16話 異世界の授業
━━━王立魔道騎士育成学院 フェレノア━━━
「自己紹介も済んだし、授業を始めよう」
教師アデマンがそう言い、席に着く。
「じゃあまず、詠唱についてかな、詠唱っていうのはイメージを促す為の物なんだ、だからちゃんとイメージが出来ていれば詠唱は必要ない、それを踏まえて、詠唱はいらない?答えは否だ、無詠唱より略式詠唱の方が威力が高い、なんでか分かるかい?フェルナ」
「無詠唱より略式詠唱のほうが威力が高いのは前提から違うからだ、無詠唱は剣士や前衛の者が隙を作らせる、一流の剣士は一瞬の隙で十分だから威力より目くらましの意味が強い、そうだろう?」
「正解です、じゃあ次は魔力についてですね、魔力はレベルに比例して上がりますが、その他に上昇させることが出来ます、その方法は、分かりますか?ユキノ」
「………分からない」
「そうですか、ユキノは転生者ですから知らなくても仕方ありませんね、正解は死を経験することです、死を経験することで爆発的な魔力の上昇が起こるそうです、ですがこの方法は本当かは分かりません、伝承として残っているだけなので」
「それは本当だぞ、人間に限らずだが、死を経験すると魔力の上昇が起きる、上位存在体は一度は死を経験している、我も人間から龍人になる時には死んだらしい、あと、死を経験することと死を克服することは同じでは無いからな」
「そうでしたか、やはり経験者がいると、勉強になりますね」
アデマンは笑顔でそう言いい、続けて。
「そろそろ一限目が終わりますね、二限目は剣の実技です、武器は持たずに運動服に着替えて校庭にいてください。」
と言ったところで鐘の音が鳴り響く。
この後は10分の休憩があり、その時間に着替え、校庭に移動する。
「分かったか?ユキノ」
雪乃に声をかけたのは首席のフレナドールだった。
「なんとなく」
「そうか、分からないことがあればなんでも聞いてくれ、答えられる範囲で答えるからな」
フレナドールは強面な外見からは想像がつかない優しい笑顔を浮かべ、肩を叩き、そう言った。
「ありがとう」
「ありがとう、か久しぶりに言われたな…」
フレナドールはしみじみと雪乃の言葉に感動している。
「そうなのか?」
「ああ、助けても、怖がられてな」
「あー、そうか」
こいつはこっちに来てから会った事の無いタイプの人間だからかな?、今まではどちらかというと華奢な体付きが多かった気がする、レギエナやメディオとかの騎士はそれなりに筋肉があったがそれよりも着いてるしな。
「お前は怖くないのか?」
「俺はこっち来て直ぐにキングゴブリンを相手にしたからそこまでじゃねえな」
「そうか、すごいな、ところで着替え終わったか?」
着替えと言ってもマントを外して、レギンスを付けるだけなのだが。
雪乃は割と手こずっている。
「どうつけんだコレ?」
「とりあえずレギンスについてるベルトを全部外して緩まったら足を通せ、そしたら、ベルトを下から少しずつキツくして、痛くならない程度に閉て終わりだ」
「ありがとな」
「フレナドール!ユキノ!先行ってるよ!」
猫人種のスレイがそう言って窓から飛び下りた。
「あれは、いつもの事だから」
「窓から飛び降りるの?」
「騒がしいこと」
雪乃もレギンスを装着し、窓に足を掛ける。
「おまえもか」
「お先っ」
そのまま飛び下りた。
着地は膝を曲げ、つま先からすねの外側、尻、背中、肩と着地する、言わば五点着地の形。
回転することで着地による衝撃を分散させダメージを最小限に抑えたのだ。
「遅いではないか、ユキノ」
赤いレギンスを付けたフェルナが前に立っていた。
「レギンスどうした?」
「鉄が我の魔力によって魔鉄に変化した」
フェルナの魔力が強すぎ、短期間で鉄が魔鉄に変化した、魔鉄は強度が通常よりあり、へこむ事はほとんど無い。
鐘の音が鳴り、授業が始まる。
「いつもは二人一組になって貰うんだけど、今回はフェルナと二席から五席まで、ユキノとフレナドールで、別れて模擬戦をしてね」
「ではよろしく頼むぞ、メリザ、ヒムニ、ソーンズ、スレイ、精々耐えてくれよ?」
「え、ええ、頑張ります」
フェルナが悪魔の様な笑みを浮かべそう言い、四人は引き攣った表情で答えた。
「そうそう、今回は致命傷にならない程度なら魔法はありだから」
アデマンが更に追い込む。
ちなみに使う武器は神樹の枝、それを剣の形に加工した物、つまり木刀だ。
「じゃあ始めていいよ」
アデマンが始まりの合図を出し、打ち合いが始まる。
「炎ノ檻」
ソーンズがフェルナの周りを炎で囲み柵を作る。
フェルナはそれを腕を振り消す。
ヒムニとスレイが後ろから斬り掛かる、フェルナは後ろ回し蹴りで2人の剣を弾く、メリザは詠唱をしている。
「聖なる力よ蔦となり鎖となり手を足を四肢を捉え動きを封じよ”聖なる縛り”ッ」
光の鎖がフェルナを縛る、が、光の鎖はいとも容易くフェルナの炎に焼き尽くされる、拘束時間は一秒にも満たなかった。
ソーンズがフェルナの剣を狙う、それに合わせメリザがソーンズに付与をする、効果は速度上昇。
ソーンズの太刀筋が最早目でおえない速度まで上がる、だが、フェルナは片手でソーンズの剣を受け止め、投げ飛ばす。
後ろに下がっていたヒムニとスレイが魔法を使う、どちらも”獣人ノ舞”効果は獣人の獣の部分の強化、効果は身体強化の上位互換だ、スレイは二本剣を拾い、そのままフェルナに連撃を加える。
「まだ、荒削りだ、なッ」
フェルナが双剣を受け止め、蹴り飛ばす。
スレイが脚でフェルナの首を蹴る、が、掴みとられ、メリザに向かって投げ飛ばされる。
「火よ」
ソーンズがつぶやき、フェルナが炎に包まれる。
「我は焔の魔力を持っている、下手な火炎は逆効果だ」
手で火を全てかき消す。
「ッ!?」
刹那フェルナが膝をつく。
「失礼しました、私、二属性持ちですので、水の魔力で炎を作ったのですよ」
「多芸だな」
「後ろッ!!」
メリザの叫びで後ろを振り向く、そこにはフェルナが立っていた。
「なっ!?」
フェルナの指がソーンズ顎を掠める、脳震盪を起こし崩れ落ちる。
「では、こちらからも行くぞ?」
一瞬でフェルナが残りの3人の顎を正確に打ち抜き、勝負が着いた。
最近、主人公よりもモブとかの方が設定に凝ってる気がします。




