第15章 ナオトからの手紙
第15章 ナオトからの手紙
「テストの順位表返すぞ」
担任の一声に、教室中がざわめきだす。
「泣いても笑っても、すでに終わったことだ。潔く結果を受け入れるんだな」
そう言って一人一人に個票を渡していく。渡された生徒は、三者三様の表情でその用紙に目を通していた。
「次、星!」
星羅もどきどきしながら個票を受け取り、自分の席に戻った。そっと用紙に目を通す。
個々の教科の点数と順位にざっと目を通し、総合得点と順位をみて星羅は目を丸くした。
順位が上がってる…。今回は自信なかったのに…。
「各教科の上位10名と、総合順位20位までは掲示板に貼られてるからな。今回よくできたと思う者はそれをキープ!今回は結果が振るわなかった者は、次は悔しい思いするなよ!まずは、テストお疲れ様でした。ホームルームはこれで終わり。気をつけて帰るように!」
ホームルームが終わると、星羅の元へ愛理が寄ってきた。その表情はかなり暗い。
「星羅、私、かなりやばい…。10位も順位下げちゃった。星羅は?」
「えっと…」
自分は順位が上がったとは言いにくかったが、愛理に嘘を吐いたところで意味はない。
「よくなってた」
「ほんと!?よかったじゃん!何位?」
「え・・・・、学年で5位」
「ほんとに?すごい!じゃあ掲示板に貼られてるじゃん。行こうよ!ほら!お母さんに写メ送りなよ」
自分と違い順位がをあげた星羅を妬むわけでもなく、愛理は素直に友人を称賛している。そんな愛理をみながら、星羅は彼女と友達になれたてよかったと心から思うのだった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
リビングから母の声が聞こえた。
「お母さん、メール見た?」
「みたわよ、頑張ったね。お母さんも嬉しくなっちゃった」
母に褒められ、自然と頬が緩む星羅。
「何作ってるの?私も手伝うよ」
今日は久しぶりに母と夕食を食べられるのだ。母の手料理も久しぶりだ。
「今は、唐揚げ作ってるの。星羅、好きでしょ?たまにしか料理作ってあげられないから、今日は星羅の大好物だよ。制服着替えたら、サラダ作ってくれる?」
「やった!唐揚げ大好き。わかった、すぐに着替えてくるね」
できたての唐揚げや、ご飯、サラダ、それからしいたけの入ったとろみ汁が食卓へ並んだ。
「美味しそう。よだれ出てきた」
「お待たせ。食べようか」
今日はテレビをつけなくても、星羅は寂しさを感じずに過ごすことができた。それに、一人で食べる食事よりも、誰かと一緒に食べる食事のほうが何倍も美味しく感じるものだと、しみじみ感じるのであった。
「星羅、久しぶりだね」
「うん、一週間ぶりかな。元気だった?」
「え、うん。元気だったよ。星羅も元気そうだね」
まるで付き合い始めの男女のような会話をしながら、2人は頬を赤らめせている。
「ねえ、エイ兄・・・・」
「なんだ?」
「なんか、お兄ちゃんと星羅さんって・・・・・。何ていうのかな、なんか、かわいいね」
ララは2人の様子をみながら一笑した。
「レンが女の子と話すのなんて、今までララしかいなかったからな。星羅と一週間会わないうちに、気恥ずかしくなってるのかもな」
と、エイトの元へ一羽の鳩が翔んできた。そのまま迷うことなくエイトの足元に降り立った。
「なんだ?ハトがこんなところに来るなんて珍しいな」
エイトはそう言ってハトの方に屈みこむが、ハトは逃げる素振りもみせずにジッとエイトを見つめている。
「?」
「エイ兄、そのハトと友達?・・・・なわけないよね」
ララも不思議そうにハトを覗き込んだ。
「俺はハトと友達になった記憶はないな」
どうにもおかしいと感じたエイトは、ハトにそっと手を伸ばした。
「え?」
本来ならハトから伝わってくるであろう筋肉の動きや暖かさがない。
「どうしたの?」
「ララ、このハト生き物じゃない。魔法だ。誰かが魔法で翔ばせた作り物だ」
こんなことをする人間は思い浮かばなかったが、もしもこれが村の誰かの仕業だとまずいことになる。このハトを作り出した人間の意図はわからないが、このままハトが作り主のところに帰ってしまうと星羅のことがバレてしまう可能性があるのだ。
「汝、その真実の姿を現せ」
小声で呪文を呟くと、ハトが一瞬だけ淡い光に包まれて消えた。代わりに、ハトが居た場所には封筒に入った手紙が落ちていた。
「エイト、何があった?」
エイトが魔法を使ったことに気がついたレンと星羅も近くに寄ってきた。
「誰かが魔法でハトを寄越したの」
エイトの代わりにララが応えた。
「一体誰が?」
星羅のことを感づいた人がいるのかと考え、レンの顔が険しくなる。だが、エイトの大きな安堵の息をきくと、たちまち全員の緊張が解けた。
「ナオトさんからだ」
エイトがナオトと接触してから2週間が経とうとしていた。
「なんて書いてあるの?」
エイト君へ
連絡が遅くなったことをまずお詫びする。君に連絡をとる手段がなかったので、時間がかかったのだ。
今度、君たちの村の近くに行く用事ができた。その時にぜひこの間話してくれた少女と会わせてほしい。もちろん、君や友人も一緒でかまわない。
私がどこへ行けばいいか、この手紙を読んだら連絡をくれ。 ナオト
要件だけが記された短い文章だった。
星羅とナオトが会うことで、事態が思わぬ方向に進むことなどこの時は誰も、思慮深いエイトでさえも、予想していなかった。




