9話 王と面会
今回後書き無いです
━━━ノルデアン王国━━━
城の奥深く、地下牢に2人の男女が拘束されている。
男の方は厳重に縛られ、女は縛られていない。
「…不公平じゃないですか?これ」
「我には拘束などまるで意味を持たないからな」
拘束されながらも、不満を同居人に投げかける。
「そんなに嫌なら外せばいいではないか」
「しないよ、だって見張りいるじゃん」
牢の前には先程話していた門番、レギエナが立っている。
「ああ、気にしないでいいよ、これはあくまでも形式的なものだからね、体裁を守る為にも協力して欲しいんだ」
「分かってますよ、…レギエナさんって何者なんですか?」
なら何故拘束されているのかを問いたいが、聞いても意味が無さそうなので別の質問をする
「僕かい?僕は元騎士長だよ」
「…え?、じゃあ何で門番なんかやってるんですか?」
「色々あるんだよ、年齢的な物もあるしね」
何か含みのある物言いだ。
「僕はね、友達だと思ってた奴に、そいつが騎士長になるために蹴落とされたんだ」
「恨んでたりしないんですか?」
「まさか、恨んでるよ、それこそ殺してしまいたいくらいにね」
にこやかに、それでいて目は笑わない表情で言い放つ。
「我が殺してやろうか?」
「…ありがとう、でも大丈夫、もうすぐ彼は堕ちるから」
少し考えこみ、笑いながらそう言う。
「お主、魔眼持ちか?」
唐突にフェルナが聞く。
「ああ、先見の魔眼を持っているよ」
「…気を付けろ、先見は持ち主の移動ができる数少ない魔眼だ」
「大丈夫だよ、この事を知っているのは国王とその腹心、そして貴方達だけだから」
そんなに重要な事を話していいのだろうか?、多少の疑問は残るが余り話したく無さそうなので別の話題を探す。
「ところで、いつまで待てばいいの?」
「うーん、あと少しだと思うけど」
タイミングよく階段から足音が聞こえる。
「大変お待たせいたしました!拘束を解かせて頂きます」
大きな声で兵士の1人が拘束を解き始める。
「では、こちらへ」
拘束を解いたのとは別の兵士が階段の方から喋りかける。
雪乃とフェルナは無言でついて行く。
「こちらで、服を見繕ってありますので、それに着替えてください」
階段を上がり、廊下を進んだ一番奥の部屋に案内された。
「分かった」
雪乃はそう返事をし、フェルナは魔法陣を書き始めた。
「「え?」」
雪乃と案内してきた兵士の声が重なった。
「何やってんだよ!?」
「む?着替えだが」
「…あぁ、そういやそうだった」
「どういう事だ?」
「えっーと」
説明しようにも原理が分からないため言葉に詰まる。
「魔法陣の中に魔箪笥を入れてある、その中から直接我に服を着せる構造の魔法陣だ」
「だ、そうだ」
「なるほど、流石は龍人ですね!」
フェルナの援護により、事なきを得た。
「どんな服入れてあるの?」
「一応は男服も入れてある、お主も着るか?」
「着てみたいな」
「分かった、では、サイズを測るぞ」
魔法陣から何やら尺度を測る道具だろうか?それを取り出し、腰に手を回したり胸板に手を回したりして測っていく。
「…お主の体格なら、これか?」
そう言って取り出したのはタキシードだ、一般的な黒では無く、少し赤みがかっている。
「これは我の弟が着ていた物だ、くれぐれも傷つけるなよ?」
「そんなに良いもの貸してくれるのか?」
「国王に会いに行くのだ、これぐらいは必要だろう、それに数千年間誰も着ていないのは寂しいではないか」
少し遠い目をしながらそう言う。
「そうだな、ありがたく着させてもらう」
「…さて、我も着替えるか」
フェルナが魔法陣の中心に立つと、魔法陣が光り、フェルナが光に包まれる。
光が止み出てきたフェルナは赤のフリルを付けたピンクの生地、黒いベルトに金の留め具のドレスに、凝った装飾のティアラ、クォーツのハイヒール、細身の白い手袋に金と銀の指輪を付けていた。
「…変わりすぎだろ」
「まあ、女は化粧と服で雰囲気が変わるからな」
お嬢様の様な格好からでる男の様な喋り方に違和感が凄い。
「口調って、どうにかならない?」
「なるぞ?、ちょっと待ってろ」
軽く深呼吸をしてから。
「ン"ン、これでいいですか?」
声が1トーンほど上がり、喋り方も変わる。
「最早誰か分からないな」
雪乃は笑いながら、そう答える。
調子に乗りすぎた雪乃の腹にフェルナの拳が刺さる。
「ッ!?」
「調子に、乗りすぎですよ?」
冷たく、感情を持たないような目で見下される。
「…はい」
「まあ、お主も中々に似合っているではないか」
喋り方を元に戻し、雪乃の服装を褒める。
赤みがかった紺のタキシード、赤と金のネクタイ、それに銀のタイピン、整髪料で髪を上げている。
「どうも」
照れながら返事をする。
「お二人共お似合いですね」
後から来たレギエナが2人を褒める。
レギエナは鎧ではなく、正装で髪を上げている。
兜で隠されていた頬の傷の痕が目立つ。
「では、行くか」
「分かりました、案内しますね」
レギエナが先頭を歩き、後ろを2人が着いていく。
階段を上り、長い廊下を進み、一際重厚で豪華な扉の前に着く。
「着きましたよ、できる限り粗相の無いようにお願いします」
「…はい」
雪乃は緊張で胃が痛そうだ。
「うむ」
フェルナは堂々としている。
重厚な扉を二人がかりで兵士が開く。
中は豪華な装飾で、恐らく初代国王や先代たちの肖像画が飾られている、壁は純白で、天井には金で出来たシャンデリアが吊るされている。
その奥、一際豪華な玉座に座っているのは、15位の小女。
彼女こそメリア・インス・ノルデアン、現連合国家ノルデン、旧ノルデアン王国、75代目国王だ。
「よくぞ、来てくれました、初代国王様の愛娘、フェルナ・メディス・ノルデン様、今回は何の御用で?」
話を聞いていた、大臣や雪乃たちが衝撃を受ける。
「なんてことは無い、武器を返して貰いに来た」
「そうですか、どうぞ、と言いたいのですが、あれは我が国の財産、そう易々と渡せません」
メリアは凛とした態度で表情を崩さずに言ってのける。
「そうか、ならば別の要件だ、こいつの名前はイザヨイ ユキノ、勇者の資格を持っている男だ」
「それが何か?」
「こいつの兵装を整えたい」
「多少しか出来ませんね」
場に危険な雰囲気が漂い始める。




