11話 勇者は爆睡中
ようやく書くのに慣れてきた気がします、まだ至らぬ点もありますがこれからもよろしくお願いします。
制約通りtwitterアカウントを作りました
@KAGEYAMAother
です。
進捗状況を呟いたりするためのアカウントです。
━━━ノルデアン城━━━
4人が円卓を囲い緊迫した表情で沈黙している。
レギエナは他の騎士達や侍女に状況を報告している。
「……貴方はいつまで、メディオの体にいるのですか?」
「この体の持ち主は死んだぞ?、俺様を体に結びつける時点でな」
「「な!?」」
メリアと雪乃が驚愕の表情で声を漏らす。
「…俺との戦いでそこまでする必要があったのか?」
「あったのだろう、死んだのがその証拠だ」
フェルナは淡々と現実を突きつける。
「ああ、体の持ち主はプライドが高く、負けによる死を許さないみたいだ、それに主の命令は絶対、って感じの性格だな」
悪魔は多少噛み砕き言ったが、実際の性格は傲慢で自尊心の塊の様な男だ。
「ほう、その性格でなぜ?」
「多分俺様を繋ぎ止めるのに死ぬとは思わなかったんじゃねえの?」
実際悪魔の召喚だけなら命を落とす可能性は低い、魔力が足りない場合のみ生命力から差し引かれるからだ。
だが召喚し、身体に縛り付けるとなると話は別だ。
悪魔や精霊を体に縛り付ける行為を受肉という、受肉は本来死体や人形に意思を持たせて戦闘に参加させるための魔法だ、それを生身の体に縛り付けたのだ、結果として悪魔に魂を押し潰されメディオは死んだ。
「…あんたは敵対する気は無いのか?」
「無いぞ?体の持ち主の意思を引き継ぐ形になっちまったからな」
雪乃の疑問に悪魔は不本意そうに答えた。
「…分かりました、では、貴方を正式な騎士として認めます、騎士長はレギエナ、貴方に任せます」
メリアは悪魔に何を見出したのか、まあ、恐らくはレギエナの思い通りだったのだろう。
「そして、悪魔、悪魔では呼びずらいので貴方に名を与えます」
「いいのかい?悪魔に名前を与えるという事は存在が強化されるんだぞ?」
「構いませんよ?貴方には私の護衛をお願いしたいので、強くないといけないんですよね」
「ハッ、悪魔に自分を守らせるたァ随分と強気だな」
笑い飛ばす様に悪魔は頭を押さえながらそう言った。
「名前は…雪乃さん貴方が決めてください」
多少の間があり、何故か雪乃に名前を決めさせる。
「俺ですかい?、うーん、いいのかなぁ」
悪魔はワクワクしているのか、体を左右に軽く揺らし、
「格好良いのを頼むぞ」
「うーん、悪魔だし、ディアボロ?」
そう言った瞬間、脱力感が雪乃を襲う、足に力が入らなくなり、倒れ込む、更には目眩、キィーンという耳鳴りがする、果てには体が酸素を求め過呼吸の様な症状が起きる。
「ッア、ハァハァハァハァ、ゴァ……………ゴホッゴホッ」
異常なまでの苦しさ、まるでいきなり水中に入れられたかのような息苦しさ、四肢を襲う痺れ、視界から光が消える。
「おい!大丈夫か?………大丈夫じゃあ無さそうだな」
悪魔、ディアブロは焦りを隠せずに、どうしていいか分からずにただ立ちすくむ。
「医療班!!医療班を早く!!」
メリアは廊下に出て、叫ぶ。
ただ一人、フェルナだけは落ち着いていた。
「魔力切れか、仕方ない、取り敢えずは我の魔力を貸しておくか…」
そう呟いてフェルナは雪乃の唇に自分の唇を重ね合わせた、そしてゆっくりと人工呼吸の要領で雪乃の肺に心臓に、身体全てに魔力を行き渡らせる。
すると雪乃の不規則だった胸の動きがゆっくりとだが正常に戻っていく。
唇を離しフェルナは口元を拭い、こう言った。
「これで大丈夫だ、しばらく寝かせておけば元に戻るだろう」
「「………」」
いきなりの行為に周りは騒然としている。
「……い、いきなり、せっ、接吻だなんて!?」
メリアが頬を赤く染め、狼狽えながらそう言った。
「?効率的でいいと思うが…人間の間だと問題なのか?」
悪魔、ディアボロが落ち着きを取り戻し、メリアに対し疑問をぶつける。
続けてフェルナも、
「問題あったか?」
「え!?あれ?私が間違っておりますの?」
この場に雪乃が起きていれば2対2でメリアがそこまで少数派にならなかったろうが、肝心の雪乃は気絶している。
「何事ですか!?」
メリアの叫びを聞き走って戻ってきたレギエナが状況を問いただす。
「あっ、えっと」
「悪魔への名付けで雪乃が倒れただけだ、気にするな」
言い淀むメリアに対し、フェルナが淡々と状況を告げる。
「そうです、ですのでベットの用意をお願いします」
メリアがフェルナの言葉に繋げベットの用意をさせる。
「「「はっ!!」」」
レギエナに着いてきていた医療班と執事が跪き雪乃を別の部屋のベットに運び入れる。
残された3人は、何やら話をしている。
「ディアボロよ、お主ユキノの魔力を全て持っていったのか…」
フェルナが呆れたようにそう呟いた。
「あ、ああ、わざとじゃ無かったんだがな…、ところであんた、えーとフェルナ様?の魔力とユキノの魔力系統が違うが大丈夫なのか?」
本来、自分の魔力系統と違う魔力が多少入っても問題は無いが、枯渇状態だと結果は違う、体に合わずに死亡する可能性だってある。
「フェルナでいい、我が渡したのは我の魔力の上澄みだけだ」
「上澄みですか?」
メリアはフェルナの言葉に疑問を持つ、
「封印されていた時の魔力の溢れをできるだけ無くすために二種類に魔力を分けたのだ」
フェルナは千年間封印されていた、その間回復する魔力をただ放出させるより、効率的に魔力の濃度を上げる方が良いと考え、濃い魔力を自分の中でも沈殿させることで、無属性の上澄み、濃い火属性の沈殿魔力に分ける事に成功していた。
「つまり、無属性をユキノに与えた訳か?」
ディアボロは正解を口にした。
「そうだ、よく気づいたな」
「まあな」
ディアボロは頬を掻き、照れながらに言った。
メリアがコホン、と咳払いをし話を遮る。
「ディアボロ、先程も言いましたが貴方には私の護衛をお願いします、そしてフェルナ様、貴方に”宝龍剣アルスノヴァ”をお返しします、それとディアボロ、ユキノの戦闘訓練をお願いします」
「分かった」
フェルナは小さく頷き、そう返事をした。
「え?」
ただ一人、ディアボロが声を漏らす。
「では、明日から始めるか、覚悟をしておけ、ディアボロ」
悪魔より悪魔らしい笑みを浮かべたフェルナによる地獄のような戦闘訓練が始まろうとしていた。
ベットに寝かされていた雪乃はそんな事つゆ知らずに幸せそうな寝顔を浮かべていた。




