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13話 暴走は勇者の特権?

今回あんまり纏まりが無いかもしれません。

 

 ━━━ノルデアン城━━━


 フェルナの吐く息が白くなり、ディアボロは服が凍り、動きが遅い。

 既に外気はマイナスになり始めている。


「緋彩ノ爆炎」


 フェルナがそう詠唱し(呟いた)た瞬間、雪乃が、いや、雪乃を含む壁内が全て炎に包まれる。


「ッ!?」


 雪乃は莫大な魔力を放出しフェルナの魔法に対抗する。

 それによって水蒸気によって外気の上昇が起きる。


 雪乃の頬に衝撃が走る、骨の砕ける音と自分が壁に衝突する音が同時に聞こえた。


「ガッ」

「フェルナ、助かった」

「気にするな、それより、次はお前だ」



 ”十六夜雪乃の所有者を零氷ノ王に移行します”


 無機質な声がフェルナ、ディアボロの脳に響く。


「「!?」」



 雪乃が目覚め、無機質で淡くか細い声で、


「外敵を認識、殲滅に入ります」


 そう呟いた。


「盗魔ッ」


 意味を理解したディアボロが魔法”盗魔”を発動させる。

 盗魔とは、相手の魔力を盗む魔法、欠点として相手の魔力が自分を上回っていた場合、尋常ではない負荷と痛みがが発動者にかかる。


「ディアボロッ時間を稼げ!」

「分かった」


 痛みで擦り切れそうな神経に鞭を打ち、弱みを見せずに返答をする。


 フェルナは城に向かった


(アルスノヴァが必要になるとは、思ってもみなかったわ)


 ━王宮の宝物庫、その奥に一際異彩を放つ短剣、銘を”宝龍剣 アルスノヴァ”

 それは三千年前に火炎龍 ノヴァによって生み出されたランクⅤの武器。

 ダマスカス模様の黄金の刃に、紅色の龍鱗で出来た柄を持つ。




「ッ!」


 ディアボロが雪乃の攻撃を魔力で覆った手を使い受け流していく、名付けが無ければ既に死んでいるだろう。

 時折ディアボロの指が飛ぶが、それを魔力で無理やり付け直す。


(早く戻って来てくれ!!マジでこれ死ぬ)


 今まで剣だけで単調な攻撃を放っていた雪乃が蹴りを加え、変則的になる。

 一太刀、袈裟懸がディアボロの肩に吸い込まれる、


(ッ!?)


 来るはずの痛みが来ない、黄金の短剣がハイリルを止めていた。


「待たせた、休んでいろ、ディアボロ」

「分かった」


 深く息を吐き出し、そうフェルナに返す。


「…外敵を再認識、情報の上書きをします」

「いい加減に雪乃を返せ、そうすれば、生かしておいてやる」


 フェルナは抑えたはずの感情が溢れ出る程に激昴していた。


「その要望には応えられません」


 今の言葉でフェルナの感情が溢れ出す。


「…殺す」


 短く、殺意を込めた眼差しで雪乃《何か》を見る、

 対し雪乃は無機質で、何も映さない瞳で、ただフェルナを観察している。


 フェルナの姿がブレて消える、フェルナの膝が雪乃の鳩尾にめり込む、


「ッ!?」


 フェルナが赤い線となり、雪乃の体を蝕んでいく、

 雪乃はギリギリで回避したり、氷で速度を落とそうとしているのだが、まるで相手になっていない。


 この速度には理由が有る、フェルナの焔の魔力を全身に循環させる事によって、魔力の濃度を濃くし、その魔力でブーストをしているからである。


「…これ以上の損傷は絶命の危険があります、よって最適行動として、貴方の要望に応え、所有権を返還します」


 ”十六夜雪乃に所有者を返還”


 その言葉でフェルナの動きが止まった。

 そして、雪乃の体は力無く、糸の切れた操り人形の様に崩れ落ちる。


「………呆気なかったな」


 後ろで傷を治しながら見ていたディアボロがそう呟く。


「フゥー、フゥー」


 フェルナは肩で息をする様な姿になり、疲弊している。


「!?大丈夫か」


 ディアボロがそれに気付きフェルナに駆け寄る。


「…ああ、大丈夫だ、それより雪乃の傷を治さんとな」

「それでしたら、彼女に任せて大丈夫です」


 2人の女性がこちらに歩きながらにそう言った、1人はメリアだ。

 メリアが連れて来たもう一人は黒灰色の修道服を着た小柄な━━胸部は小柄では無いが━━少女、首元に銀の三日月型に十字のネックレスを付けている、名をマレナと言う。

 マレア教のノルデアン支部に在籍している。


「彼の傷を癒せばいいのですね?」

「ええ、お願いします」


 フェルナとディアボロを置いて話を進める。


「では、親愛なる神よ彼の傷による痛み苦しみを祓いたまえ”回復ヒール”」


 雪乃の首元に手を添え、詠唱すると、青緑の暖かな光が雪乃を包む、傷が浅くなり、顔色も良くなっていく。


「さて、これで大丈夫でしょう、ところで……そちらのメディオ様の格好をしているのはどなたですか?」


 柔らかな笑みを崩さずに、目は笑っていないが、細い目を片方だけ見開き、そう問い詰める。


「呼び出されただけの哀れな悪魔だ、何か問題でも?」


 そう、特に気負いすることなく、ディアボロは答えた。


「……そうですか、もしも困った事があれば教会に」

「気が向いたらそうするわ」


 メリアがコホン、と咳払いをして場の空気を変える、そして、


「フェルナ、ディアボロ、ユキノには常識を学んでいただきたいと思います、そこで『王立魔道騎士育成学院 フェレノア』に一年だけ入学してもらいます」

「魔王はどうするのだ?」

「魔王は少なくとも後一年はこちらに手を出しません」

「なんでだ?」

「そう宣言したからです」


 つい先日、フェルナの封印が解ける前日に魔王が各国の重鎮達に、魔法による念話で「あ、あー、テステス、マイクのテスト中ー、え?もう聞こえてるの?……えーと、魔王だけど、取り敢えず猶予として一年あげる♪、だからその間に戦力を整えてー♪、それで楽しませてね♪」

 とふざけた宣言をしていた。


「そんな訳で、ディアボロの体をどうにかしましょう」

「……俺様はこの体から出れないんだが」

「組み換えも出来んのか?」

「………やってみる」


 ディアボロは組み換えの事を完全に忘れていた様子だった。


「'Aq8_/2&jypx8ckg'AawG"cqa_gp_」


 そうディアボロが呟き、全身を闇の魔力が包み込む、闇の球体が生まれた、その中から、おおよそ生物が出していいものでは無い音が聞こえてくる。


 ヒタヒタと裸足で地面を歩くような音が闇の球体から聞こえてくる、闇を抜け現れたのは、身長およそ170cm程のスリムな体付きをした女性、髪はショートボブの紫色だ、服が役割を全うせず色々と隠せていない、まあ、元々が180近い筋肉隆々の大男の服なので仕方ないが。


「これが俺様の本当の姿だ、どうだ!驚いたか?」


 小さな蝙蝠の様な羽をパタパタと忙しなく動かし、笑顔でそう言う。

※修正 6/28 23:32

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