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第41話 勇者一行の帰路・ラスト

帰路???日目

~魔法使い・ティーエの視点~


 岩の洞窟で何日目でしょうか。突如としてその凄まじい魔力が感じられました。

 この感覚はあの洞窟の中で感じた時と一緒です。あの時も、あの変態悪魔が魔法を使うまで魔力を一切感じませんでした。対峙した時でさえも、まがまがしい威圧感はあれど私の魔力探知に全く反応しませんでした。

 そして、氷の魔法を使った瞬間に圧倒的な魔力を感じ、私は失態をしてしまいました。


 その時と同じ魔力を感知し、私は洞窟の中で震えました。そして、凄まじい魔力が消えると共に、地中に感じた魔力も次々に消えていきました。


 外で何かが起こっているようです。しかし、今、外に出るのは危険です。

皆にそれを伝え、洞窟内の火を消し、土魔法で入り口を塞ぎました。そして、洞窟の中でほとぼりが冷めるの待ちました。


 数時間は経ったでしょうか。外に出ると信じられない光景が広がっていました。


帰路???日目

~僧侶・マヤカの視点~


 ティーエの話では、洞窟で感じた魔力と同等の力を持つものを探知したという事でした。私たちは、この大陸の恐ろしさを身に染みていたので、ティーエの意見に賛成して、洞窟の中で、数時間息を潜めました。


 そして、外に出てみると、モグラの魔獣が角を折られて横たわっていました。


 ティーエの話では、すべての魔獣の反応がなくなっているそうです。

 そこで私は確信しました。


 魔王様です。魔王様が助けてくれたに違いありません。北の大陸がすごいといっても、魔王様ほどの魔力を持つものがそう何人もいるとは思えません。

 私は南の大陸へと帰りつくことができたなら、やるべき事を決意しました。



帰路???日目

~勇者・ジークの視点~


 洞窟から出た後は、魔獣に襲われることなく密林地帯へと到着することができた。

 後はここを抜ければ、海岸に泊めてある船に乗れば、南の大陸である。予想外に時間はかかったが、なんとか『奇跡の水』を持ち帰ることができた。


 俺たちが、密林の中ほどまで来たとき、2人の人影を発見した。

どうやら、その2人は何かを探しているようだった。向こうもこちらに気づき警戒しているようだった。

その2人は少年と少女だった。その耳は少しとがっていた。妖精族(エルフ)だった。


 エルフは、南の大陸にもいるのだが、その数は人間に比べて少なかった。さらに、人間はエルフを捕まえようとするので、滅多に人前にエルフは姿を現さなかった。


俺は敵意がない事を相手に伝えると、向こうも攻撃してくることはなかった。

「この辺りで、他にエルフを見ませんでしたか。」

少年のようなエルフが俺に尋ねてきた。


「いや、俺たちは砂漠の方から来たが、君たち2人以外に誰とも出会ってないな。」


「そうですか。」

少女のエルフの方が心配そうな顔をしていた。


「何かあったんですか?」

ティーエが聞いた。


「私達の子供が家出したんですよ。南の大陸へ行くという書置きを残してたので、慌てて探しに来た次第でして・・・」

15歳くらいの少年、少女かと思ったが、子供がいるという事は、どうやらもっと歳をとっているらしかった。エルフの寿命は非常に長く、外見の成長は15歳くらいで止まるらしい。


「どうして、南の大陸へ?」


「なんでも、メガラニカ王国の魔導士学園で種族問わずに、特別クラスが編成されるらしく、そこに入学するだとか書かれてました。南の大陸はエルフにとって・・・その・・危険であるという事をまだわかってなくて・・・」

エルフは力が弱いのだが、魔力は高い。それで、南の大陸では捕まえられて、奴隷とされる場合があった。多分、危険とは、それの事だと察した。

 俺たちも海岸に向かっているので、一緒に海岸まで探しながら行くことにした。


「もし南の大陸に行ってしまっていたら、見つけて連絡します。私は、3年前まで魔導士学園の生徒でした。帰ったら、魔導士学園に行ってみます。子供さんのお名前は何ていうんですか?」

道中でティーエが尋ねる。


「ありがとうございます。名前はリーンという女の子です。産まれた時から魔力が高く、魔法に関して探求心がある子でした。私たちの里では学ぶことがないとよく言っていたのです。もし幸せにやっていけてるようなら、魔導士学園で勉強することに反対ではないのですが、私達エルフにとって、南の大陸で暮らすのはそう簡単な事ではないので・・・」

エルフは人間に見つからないように静かに暮らすか、奴隷にされるか、高い魔力の力を利用して宮廷魔術師等の役職につくかが南の大陸で選ぶことができる選択肢だった。

そういう事を知らずに南の大陸に渡ったのなら、確かに心配であろう。


「わかりました。南の大陸で無事であったら連絡します。」


「よろしくお願いします。」

俺たちはいろいろ話しながら密林を抜けて、海岸へと出た。

そして、船を泊めていた場所へと向かった。


???日目

~ドワーフ・ガラフの視点~


 何という事じゃ。船を泊めてあったところに、船がなくなっておった。嵐に巻き込まれ流されたか、魔獣に壊されたか・・・もしくは、リーンというエルフが乗って行ったか。可能性はいろいろと考えられた。ワシらは3年近く旅していたんじゃから・・・


 しかし、ここは密林じゃ。幸い木がいくらでもある。ワシの腕にかかれば船ぐらいすぐに作ってみせよう。


 ワシ等はエルフの村にしばらく厄介になることになって、密林を引き返すことになった。

 後ろの海を見ると、ワシ等の気持ちを表すように、遠い向こうの空は黒い雲が広く覆っておった。


  『 奇跡の水 』 残数 2本



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