表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
報復  作者: 深皇玖 楸
14/17

璃奈の影

 …。

 放置して再開してみればあら不思議。

 どこをリンクさせていこうか悩んでいた部分がさらっと解決☆



 まぁ、自己満でしかありませんが、どこがリンクなのかは一発で分かります。


 長かった璃奈の電話が終わる頃には既に客で一杯になっていた。

 その喧騒のお陰で、璃奈は気兼ねなく電話していたらしい。

 その様はまさしく戦争だった。

 流石に相手側の携帯なり受話器なりの通信機器の奪い合いに銃声が聴こえることはなかったが、時々ドスンだのバキッなどの怪しげな物音が綵菟まで届いていた。

 軍隊とは実に恐ろしい。そして、それを平然としてスルーした璃奈も。


「……決着はついたのか?」

「……あ、はい。一応……」

 璃奈の顔が心持ち暗い。普段から明るいわけでは決してないから、それは綵菟の見間違いかもしれなかったが。

「一日目が普通の打ち上げで、二日目がドッヂボール大会、三日目がカラオケ大会、四日目がビーチバレー大会だそうです………」

 璃奈は言い終えて盛大な溜め息をついた。やはり綵菟の見間違いではなかったらしい。

 しかし、璃奈が質問に答えたのは驚きだった。璃奈は綵菟の目から見ると大量の秘密を持っているように映る。多分璃奈が今見せている顔とは全く別の顔が幾つもある筈で、今回もその一つだろう。『二ノ宮璃奈』という名前が偽名の可能性だってある。それくらい、璃奈の影は濃い。



「ていうか、何の軍?」

 優太が不思議そうに尋ねる。

 当たり前のことだが、一般の中学生が軍に入隊していることはまずない。日本人なら尚更だ。だが璃奈ならそれをおかしいと感じさせないものを持っている。


「……あ、そのことですか」

 尋ねられた璃奈は至って平然としていて、明るく煌めく理知的な双眸も穏やかに凪いでいる。

 綵菟は璃奈の瞳が時に異常な覇気を湛えることを知っていた。多分誰も逆らえない、それは絶対者の気だった。

 今はその色はなく、泰然自若としている。



「―――まぁ、少々訳アリの人間ばかりが集められた掃き溜めというか、風溜まりというか…。そんな部隊ですかね」

「……さっきの」

「まぁ、反りの合わない人も居ますから。ただの喧嘩です」

 璃奈は事も無げに言い切った。いくらヤクザやマフィアでも、仮にも味方相手に平気で銃を抜くことはないと綵菟は思っているのだが。

「そんな顔しなくても大丈夫ですよ。銃口を見て避けるくらいの能はありますから」

 いくら訓練された兵士でも普通は味方に銃を向けられただけで怯む気がするのだが。綵菟は自分の感覚がおかしいのかと不安になって優太を見るが、元より綵菟より遥かに繊細な優太が付いていけているわけがなかった。

 仕方なく王共茣を見るとまだ話中のようで、何やら苛々とテーブルの上で右手の指が踊っている。



 璃奈の価値観は根本的に違う。だが事実に基づく自信を持っていることも、綵菟も同類として理解はできる。

 最後には結局、自分を信じることしかないのだ。



 綵菟は一つの区切りを付けて璃奈に視線を戻す。

 そして軽く息を吸い込むと、

「り…―――」

「はあああっ、白木原で!?」

 店内に響き渡る王共茣の声に綵菟は続く言葉を呑み込む。

「王共茣先輩?……白木原で何か……」

 白木原とは苗字ではなく学校名だ。男子校で約3分の1が幼等部からのエスカレーターという閉鎖的な場所だ。寮制がないのが唯一の解放かもしれない。

 だが、王共茣と何の関係があるのか分からない。少なくとも白木原に進学した同級生はいない。

「璃奈ちゃん…。まずい、あそこのボンボン共がこぞって逮捕だって!!」

「「は!?」」

 もはや今日一日で綵菟は何回驚いたか定かではなかった。

「王共茣先輩、一旦出ましょう。…玖璃さんがいる事務所に連絡が来たんですよね?」

「うん。…各界の著名人たちの子供だったり孫だしね。玖璃兄も断り切れなかったみたい」

「…分かりました。玖璃さんの所へ行った方が良さそうですね」

 荷物をまとめ出す璃奈の声音が微妙に変化してきている。綵菟が見上げれば、そこにはいつか見たのと同じように、絶対的な煌めきを帯びた双貌があった。

 その美しさに、さしもの綵菟も息を呑む。それはとても、15歳にも満たない少女が持つ貫禄ではなかった。それに圧倒される。

「でも…」

 反論しようとする王共茣に、璃奈は会計を済ませながら言い募る。さりげなく全員分の代金を支払うそつのなさには可愛げがないが、スマートで嫌味がないのは璃奈の美徳だ。

「玖璃さんが忙しいからこそ、私たちが彼らが報復を始める前に対策を取らなければならないんです。…下手な対処をすれば間違いなく玖璃さんの事務所は壊滅させられます」

「璃奈ちゃん……」

「…綵菟先輩と羽越先輩もいらっしゃいますか?」

 璃奈は王共茣との会話を打ちきり、綵菟たちの方を向いてくる。




 こうなった以上、肯定しない手はなかった。




 それが璃奈の手法であるのか、それとも天然の策士なのか、綵菟にはいまいち分からなかったが。

 少なくとも璃奈は猫を殺したりはしない、という信頼ならある。

 虜にされた時は、その時だ。

 あれですね。

 もう展開が…ホラーじゃなくて璃奈の人身掌握術の公開……。



 璃奈の過去は十分にホラーでミステリーでサスペンスなんですけどね…。

 ちらっとネタバレ(…になるかどうか)すると、璃奈は偽名です。そしていっぱい人を殺しています。朱華なんて可愛いほうです。



 綵菟は一応主役です。どんなに喰われて、いいように操られていても主役です。

 …きっと一年後には活躍するに違いないっ(遅っ)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ