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方位組  作者: 高木さゆな
11/14

第7章

ある日の放課後。

「暇ですね。」

「暇だな。」

寄り道をするにもよるところがなく、特にすることもない僕とアズマさんは、ただ暇をもて余していた。

「今日はコンビニもおでん70円セールで人多いしね。」

すげぇ。チェック済みか…。アズマさんのコンビニ愛を見に染みていたとき、ちょうど生徒会室の前を通ったところで中からメリーさんが出てきた。

「あら?南ちゃん。と…アズマちゃんね。」

「副会長のメリットさんですね。」

「ふふーん、そうよ。メリーって呼んでね。」

メリーさんはアズマさんを知っているのか。もしや、僕が巻き込んじゃった!?僕はとんでもないことをしてしまったのか!!

一人でバイブのように震えていると、メリーさんが突然、

「そうだぁ、二人とも暇そうだからちょーっと生徒会室でお茶しない?」

お茶って…。でも太陽さんもいるんだろうな…。そう思ってアズマさんの方をチラッと見た。すると、アズマさんは頷いて、

「うん、お邪魔させてもらおう。」

「え!!!?」

正直、行きたくない…。でも、アズマさんがなんかわくわくしてるし、行きたそうだし…ここはやっぱり…



「よかったわぁ!私たち、今すっごい暇だったのぉ。」

結局お茶を頂くことになってしまった。

それにしても、生徒会室はまるで部室のようで、というか生徒会自体が部活のようだった。そこに、例の太陽さんが何かを引きずってやって来た。

「やあ、メリー!今日は良いものを持ってきたよ!」

そういって引きずっていたものを前に出した。それは…

「「西!!!?」」

「あっ!アズマちゃん、南ちゃん!!」

そう、それは西だった。太陽さんが狩りに行ってきた原始人みたいに言うからなにかと思えば…

「えぇ~、にっしーくんじゃない!いらないわ!!」

「そうかい?じゃあもったいないからこれで遊ぼうか。」

遊ぶの!?「これ」って西はthis isなの!?しかもメリーさんいらないって!!!?

「あっ!じゃああれやろぉ!あ・れ!!」

「そうだね。久しぶりにやろうか」

二人が「あれ」と言って話を進めている間、アズマさんは未だのんきにお茶を飲んでいる。

その間に、二人はガタガタと机をどけ、椅子を円の形に並べた。

そこに、生徒会室の前を誰かが通った。太陽さんはそれに反応して、すぐさまそとにでた。

「メリー、新しいお友達だよ。」

「うぉぉぉぉ!!放せぇぇ!!」

またもずるずる引きずってつれてきた人を前に出した。

「な!?またお前ら!!」

なんと、ほっくんだ。なぜこうも会ってしまうのか。

「なんだ、北と知り合いかい?」

「おい、太陽!!いいから放せ!!」

ここで気づいた。生徒会の二人とほっくんは3年だった。みなさんお友達でしたか!!

「6人か。まあいいや、始めよう!」

そういって並べられた椅子に座る太陽さん。

この椅子の並び、この人数に対しての椅子の数、まさか今からやるのは…

「フルーツバスケットだよ!」

そう、フルーツバスケットだ。

「でも、この人数じゃちょっとキツいな…よし、なんでもバスケットにしよう!」

よしっというようにガッツポーズをしてニコッと笑った。

「みんな、ルールは知ってるね?」

さすが生徒会長、てきぱきと話を進める。

「あの、ちょっと待ってください!」

僕は太陽さんに向かって手を挙げて言った。

「どうしたの?南ちゃん。ルールわからない?」

「いや、わかりますよ!?じゃなくて、僕たちもやるんですか!?」

なぜかちゃっかり人数にいれられていた。

「え?やらないの?アズマちゃんやるよね?」

「やります。」

アズマさんは少し嬉しそうに答えた。

「ぅぅ…僕もやります…。」

「そっか。」

いくらなんでもズルいよ…!!アズマさんをおとりにして…!

でもアズマさんのあんな楽しそうなウキウキした顔を見たら帰れるわけにはいかない!


「じゃあ、最初の鬼はメリーね。」

「ん、おっけー!」

メリーさん以外の5人は席についた。

「じゃあ行くわよーん。そうねぇ…じゃあ、1年生のヒト!」

「えぇっ!?ピンポイントすぎじゃないですか!?」

この中に1年生は僕しかいなかった。

「あらら、南ちゃんだけ?ごめんなさいねー!」

「ぷぷぷーっ」と笑ってメリーさんは僕から席を奪い取った。

「ひどい…」

泣きべそをかきながらしぶしぶ真ん中へ立った。

「うーん…じゃあ、ブレザーを着ている人!」

僕の一言に、太陽さん、メリーさん、ほっくん、西が立ち上がった。アズマさんは…あっカーディガンだ…

椅子の争奪戦の末、残ったのはほっくん。

「あらぁー北くんだっさぁーい!」

「お前が俺を蹴り飛ばして座ったんだろうが…!」

足を組んで見下すように言うメリーさん。さすがほっくんの扱いがよくわかっている。

「くそっ!なら黒髪のヤツ。」

ほっくんの一言に立ち上がったのは、真っ黒な髪のアズマさんだ。

だが、ほっくんの標的は違ったようで…

「何でお前は立たねぇんだよ!!」

「私は黒髪じゃなくて藍色ですぅー!」

メリーさんのようだった。だが、誰が見てもメリーさんは藍色の髪だ。

すれ違いざまに獣のような目付きでほっくんを睨んだアズマさん。

そして、真ん中に立つと腕を組んで堂々と言った。

「名前に「早乙女西」が入ってる人。」

メリーさん以上にピンポイントだった。ドストライクだ。

さすがに自分だと気づいた西は前へでた。アズマさんは西が座っていた席にドカッと座った。

当てられた西は、彼の性格上怯えているかと思いきや、少し嬉しそうな表情だった。

「ふふっえへへ…じゃあ、上靴を履いている人っ!」

西が嬉しそうに言った。だが、現実はそう甘くない。

全員が上靴を脱ぎ始めた。さらに、アズマさんは西に上靴を投げ捨てた。

「え…あ、上靴を履いている人…」

「どうしたんだい、西くん。誰も履いていないよ?」

「あっアァ…そんなぁ…。」

泣き出しそうな顔をする西。これが現実だ。

「にっしーくん?はやく言ってよぉ!」

さらにメリーさんが西を急かす。

「うぅ…今日のお昼ご飯がお弁当だった人…。」

震えた声で言うが、もちろん誰も立たない。

「アズマちゃん…お弁当だったよね…!?」

「気のせいだ。」

さすがアズマさん、たとえ嘘でも堂々と振る舞う。かっこいい…!

ちなみに、僕も母の手作り弁当だ。隣でほっくんがだらだら汗を流していたが、多分見たらいけないやつだ。ほっくんもお弁当だったんだね。

「ちょっとにっしーくぅーん、何してるのよぉ!さっさとして?」

またもメリーさんが西を急かす。

「は、はいぃ…。」

そろそろ泣きそうな顔になってきた。そして、西は決心したように言った。

「あっ、アズマちゃんが好きな人ッッ!!」

ガタッッ!!!

「南ちゃん!!!?」

西の一言に思わず反応してしまった。

「南ちゃん!惑わされるな!!西の言葉なんか耳にするな!!」

アズマさんが必死に僕を立たせないようにする。

そうだ!僕はアズマさんを好きなんかじゃない!好きなんかじゃないぞ!!

僕は落ち着いて席に着いた。

「あッアァァ…!南ちゃん…ァァ…」

危なかった。つい席を立ってしまうところだった。だが、隣のほっくんが少し反応していたのは気のせいだろうか…?

「ぅッそんなぁぁ…」

ついに涙を流し出した西。

「ぅぁあぁ!!もう、もうやめてよぉぉ!!」

入り口の方へよろよろと歩いていき、そのままドアの横の窓を拳で思いっきり叩いた。


――パリィィィンッッ!!!!


窓ガラスが割れてしまった。

「アッアァッ…」

西が「やっちゃった」みたいな顔をしてうつむいた。

「あーあ!にっしーくんやっちゃったぁ!どうしてくれるのかなぁ?」

メリーさんがまるでいじめッ子のように西の顔を覗きこんだ。

無様な…いや、かわいそうに。

アズマさんは見事に「アタシ知りません」みたいにそっぽを向いている。

そこへ、ある人が現れた。

「あら、どうしたの?」

なんと、月先生だ。そういえは、月先生は生徒会の顧問をしていると言っていた気がする。

「あなたたち、椅子なんか並べて何してるの?そろそろ帰りなさい。閉めるわよ。」

どうやら音を聞いて来たのではなく、戸締まりをしに来たようだ。

僕たちは椅子を片付け、机を元のように並べた。

「じゃあ早乙女くん、窓閉めて?」

月先生が追い討ちをかけるように西に言った。閉める窓もないのに。



生徒会室から出て靴箱で靴を履いているときに、突然校内放送が流れ出した。

〈ピーンポーンパーンポーン…〉

〈早乙女くん、早乙女西くん、今すぐ(・・・)職員室の私のところに来なさい。〉

〈ピーンポーンパーンポーン〉

今の声は月先生だ。きっと、西が窓を割ったことを知ったのだろう。それでも声色一つ変えずに淡々と話すところが余計に怖い。

〈…どうしたの?早く来なさい?〉

しかもこちらの様子が見えている。2年生の靴箱のほうで西がガタガタ震えているのが見えた。



今日僕は、生徒会、そして月先生を絶対に敵にまわしてはいけないという、この学校で生きていくために何より大切なことを学んだ。

今回は5章のはずだった話をなぜか7章でお送りしています。


最近の悩み

今更南ちゃんは僕っ子じゃなくてもよかったかもとか思い始めてしまったこと



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