第40話 鍛冶
山の麓で俺は奇妙な小屋を発見した。
俺はこの旅に出て、必要なものがいろいろあることに気づいた。料理などで鍋や包丁などが必要になってきたのだ。いつも肉の丸焼きや、食べれる植物などをそのまま食べていると飽きがきていたのだ。
だから、小屋に誰かしら意思の疎通ができるものがいるならば、今持っているものと交換でもできないかと思い、訪ねてみた。
「ごめんくださーい。」
俺は玄関をノックしたが誰も出てこなかった。
「マスター、家の中から人の気配がしないですにゃ。」
試しにドアを引いてみると、鍵がかかっていなかった。
そして中を見回すと、誰もいなかった。
「ごめんくださーい。誰かいますか?」
もう一度叫んでみたが、返事はなかった。
「誰もいないですにゃ。せっかくだから今日はここで休みますにゃ。」
アーサーは、一階にあったベッドに着地して、丸くなった。
俺は他の部屋を見ることにした。1つの部屋は風呂のような形をしたものがある部屋だった。しかし、水を出す蛇口がなかった。2階には1階と同じく2つのベッドが並んでいた。2階にあるベッドは一階のものより少し豪華なつくりをしていた。毛皮がしかれていたのだ。
「アーサー、2階のベッドの方が良さそうだぞ。」
一階で寝ようとしているアーサーに教えてやった。
アーサーはふわふわと2階に飛んできた。
「本当ですにゃ。こちらの方がもふもふして気持ちいいですにゃ。」
アーサーは再びベッドの上で丸くなった。
俺は調理器具などを探したが、見つけることができなかった。しかし、代わりにあるものを見つけた。少し小さいサイズの鎧とひび割れて破損した鎧、それに斧である。
それを見ていい事を思いついた。
一度溶かして、ナイフや鍋を作り出せばいいではないか。授業で武器の作り方は習っていたので、なんとかなりそうだった。
ただ問題は勝手にこの小屋のものを自分のものにしていいのかということだった。見たところこの小屋に生活感は感じられなかった。
俺は斧と小さいサイズの鎧はそのままにして、ひび割れて破損した鎧を溶かすことにした。
この破損した鎧なら、使い道もなさそうだし、万が一ここの住人が帰って来た時に、なくなってても気にしないだろうと思ったからだ。
俺はさっそく、外に出て、その鎧を溶かそうとした。
最初赤い炎の魔法で溶かそうとしたのだが、全く溶ける気配がなかった。そこで青い炎に変えたが、それでもなかなか溶けなかった。時間がかかりそうだったので、黒い炎で試してみることにした。
黒い炎だと蒸発してしまうと思って使わなかったが、黒い炎を調節して溶かすことに成功した。
『こんなに溶けにくいという事は鍋として使えるだろうか・・・』
俺は少し不安になったが、その不安は杞憂だった。
やはり、この鎧から作られた鍋は熱を通しにくかった。しかし、内側から熱して蓋をすれば、中の熱を外に逃がさず料理することができた。
中から熱するとは奇妙であるが、魔法を使えば中から熱することが可能なのである。魔法を使わなくても焼いた石を鍋の中に入れて調理すれば問題なかった。
そして、ナイフも作ったが、切れ味が抜群であった。
『鍛冶師としても、路銀を稼げるかも・・』
自分の隠れた才能に酔いしれながら、アーサーの隣のベッドで眠りについた。
翌朝、作ったナイフと鍋と余った金属をアーサーに預けた。
そして、山脈を越えるために俺はある魔法を使った。
竜化の魔法である。
竜の姿になって、飛んで山脈を越えてしまおうと考えた。
「マスターは人族だと聞いてましたが、竜族だったんですかにゃ?」
「いや、人族だよ。竜になれる魔法を使ったんだ。」
「そうなんですかにゃ。」
アーサーを背中に乗せて、俺は飛び立った。
上空で飛竜の群れに遭遇した。
飛竜は竜族の下級種にあたる。授業で習った時は、人間と猿のような関係なのかなと思ったのを覚えている。飛竜は言葉を話すことができない。だから、警告することもできなかった。
しかし、竜の国で育ったせいか、できるだけ飛竜を傷つけることはしたくなかった。
俺は威嚇のために炎のブレスを吐いた。当たらないように注意した。その炎を見て実力差を感じ取ってくれたのか、飛竜たちは散り散りになって退散してくれた。
俺はまた飛竜に遭遇するのも嫌だったので、山脈を越えたところで竜化を解いて、また歩くことにした。
砂漠は暑く、砂に足をとられてなかなか進まなかった。なので、魔法を使って、氷の道を敷いた。これで足をとられることもないし、少し涼しく感じた。
魔法のおかげで砂漠の旅も快適に進むことができ、あと少しで砂漠地帯が終わるところまできた。
そこには大きな1枚岩あった。その周りには、砂ぼこりが舞っていた。時折、地中から魔獣が飛び出しては、地中に戻っていった。
「あれは、ロックブレイカーですにゃ。あの角は素材として高価なはずですにゃ。」
「へー、じゃあ、何本か取っておくか。」
俺はまず辺り一帯に魔法で雨を降らせた。
そして、その岩の周りに雷を打ち込んだ。
「 穿て! 千条の雷撃」
俺の合図とともに、雷雲から幾条もの雷が地面へと突き刺さる。その電撃が先ほどの雨の水を含んだ土の中を駆け巡った。
俺は地中の魔獣は放っておいて、地上で倒れている魔獣の角を何本か切り取り、アーサーの亜空間へと放り込んだ。
俺はその後も何匹かの魔獣を倒しながら進んでいって、密林地帯も越えた。するとそこには広大な海が広がっていた。ここを渡れば南の大陸へと到着することができる。
ふとそこで、海をどのようにして渡ろうかと考えた。前のように竜になって飛んで行ってもいいのだが、途中で疲れた時に陸がなければ休むことができないな。などと考えていると、アーサーがふわふわと近づいてきた。
「マスター、向こうにいいものがあるですにゃ。」
アーサーについていくと、そこには船があった。2、30人くらいは乗れそうな帆船だった。
こんな船には前の世界でも、もちろんこっちの世界でも乗ったことがなかったので、わくわくしてしまった。
「でも、これは誰かの船だから、勝手に使うのはまずいんじゃ・・・」
「大丈夫ですにゃ。長い間使ってなさそうですにゃ。たぶん、700年前の戦争の時に置いていった船ですにゃ。」
『人間が北の大陸に攻めてきたっていうあれか・・・なら、ここに置いてあるのは、その時に放置していったものか・・・』
船体を見ると、そこまで古い船のようには思えなかったが、船に乗ってみたいという衝動がその考えを抑えつけた。
「そうだな。誰も使ってなさそうだし、これで海を越えるか。」
「そうですにゃ。ここにあっても誰にも使われないんだから、マスターが使った方がいいですにゃ。」
アーサーの言葉で決心をして、俺は船に乗り込み、碇をあげて出港しようとした。
その時、陸の方から1人の少女の声が聞こえた。
「待って、待って。その船、私のよー。」




