表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/123

第27話 告白・その1

 師匠は俺が人間の言葉が分からない事は、最初に出会った時に気づいたらしい。最初人間だと思って話しかけたら、全く通じなかったからだ。


 そういや、何か言っていたような覚えもあった。


 しかし、これから人間のいる大陸に渡るのであれば、言葉が分からないのは不便だという事で、師匠に南の大陸の言葉を教えてもらうことになった。学校を卒業するまでにはなんとかものにするつもりだった。


 俺は学校に行き、旅のための知識をつけ、師匠には魔法の修行と言葉の勉強をしてもらい、家では妹のルーリスの世話をするという毎日を送っていた。


 ルーリスは可愛かった。ルーラとアギリスの娘なのだ。間違いなく可愛く育つに違いなかった。俺は暇があるとルーリスの相手をしていた。ルーリスは1年少しで言葉を喋った。それは、まだ単語レベルであったが、ママやパパといったものだ。嬉しかったのは俺のことを「にぃーに。」と呼んでくれたことだった。俺の顔を見ると「にぃーに。」を連発して。俺に抱っこされるのをせがんでくれた。


 俺は1年半後にこのルード皇国を出て行くが、妹が俺の事を忘れてしまわないか心配だった。戻って来た時に、忘れられないように、残りの時間を大切に過ごそうと思った。


そんなある日、俺はイグニスに呼ばれた。大事な話があるとの事だった。

「ウェンディーの事をどう思う?」

唐突な質問だった。


「どうって?幼馴染というか、大切な友達だと思っているよ。もちろん、イグニスの事も同じくらい大切な友達だと思ってる。」

イグニスは少し照れたような顔をして、すぐに真面目な顔に戻った。


「好きだとかそういう気持ちはないのか?友達としてではなく恋愛として・・・」


『えっ?』

はっきり言って俺はウェンディイーに対しては、全く恋愛対象として見たことはなかった。綺麗な顔立ちだし、スタイルもよかった。しかし、そういった感情は全くなかった。小さいころから一緒に育ったので、姉弟のように感じていた。それに、イグニスがウェンディーの事を好きだと感じていたから、余計にそういう気持ちにはならなかった。


「俺はウェンディーの事は姉ちゃんみたいに感じていたし、たぶん、ウェンディーも俺のことを弟のようにしかみてないんじゃないかな。」


「そうか・・・。実は・・・俺はウェンディーの事が好きだ。成竜の儀が終わればプロポーズをしようと思っている。・・・どう思う?」

いきなりの告白にびっくりしてしまった。結婚するってことか?付き合うとかはないのだろうか?でも、それはそれで、かっこいい気がした。イグニスらしいとも思った。


「イグニスとウェンディーはお似合いだと思うし、俺も成功したら嬉しいよ。なんなら、今から告白してもいいんじゃないか?俺も協力するし。」

本心だった。2人には仲良くなってもらいたかったし、今から告白してもうまくいくんじゃないかと思った。


「俺はウェンディーはアギラを好きじゃないかと思っている。」

予想外の答えが返ってきた。


「えっ、そんな事はないと思うけど・・・なんでそう思うの?」


「竜族は回復魔法が苦手なのを知っているか?風属性ならなおさらだが・・・」


「聞いたことがあるかも・・・」


「ウェンディーが使えるようになったのは、アギラが傷を絶やさなかったのを見かねて、覚えたものだ。その想いの強さこそが、回復魔法を覚えることができるようになったのだと思う・・・」

言いたいことは分かった。俺を想って回復魔法を覚えたのだから、俺に気があるかもしれないということだろう。


「それは、俺の事を弟のように思っているからだと思うけど。イグニスの勘違いじゃないか。」

恋は盲目だというが、いろいろな不安がイグニスの目さえも曇らせてしまったのだろう。


「そうか。アギラがここを離れている間に、ウェンディーに告白するのはフェアじゃない気がしてな。」

そんな事まで考えてくれていたのか。


「いや、2人が結ばれたら俺は本当に嬉しいよ。心からそう思ってる。俺はイグニスを応援するよ。」

「ありがとう。」


 イグニスはやはり成竜の儀は終わらせてからプロポーズするということだった。

我が友イグニスは男前な竜人だった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ