意する。


「ありがとうな、えーと名前なんだ?」


 ディアボロが名前を聞く。


「ヒムニ、ヒムニ・エリザベート、よろしくね」

「私はメリザ・ツバイよ」

「私はソーンズ・コアネラです、よろしくお願いします」

「俺はフレナドールだ」

「よろしくな、俺様はディアボロだ、名付けはユキノだ」

「名付け?」

「あー、あれだよ」


 言い籠もる雪乃をフェルナが援護する。


「ディアボロは悪魔だから名付けにより暴走の危険性を抑えたのだ」

「へーそうだったのか」


 何故かディアボロそう言う。

 自己紹介が終わったので、歩き始める。


「フェルナはどうするんだ?」

「我はメリアと話があるから行けぬな」

「そうか、じゃあな」

「よろしく伝えといてくれ」

「うむ」


 ディアボロ達に別れを告げ、別方向に歩いて行く。


「色々話を聞きたかったんだけどな」

「そうね」


 フレナドールの言葉にメリザが同意する。

 ヒムニは雪乃の腕を掴みながら先頭を歩いている。


「…………あの、ヒムニ、さん?なんで腕掴んでんすか?」

「駄目?嫌なら離す」

「嫌な訳ないじゃん、でもね、胸当たってるんすよ」

「当ててるから、問題無いね」


 困惑する雪乃を差し置いて他の、ディアボロを除いた三人の反応は、


「まただな」

「そうね」

「困ったものですね」

「どういう事だ?」

「そっか、知らないのね、ヒムニは気に入った人の体に匂いを付けるために擦り付けてるのよ」

「いわゆる、習性ってやつだね」


 メリザが説明し、フレナドールが補足する。


「ふーん、大変なんだな」


 ディアボロはわりとどうでも良さそうにそう言った。



 30分程歩いたのだろうか、商店地区の少し離れた裏路地を抜けると開けた土地が見える。


 その奥には白い建材で建てられた豪邸があった。


「ついた」

「………」


 雪乃は唖然としている。


「お嬢様、またそんな事をして、はしたないですよ」


 あまりに豪華な、材質だけを見るなら王城にも引けを取らないであろう豪邸に、そして突如現れたメイドに。


「大丈夫」

「お嬢様が大丈夫でも、相手が大丈夫じゃないのです!」


 メイドは呆れたように、だが、いつもの事の様に言う。


「心配し過ぎ」

「もし襲われたらどうするんです!?男は皆狼なんですよ!?」

「だいじょーぶ、襲われても、倒せる」


 スレイは拳を振りながら、危機感のない表情で答える


「……そういうことじゃ、はぁ」


 呆れた様にメイドはため息をつく。


「まあまあ、お嬢様はいつもこんな感じじゃねえか、それに既成事実作っちまえばエリザベート家も安泰だしな」


 扉からまた一人、執事が出て来た。

 髪は茶色、耳にピアスを付けた、不良の様な見た目に反しきっちりと執事服を着こなしている。


「そんな事ばっかり言うんじゃありません」


 この二人、実は兄妹で中々に仲が悪い、姉のフィナ・レネェージャ、弟のクリス・レネェージャ、

 子供の頃、親が他界し、さまよっていた所をスレイに拾われ、恩を感じ執事、メイドとして働いている。


「こうなると、長い、行こ」


 そんな二人に優しい笑みを浮かべ、素通りする。


 玄関をくぐると、大きな肖像画が飾ってある。

 白を基調とした美しい、上品な造りになっている。

 階段の手すりには細かに装飾がされている。


「ここが、私の部屋」


 壁は白く、所々に絵画が飾ってあり、お嬢様の部屋、のイメージを具現化したようだ。

 天井のついたベットに赤地に金のレースのついたカーテン、テーブルは大理石を金色の金属で囲ってある。

 その金属部分には花が咲いているのかと思う程精巧に模様が装飾されている。


「なんの勉強からする?」


 フレナドールが座り、そう問う。


「魔術言語がいいと思うわ」


 メリザがそう返事をする。


「んー、でも、それは大体分かんだよな」


 ディアボロは頭を掻きながらそう言った。


「なんで?」

「分からん、何となくこれはこういう意味ってな感じでしかないからな」

「んー、じゃあ何が分からないんだ?」

「魔法の詠唱についてが分からん」

「悪魔は詠唱しないもんな」

「ああ、頭に浮かべた物を魔力で再現するだけで何とかなるからな、これが、いめーじ?ってやつなんだろ?」

「じゃあ必要ないんじゃない?」

「それもそうか、…だとしても、授業についていけないのはなぁ」

「確かについていけないのは困りますね」

「どんな授業してるんだ?」

「今日はあれやったな、えーと、型?ってやつと模擬戦ってやつ」

「どうだったんだ?」

「つまんなかった、他の奴ら弱いし」

「んー、問題はディアボロよりクラスメイトの方か……」


 雪乃達は悩んだ末、取り敢えずフェルナに相手させれば解決なんじゃね?という結論をだした。

スレイ君はアデマンに意識してもらうために女装をしています。

書いてて楽しいキャラの一人ですね。

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