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第20章 異変

第20章 異変


誰?そこにいるのは誰なの?


誰かがいる気配で目が覚めた星羅は、気配の主を確認しようとしたが、まるで金縛りにあっているかのように動くことも声を出すこともできない。


どうして?身体が動かない…助けて!お母さん!


それに視界が白くぼやけてはっきり物を見ることもできず、星羅は益々恐怖にかられた。その横で、誰だかわからない気配が動いている。


誰か助けて!怖いよ!お母さん!助けて、レン!


声を出そうと必死になるが、それも虚しく星羅の口からは何の音も生まれない。それどころか、唇ひとつ動かすことができなかった。いよいよもって恐怖が最高点に達したとき、突然身体が自由になり、視界が鮮明になった。

「!!」

星羅は暗闇の中で勢いよく起き上がると、慌てて電気をつけ人の気配がしないか確認したが、部屋には誰もいない。誰かがいた形跡すらもなく、静まり返った部屋には星羅の荒い息遣いだけが響いていた。

「夢…なの?」

 ドクドクと勢いよく打ち付ける心臓の音を感じながら、星羅はもう一度室内を見渡すが、やはり誰もいない。

「やっぱり気のせいだったんだ・・・・。誰もいるわけないよ、そうよ・・・・」

 自分自身を安心させるために星羅は何度もそう呟いた。時計をみると夜中の3時を指していたが、星羅は再び寝付くことができず、そのままベッドの上で小さく丸まって夜を過ごした。


「星羅!その顔どうしたの?」

 目の下に隈を作り、疲れた顔をした星羅を心配するようにレンが彼女の顔を覗き込む。

「ちょっと悪い夢をみて、眠れなかったの。気にしないで」

「悪い夢?眠れなくなるほど怖い夢だったの?」

 星羅が夢のことを話し終えると、レンは怪訝そうな顔をしていた。

「レン?どうしたの?」

 星羅は彼のただならぬ雰囲気に不安を感じ、恐る恐る声をかけたが、レンはそのまま表情を崩さない。

「星羅、その夢のようなことは初めてだったか?それとも以前にも同じようなことが?」

 否定の意を込めて首を振る星羅。

「そう・・・・。その人の気配が星羅に何かをしたとか、そういうことはない?」

 縦に首を振った星羅をみて、レンはやっと表情を崩した。

「そう、よかった。今日はエイトも来ないし、少し休んだん方がいい。僕がここにいるから、星羅は少し眠りなよ」

 言いながら星羅の額に手を当て、何かを呟いた。星羅は突然の行動に驚く間もなく、意識を手放すとそのままレンの方に倒れ込む。彼は、星羅を抱きとめるとそのまま自分の横にそっと横たえた。


 何かおかしい・・・・。この間のエリザの街への失敗といい、今回の夢といい何か裏がある。そんな気がする


 そう思うが、何がそう思わせるのか、それはレンにも説明ができなかった。ただの勘なのだ。それでも、星羅の周りで起こった不可解なことは偶然ではないと感じたレンは、星羅にあげたブレスレットにそっと触れた。

「僕にできることはこれぐらいだから」

 眠っている星羅にそう呟くと、レンはブレスレットに触れたまま、

「プレジーディオ、この者を守れ」

 まじないをかけられたブレスレットは一瞬明るく輝いたが、星羅は気づかないまま眠っていた。


 星羅は温かい光に包まれていた。周囲は白く輝いていて、星羅はその光に包まれながらふわふわと空間を漂っている。レンが額に手を置いた時はびっくりしたが、声を出す暇もなく、気がつけば星羅はここにいたのだ。


 ここはレンの魔法の世界なのかしら?暖かくて、気持ちがいいな・・・・。なんだか、レンが私を守ってくれてるみたい


 そんなことを思いながら、どれだけの時間を漂っていたのだろうか。頬に風を感じ、星羅がゆっくりと目をあけると、そこはいつもの広場だった。彼女はレンの膝の上に頭を乗っけた状態で、木陰で寝ていたようだ。

「あれ?目が冷覚めたんだね」

 自分の置かれている状況がすぐには理解できなかった星羅だが、レンが優しく笑っているのをみると慌てて起き上がった。

「え?私、ごめんなさい、重かったよね。え?なんで私寝てるんだろう。え?どれぐらい寝てたの?」

「落ち着いて。僕が勝手に君に魔法をかけて眠らせたんだ。ごめんね、疲れてそうだったからさ。元気になったみたいだね、疲れはとれた?」

 そう言われてみれば、寝不足からくる倦怠感がなくなっている。

「うん・・・・、なんだかすっきりしてる」

「そっか!よかった」

 星羅の返答に満足そうに頷くレンだったが、すぐに真顔になって

「星羅、もしもこれからも変わったことがあったら隠さずに話してほしいんだ。この間のエリザの街のことも、今回の夢のことも、不可解なことが立て続いてるだろう。だから心配なんだ」

 真剣な顔をしたレンから視線をそらすことができず、不安を感じながらも、その真剣な眼差しに心臓がバクバクと音を立てるのを星羅は感じるのだった。

 



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