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第81話 会議は踊る、されど進まず

~十二柱の一人・ベルゼブブの視点~


「どういう事なのよ。」

アスタロスは怒りながら私に訴えた。

アスタロスが怒っているのは、前よりも十二柱の集まりが悪かったからだ。


 私は部下を通じて十二柱たちに、魔王の降臨を確認した事とその力が常軌を逸したものである事を伝えた。その魔力は下級悪魔の精神を崩壊させるほどだった。そして、その下級悪魔は報酬も受け取らずどこかへと消え去ってしまったのだ。


 報告に向かった部下の話ではそれを聞いた十二柱たちは必ず行くという返事をしていたという事だった。

 しかし、集まったのは私を含め6人しか集まらなかった。前に来ていなかった4人に加えてサタンとダンタリオンも今回は来ていなかったのだ。


「やる気のないやつは放っておけばいいんじゃないかしら。」

エリゴスは言った。エリゴスは魔王をやる事に前向きになっていた。しかし、今回の魔王を倒すには全員の力が必要に思えた。


「今回の魔王の魔力は今まで以上のものだと聞きました。私たちが総力戦で挑むのが無難かと・・・」

フォルネウスは私と同じ意見のようだった。


「そんでさー、メドゥーサの彼氏が俺に問い詰めるわけよ。お前のせいだって。いやいや、俺のせいじゃないっしょ。俺は言ってやったわけさ。何か証拠があるのかって、そしたら・・・」

まだその話続いていたのか・・・そういえばメドゥーサの事を忘れていたな・・・ベリアルは誰も聞いていない話を永遠と続けていた。


「私にいい考えがあるわ。まず、私が1人で行ってくるわ。」

アスタロスが唐突に提案した。


「いや、今回の魔王の魔力は尋常ではない。複数で襲撃する方が得策だろう。」

アスタロスの力を疑うわけではない。彼女の見た目は子供のようだが、得意とする水魔法でその昔1つの島国を海に沈めたことがあると聞く。

それでもだ。あの魔王はそれを上回る畏怖を感じさせるものがあるのだ。


「分かってるわ。十分気をつけるし。何も私が魔王を仕留めようってわけじゃないのよ。私の固有呪術を使えば弱点くらいは探れるはずだわ。だから、3カ月間私に時間を頂戴。その間に必ず魔王の弱点を見つけ出してくるわ。」

弱点だと・・・。悪魔族は基本お互いの固有呪術を教え合ったりはしない。だから、アスタロスがどんな能力を持つかを私は知らないのだ。


「お前にそんな能力があるなんて、YO! 初earだ、YO! 俺が探られるのはイヤーだYO、YO!」

私達はお互いに呪いをかけないという不文律があった。だが、破って呪いをかけるという事もありえる話なのだ。


「そんな事はしないわ。私は約束はちゃんと守るもの。そういうあんたは私に呪いをかけてないでしょうね。」


「大丈夫だYO! お嬢さん! 常識的に 情報は 開放するYO! 破れば 杖刑、処刑、オーケイYO!」

バルベリスはリズムを刻んで否定した。


「ふん。どうだかね・・・そういうわけだから、ひとまず私1人を南の大陸へと転移させて頂戴。転移したらあんたはこっちに戻ってきた方がいいわ。あんたが万が一魔王に操られたら、こちらの大陸に渡って来られて、一瞬で皆が支配されてしまうわ。もし3か月後に指定の場所に私が戻らなければ、私は死んだと思って行動してくれて構わないわ。」

アスタロスの決意が私に伝わってきた。アスタロスは死を覚悟して、先鋒に名乗りを上げてくれいるのだ。私はアスタロスに感謝した。


「・・・そうか。すまないな。では慎重を期してくれ。くれぐれも無茶はするなよ。」


「私に任せといて。魔王の弱点は必ず暴いて見せるわ。」


「そうか、では頼んだぞ。」

私はアスタロスに任せることにした。


魔王の特徴を私の知る限り伝えて、私の転移魔法でメガラニカ王国内部へと送り出した。



~十二柱の一人・アスタロスの視点~


 なーんてね。私がそんな面倒くさい事するはずがないじゃない。


 南の大陸にちょっと用事があったから、ベルゼブブの転移魔法を利用したかったのよね。頼むの嫌だったけど、頼まれたんなら遠慮なく利用させてもらうわ。本当に丁度良かったわ。

私は笑いが止まらなかった。


 そもそも私の固有呪術『 司書室の少女ザ・クイーン・オブ・ミステリー 』は、実は魔王の弱点を探るのに何の効果も発揮しないもの。

 私の固有呪術は建物にかけることができるのよね。その呪いのかかった建物で殺人事件の発生率があがるという呪いなの。私とその呪いのかかった建物との距離で発生確率が変動するわ。私が建物内にいれば、ほぼ間違いなく事件が起きるわ。


 まー、メガラニカ王国の魔導士学園に魔王がいるらしいから、その学園の建物に呪いをかければワンチャンで魔王を()れるかもしれないけど、ほぼ無理でしょうね。


 私の呪いは、殺したいという気持ちを増幅して、殺人事件を起こしやすくしているのよね。だから、ランダムでしか殺すことができないのよ。生徒たちがあんなに集まっていたら、特定のものを殺すのは難しいのよね。それに、そういった事を考えているものにしか効果がないから、建物内に、そういった気持ちを持つものがいなければ意味ないのよね。もしいなければ、外部からその建物へと事件を起こしそうな集団を誘因する作用があるものなのよ。


 だから、魔王を殺したいとか思うものが建物内にいなければ、意味のないものよ。それに、魔王に向かっていったとしても返り討ちにあうのが目にみえているわ。


 そもそも、私が魔王のいるような危険なところへ1人で行くわけがないじゃない。

下級悪魔とはいえ、その魔力に触れただけで狂ってしまうなんて、考えただけでも恐ろしいわ。


 私が今回南の大陸へ来たかった理由は、お肌にいい温泉というものに入ってみたかったからなのよね。前々から噂は聞いていたんだけど、南の大陸まで行くのは本当にめんどくさくて諦めてたのよ。今回は本当にラッキーだったわ。


 思えば、ずっと前にあった最初の会議の時にベルゼブブが南の大陸へ行こうと行っていた時に、その話を聞いていれば、その時に南の大陸へと行けたのに。

 あの時は面倒くさくて、つい会議に欠席してしまったのよね。そしたら、いつの間にかベルゼブブとフルーレティが南の大陸へ行ったというじゃない。私は後悔していたのよ。

 だから、今回は2回も連続して会議に参加して、南の大陸へと転移させてもらう機会を伺ってたってわけ。


まっ、3か月後には適当に報告しておけば大丈夫でしょう。

『くっ、今回の魔王に弱点は見当たらないわ。』

こんなところでいいかしら。

まー、3カ月間ゆっくり温泉ライフを楽しみながら、考えればいいわ。


私はカイエン王国にある噂の温泉宿『アバロン』に向かったわ。


「1名なんだけど。大丈夫?」

私は受付に聞いた。


「お嬢ちゃん。1人かい?」

私はこう見えて4000歳を超えている。しかし、そんなことは言わなかった。


「私はもう成人してるわ。失礼ね。」

私は南の大陸で使われている金貨10枚を出した。人族の世界では金がものを言うのはいつの時代も一緒なのよね。ホント単純だわ。


「これは失礼しました。・・・しかし、当宿はただいま満室でして、ご予約頂かなければ泊まることはできません。」


「そう、いいわ。予約を取ったら、いつから利用できるの?」

私は争うようなことはしないわ。1週間くらいなら気長に待つわ。


「非常に申し訳ありませんが、半年後になります。本当にすみません。」

受付は頭を下げて謝った。


半年? それはいくらなんでも待てないわ。3カ月しかこちらにいられないもの。それに、私は東の大陸からわざわざやって来てるっていうのに。

仕方ないわね・・・


『 司書室の少女ザ・クイーン・オブ・ミステリー 』


私は固有呪術を発動した。


「分かったわ。また来るわ。」

私は受付にそう告げて、宿の入り口付近で時間をつぶした。3時間くらいはそこでボーっとしていただろうか。宿の中は何やら騒がしくなっていた。

どうやら成功したようね。

私はひとまずそこを離れて、1週間後に再び宿を訪れた。


「また近くに来たんだけど、やっぱり空いてる部屋はないのよね?」

私は前と同じ受付に質問した。


「そ、それが、あれから少し色々とありまして・・・予約が何件かキャンセルになったんです。ですから、ご利用していただくことは可能になっております。」

予想していた答えが返ってきた。


「そうなの。運が良かったわ。じゃあ、これで2カ月ちょっとの間泊まることはできる?多い分はチップとして取っておいてくれて構わないわ。」

私は金貨10枚を出した。


「えっ、あっ、ありがとうございます。では、こちらに。」

受付は私を部屋へと案内してくれた。

私は早速美容にいいという温泉へと向かった。


『本当にいいお湯ね。お肌がすべすべになるのを実感できるわ。東の大陸のお湯とは全然違うわ。ただ、少し客が多いのが落ち着かないわね。』

私はお湯に浸かりながら考えた。


『 司書室の少女ザ・クイーン・オブ・ミステリー 』


私は再び固有呪術を発動した。一度、事件が起きると私の呪いはリセットされるの。


これで、もう少し客足が減るわね・・・











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