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第17話 竜の呪い

 俺の家にはウェンディーとイグニスしか友達を連れてきたことがなかったので、ルーラは学校でのことを心配してくれていた。それもあったのだろう、嬉しそうにエレオノールと話をしていた。ちょっと勘違いをしているようだったけど・・・ウェンディーも勘違いしてたが・・・


 エレオノールは、ルーラに回復魔法のコツを教えてもらっていた。回復魔法はウェンディーも苦労していた。しかし、光属性は風属性よりも回復魔法に秀でているはずだから不思議に思った。


「治したいと心から思わないと魔法は発動しないわ。明確に傷を治すというイメージを持って、起こりうる結果を意識するの。私達竜族は怪我をしにくいし、自然に傷は治癒するわ。だから、他人を治すというイメージをしづらいのよ。大切な人が傷ついたことを想像して、その人を治したいと思えば、回復魔法も使えるようになるんじゃないかしら。」

との事だった。それを聞いて、なるほど。と納得のいった顔をしていた。


 それから、ルーラは学校の話を聞きたがっていたが、何回か咳をし始めて、

「少し体調が悪いから、上で休んで来るわ。病気がうつっちゃいけないし。せっかく来てくれたのに、悪いわね。いつでも遊びに来てちょうだいね。」

そういうと2階の寝室へと昇っていった。


 リビングで2人だけになり、沈黙が流れた。

 エレオノールがその沈黙を破って聞いてきた。

「君のお母さんは、いつぐらいから体調を崩しているんだい?」


「たぶん俺が生まれた時からずっとだと思う。だから、それ以前からだと思うんだけど・・・どのくらい前からかわからない。」


「もしかすると、竜の呪いにかかっているんじゃないかい?」


「えっ?」

初耳だった。体調不良は原因不明だと思っていたが、エレオノールは何か知ってそうだった。


「竜の呪いにかかると、魔力結晶が黒いオーラに侵食されると聞いている。侵食されると体力が奪われて、日常生活に支障をきたすらしい。自分の魔力で魔力結晶を保護してれば、すぐには死ぬことはないが、その保護してる魔力と竜の呪いの均衡が破れれば、さらに弱っていき、完全に黒いオーラで魔力結晶が覆われれば、最悪の場合は死ぬケースもあるそうだ。」


「・・・けど、長い間体調が悪いってだけで、その竜の呪いと疑うのは飛躍しすぎじゃないか?」


「そうだね。確かに竜の呪い以外の可能性もあるけど。確率の問題さ。竜族は普通の病気にかかったとしても、すぐに治る。それが8年以上も治らないってのは竜の呪いの可能性があるってことだ。それに、実は他にも根拠はあるんだ。」


「どんな?」


「まず知っておいてほしいのは、この呪いは特定の条件下でうつる可能性があるらしい。魔力結晶の保護が外れた時だ。たださっきも言ったように普段は自分の魔力で呪いを抑えている。しかし、眠っているときは完全ではないらしいんだ。浅い眠りの時は大丈夫だが、深く眠りについたら呪いが自分の周りの半径1m付近に影響を及ぼすそうだ。」


それを聞いてエレオノールの考えが間違っていることを指摘する。

「それなら、母さんは竜の呪いではないよ。俺は母さんと一緒に寝てたことがあるし、ベビーべッ・・・」

赤ちゃんの時、近くで寝ていたことは言わない方がいいかと思って話を途中で切った。普通は知ってるはずのない事だったからだ。


 エレオノールは首を横に振っていた。

「君には魔力結晶がないから、うつらないよ。たぶん、うつるとわかっていたら一緒には寝てないと思う。」

魔力結晶に対する呪いなのか・・・


「でも、竜の呪いが寝ている時にうつる可能性があることが、なぜ母さんが竜の呪いにかかっていることとイコールになるんだ?」


「今のところその根拠は2つあるけど、質問の答えによっては3つになるかもしれない。」


「それは?」


「まず1つ目は1階から2階の高さだ。かなり高い造りだ。10mくらいはあるんじゃないか。たぶん寝室を遠ざけて造ってあるんじゃないかな。そして2つめは、城のある中心から離れた郊外に住んでいることだ。君のお父さんは、たしか皇帝の直属騎士団という話だったよね。僕達竜族の足ならば、本気を出せば城まで行くのにそんなに時間はかからないが、この辺境の地から毎日城まで通うのは違和感を感じる。城に勤めているのなら、中心にある町に住んだ方がいいと思うんだ。ただ、町は結構込み合っているから、うつる可能性もあるってことで、竜の呪いにかかったものは差別を受けるらしい。それでこの郊外に住んでいるじゃないのかな。この辺りには呪い持ちの人は何人かいるって聞くし。」


 確かにうつる可能性を避けて行動しているという考えは、的を射ているように感じた。それに、エレオノールの話を聞いて1つ思い当たることがあった。


「そして、最後は質問による答え次第なんだが・・・・君のお父さんの寝室ってどこなんだい?一緒に寝ているのかい?」

 その質問は俺が予想していたものだった。普段仲がいいのに、寝室が1階と2階に分かれているのは俺も違和感に感じていた。しかし、元いた世界と違う文化や風習みたいなものかと1人で納得してしまっていた。


 俺は黙ってしまった。

「常にうつることを警戒していたなら、竜の呪いじゃない他の病気かもしれない。けど、寝ている時に限定して対策を施しているとなると竜の呪いを疑う価値はあると思う。ただ、やっぱり君の両親に聞いてみるのがいいんじゃないかな。たぶん、これだけ対策をとっているのなら、竜の呪いであることを知っているんじゃないか?」


そしてエレオノールが帰ったあと、アギリスにルーラは竜の呪いなのかについて聞いた。


答えはその通りだった。そして、この時初めて俺に課された使命を知ることになった。



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