12話 新たな力
━━━ノルデアン城━━━
雪乃の意識が覚醒していく。
「目覚めたか」
目を開くと、目の前には2人の美人、1人は幼いながらも凛とした印象を受けるまさに美少女、1人はキリッとした目元に薄く化粧をした美しいひと、言葉にするなら美女が似合うだろう。
「よかった、死んだのかと思いました」
美女、メリアが目元を潤ませながら言った。
「メリア、さん?どうしました?」
「ごめんなさい、私のせいでこんな事になってしまい、お詫びとして一ヶ月は城の部屋をいくつか貸し出しますので、ぜひゆっくりしてください」
「??……分かりました」
雪乃は返事をしたものの混乱している、明らかに先程までの知っているメリアと違い過ぎるからだ、今までは王としての凛とした佇まいだったのだが、今は1人の少女の様な印象を受ける。
「大丈夫か?」
2人の後ろにいた男、悪魔が声を掛ける。
「!?、ああ」
ディアボロの放っていた悪魔の様な━━実際悪魔なのだが━━雰囲気が一転して放たれていない、それなのに、内に秘めた魔力が感じ取れるほどに上昇していた。
「何があったんだ……」
「お前の魔力でディアボロが成長したのだ」
今まで黙っていたフェルナが近付きながら言った、そして一言、まだ完全に回復していないな、と言い雪乃の肩を押しベットに倒れ込む。
「ん!?」
雪乃は驚き、声を出そうとしたのだが、フェルナの唇で防がれる。
「またですか!?」
メリアが叫ぶ。
(また、って事は二回目?え????)
フェルナの唇が雪乃の唇から離れていく。
「プハァ、え?なんで?え?」
「魔力回復だ、少しは楽になったろう?」
そう言われて初めて自分の状況を確認《見て》みる、たしかに今までは気だるく返事をするのも辛かったが、今は体の不調は無い。
「あ、ああ、大分楽になった」
「では、外に出るぞ、ディアボロお前もだ」
フェルナは余り表情を変えずにそう言った。
それに答えるために、雪乃とディアボロは歩いてついて行く。
そして置いていかれたメリアが小さく笑みを浮かべたのをディアボロだけは気付いていた。
(…すっげぇ嫌な予感がする、逃げるか?……無理か……)
ディアボロの予感はあっていた、外の開けた場所、先程雪乃とディアボロが戦っていた場所、中庭だ、そこがいつの間にか壁の厚さが増し、数十人の王宮魔術師達によって保護魔法の重ね掛けによって尋常ではない強度を誇る要塞になっていた。
「「ッ」」
何かに気付いた雪乃とディアボロが同時に別々の方向に走り出す。
「逃がさん!!」
フェルナが叫び、姿が消え、1秒にも満たない時間でディアボロと雪乃は首根っこを捕まれ中庭に戻される。
「逃げるとはいい度胸だな」
「「…」」
「特別に二対一にしてやろう、ディアボロ、我と組め」
「分かりました、マイマスター」
ディアボロは怯えた表情から、笑みを浮かべフェルナに跪いた。
雪乃は地獄を見た様な表情で泣きそうになっている。
「その後は我とユキノだ」
雪乃は小さくガッツポーズをした。
「では、開始だ」
フェルナが雪乃にハイリルを投げ渡し、そう言った。
雪乃は加護スキル”思考速度上昇”と”攻撃予測”を発動させ目を見開き、構えをとる。
既に視線からディアボロが消えている、それに気づくと同時にフェルナが向かってくる。
「後ろだっ」
ディアボロがあえて注意を引くような一言を雪乃にかける。
雪乃は創氷で1m程の棘を後ろに作る。
だが全て砕かれる、その間僅か一秒未満。
(十分ッ)
鞘でディアボロの顎を掠らせ、脳震盪を起こす、膝が笑い、鈩を踏む。
刹那雪乃の腹部に衝撃が走る。
雪乃は目を逸らしていなかった、だがそれなのにすり抜けられた。
(いってぇ、目じゃ追えないな)
そう考え、雪乃は魔力感知を半径1mに絞り、特に後方に集中させた。
そうすると、今まで見えなかった動きが、魔力の流れが手に取る様に分かる。
だが、反応できる訳では無い、それ程までに速度に差があり過ぎるのだ。
ギリギリで致命傷になり得る場所への攻撃は避けているが傷は増えていく。
(どうしよう)
雪乃は氷で壁を作り攻撃の方向を絞ろうとしている、が、ディアボロ、フェルナは壁など関係無しに突き破ってくる。
剣を右手に、鞘を左手に持ち、ディアボロの攻撃を左手で捌く。
フェルナの蹴りによって鞘が吹き飛ばされる。
(あーもう、クソが)
雪乃が感情をあらわにして、剣に魔力を込める。
”聖杖 ハイリル”それは、ある伝説には残らなかった英雄が使用していた武器、英雄はハイリルに魔力と自分のスキルを込め、後世に残した。
その魔力が、雪乃の魔力によって活性化する。
結果、剣は蒼白の輝きを放ち、柄から氷の茨が出てきた、その茨は雪乃の腕に絡みつき、
”十六夜雪乃のスキルに”零氷ノ王”が暫定的に追加されました”
雪乃の脳内にそう無機質な声が響いた、
莫大な水属性の魔力制御の方法、そして、新たな魔法”氷鱗纏”の使用方法が、脳に入ってくる。
「氷鱗纏…」
そう雪乃が呟くと、氷の鱗が肘から手首、膝から足首までを覆う、この状態の名を一段階と呼ぶ。
(これでまだマシだな)
この変化に気付いたフェルナとディアボロはスピードのギアを上げる。
(む?嬉しい誤算だな)
(あぶねえぞ、あれは)
2人の思考は違うが結果は同じ、今まではギリギリで捌けていた攻撃の速度が上がったのだ、最早修行というより蹂躙と言う方が正しいそれ程までに差は開いた。
フェルナの蹴りで吹き飛ばされ、ディアボロの拳で跳ね返される、一応は剣を挟み衝撃を抑えているが最早意味が無い。
雪乃が剣を振ろうとすれば初動を感知されフェルナに抑えられる。
だが五分が経過し変化が生じ始める。
2人の動きが鈍くなりはじめているのだ、戦闘に集中していた2人は気づかなかったが既に外気は0度に近くなっている、人間とは違い温度で死ぬ事は無い2人だからこそ、気付かなかったのだろう、この状態こそ固有能力”零氷ノ王”の真髄である。
魔法でもスキルとしてでも無い、発動せずに魔力の溢れで外気を冷やしていく、実質の魔力消費は無い。
(二段階)
雪乃を覆う氷の量が増え、肩と太腿の付け根までを覆う。
発動条件は一段階発動から五分経過だ。
更に外気の低下が早っていく。
名前 ディアボロ
種族 半悪魔
レベル 566
身長 176cm
体重 66kg
加護 無し
スキル 魔体化,幻惑,闘鎌術A
魔法 盗魔,聖封じ,
魔闘力
魔力 70000
精神力 9000
戦闘技術5000
ディアボロが半悪魔なのはレギエナの体に定着したからです。




