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方位組  作者: 高木さゆな
10/14

第6章

1月1日元日。

今、僕は近くの神社に来ていた。この辺りでは一番大きな神社で、参拝者もかなり多い有名な所だ。

今日ここにやって来たのは他でもない、初詣だ。両親は寒いからと言って初詣には来ず、僕一人でやって来た。

「はぁーっ…寒っ。」

マフラーをぐるぐる巻きにして来たが1月はまだまだ寒い。早く参拝して帰ろう…。


長蛇の列がようやくなくなり、僕は五円玉を賽銭箱へ投げ、両手を合わせた。

パンッパンッ。(今年もアズマさんといっぱいお話できますように!あと、成績があがりますように!)

願い事なんてそれくらいしかなかった。今年もアズマさんといられたらそれで満足だ。

あと、最近は少し成績が厳しい。ついでにそれも…。

せめて4を増やしてよね!


目的を果たし、寒いから早く帰ろうと思っていたが、途中でおみくじを見つけた。

せっかくだからひいていこうかな…。運よくあまり並んでいなかったのですぐにひけそうだ。

すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

「あ、南ちゃんだ。あけましておめでとう。」

振り返ると、そこには…

「アズマさん!!」

なんとアズマさんだ。こんなところで会えるなんて…!新年早々気分がいい。

「ん?南ちゃんやないか!」

さらに、アズマさんの後ろからひょっこり顔を出したのは大阪さんだ。

うーん…大阪さんなら…まぁ…。

少し複雑な気持ちになったが、ニコニコして手を振る大阪さんにほっこりしたのでまぁ良しとしよう。

「おみくじひくの?」

アズマさんはそう言ってしれっと僕の隣に並んだ。

「はい、アズマさんもひきますか?」

「うん、やっぱりおみくじはひいとかないと。」

そう言って僕の方を見てニコッと笑った。

あぁ…幸せだ…。今年初ハッピーだ…。


「よーし、大吉ひいたんでえ!!」

順番が回ってきた僕たちはさっそくおみくじをひいた。

大阪さんはおみくじをガラガラ振って出した。

「せやぁぁっっ!」

掛け声とともにだしたそれは…

「そ、そんなぁ!凶やぁぁ…。」

まさに不運の象徴、凶だ。今年は大阪さんに近寄らないことにしよう。

大阪さんの結果を見て僕もおみくじをひいた。

巫女さんにでた番号を伝え、おみくじの紙を受け取った。

結果は…

「大吉だぁ!!」

「えっ南ちゃん大吉?」

僕の声を聞いてアズマさんが紙をのぞきこんだ。

「えぇぇー大吉えぇなぁー!うちのと交換してぇやぁ!」

大阪さんが泣きついてくるが無視してアズマさんに話しかけた。

「アズマさんはどうでした?」

「んー、アタシは末吉」

そう言って紙を僕に見せてくれる。

少し残念そうな顔をするアズマさんを見ていると、大吉をひいてしまった自分を懺悔したくなってくる。

僕の運をわけてあげられたらいいのに…!


「あっアズマちゃん!!」

またも聞き覚えのある声がしたが、僕たちは誰かも確認することもなくそのまま話を続けた。

「僕の運をアズマさんにもわけてあげられたらいいのに…」

「えぇー、うちにもわけてぇやぁー!」

大阪さんは「こんなんいややぁ~」と子供のようにただをこねる。

「えっ?あの…アズマちゃ…」

「アタシ、これ木にくくりつけてこよ。」

アズマさんはさっそくおみくじを細長く折って、おみくじがたくさんくくりつけてある木に向かった。

「ちょ…南ちゃん…大阪ちゃ…」

「せやなぁ!うちもやろぉ、凶のままはいややで!」

大阪さんもアズマさんに続いて木に向かった。

僕もこれをくくりつけたらスーパー大吉になるのかな…。

少しわくわくしたが、さすがに欲張りすぎるだろうと思い、やめておいた。


「気づいてないの…?アズマちゃん…!ねぇ、アズ…」

「あっ、アタシお守り欲しいな。」

アズマさんは手をポンッと叩いて提案した。

「僕も!僕も欲しいです!!」

僕は「はいはーい」と手をあげた。

「じゃあ、おみくじの近くにあったから見てこよっか。」

僕と大阪さんはアズマさんに続いてついていった。


「そんな…みんな、ひどいよぉ…!」

そんなヤツの声も僕にはもう聞こえない。


「アタシこれにしよ。」

お守りをひょいと手に取ったアズマさん。高校生なのだから、もちろん学業のお守りだ。

「あっじゃあ僕もそれにしよっかな…」

「せっかくやから3人お揃いがえぇなぁ!ちょうど3色やし!」

大阪さんの提案にアズマさんは「そうだね」と肯定して、僕たちはそれぞれ色違いのお守りを買った。

本当はアズマさんと二人のお揃いがよかったんたけど…。でも、大阪さんが悪いわけではない。

でも、アズマさんはどうせ気づいてないんだろうなぁ…。



神社から出た僕たちは、その後近くで昼食を食べ、家が逆方向の大阪さんと別れ、アズマさんと二人きりになった。

だが、僕の家はここからわりと近いのでもう別れなければならなかった。

もっとアズマさんとお話したかったな…。

なんのために大吉なんかひいたんだろう…。

僕がしょんぼりしてアズマさんの隣を歩いていると、

「そうだ、南ちゃん。」

アズマさんがポケットから小さな紙袋を取り出して、僕に渡した。

「これ、南ちゃんにあげる。」

「えっ!?」

その紙袋には、先程の神社の名前が刻まれていた。

開けてみると、小さなクリスタルのウサギのお守りが入っていた。

「え…あ、アズマさん…」

「明後日の1月3日、誕生日でしょ。少し早いけど、おめでとう。」

嘘だ…覚えててくれたんだ…。

なんか…大吉ひいてよかった…今さらだけど。

すると、アズマさんがまたポケットから同じ紙袋を取り出した。

「アタシとお揃い。」

袋から出したそれは、僕にくれたお守りと同じものだった。

僕がしょんぼりしてたの、気づいてたのかな…。

「ありがとう…ございます…。嬉しい…っ。」

「うん、喜んでもらえてよかった。」

ニコッと笑うアズマさんの笑顔が眩しい。


今日は、今までで一番幸せな日だった。


その後、自室のベッドでお守りを眺めながらニヤニヤして跳び跳ねていたことは、アズマは到底知る由もなかった。

あけましておめでとうございます

今更ですが初詣です

南ちゃんには幸せになって欲しいなー

にっしーはわりとどうでもいい派です

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