最終兵器の彼女その4
かなり間があきました…すいません。
次かその次くらいで完結…かな?
「麻生さんと違って私はほら、この通りこれといって特出してるものもないし」
ずる、と両手を戒める手から力が抜ける。
「そうね…なんで避けたかっていう具体的な理由は特にない、かな。」
最初は本当に、少し接し方を変えようとしただけだった。
ある時から私と樹だけだった世界に麻生さんが入ってきて…そのころから、もともとあまり良くなかった自分の周りからの評価がさがってきていたのも。
それこそ幼稚園からの付き合いだった樹は私にべったりで、だけどそれは普通だと思っていた。
「別に麻生さんのせいじゃないのよ?自分で決めたんだし」
樹が私にべったりだったように、私も少なからず樹に依存していたのかもしれない。
人付き合いの苦手な私に話しかけてくるような人間はそうそういないし。
途中から麻生さんが飛び込んできて…ふと、今まで気にしていなかった周りの声が聞こえてきたきっかけに過ぎない。
『樹くんって、なんかあの子に気使ってるよねぇ』
『無愛想だし、どこがいいんだろ』
『麻生さんみたいに笑顔の一つでも見せればいいのに』
『あー、私あの子が笑ったとこ見たことない!』
『樹くんが喋りかけてもむっつりしてるしねえ』
『何様だよ』
違うよ、樹は私が幼馴染だから、一緒にいてくれるの
私だって笑いたいときは笑うんだよ
『身 の 程 知 ら ず』
はっとして、過去の私は麻生さんと樹を見つめた。
みんなの人気者、なんでもそつなくこなせる幼馴染と。
魅力を両手いっぱいに抱えながらさばさばとした性格で同性にも好かれる女の子。
あれ。
私、どうやってこの男と接していたっけ?
私は、気にしていなかったんじゃない。
気にしないようにしていただけだ。
「普通に喋ろうと思ってもどうすればいいのかわかんなくなったの。大体いっしょにいる意味もなかったでしょ」
何かを紡ごうとしたのか中途半端に開いた口は二、三回開閉して結局何も生み出さない。
そのままうつむいてしまった樹にだんだん申し訳ない、という罪悪感が湧いてきた。
「ごめん、いきなり距離置いたのはたしかに勝手だった」
「それはっ…」
「だから、改めて言うわ」
「もう私のことは気にしなくていいから」
しかめっ面でも何でもないのに、どうしてそんなに傷ついた顔をするのだろうか。
理由はわからないけれど、きっと私のせいなんだろう。
自分で気づいていたらこんな顔をさせなくてもよかったのに、周りに言われてやっと気づいた私は馬鹿なんだろう。
私は麻生さんに嫉妬していたのだ。
最初に気付いたときは本当に自己嫌悪でどうにかなりそうだった。
幼馴染というだけで学校の人気者、しかも同じくらい人気者の彼女がいる男に恋なんてものをしてしまった自分。
そしてその彼女に嫉妬だなんて身に余るものを持つなんて救いようがない。
樹も少なからず私を特別に思ってくれているという思い上がりは麻生さんへの接し方、周りの態度でつぶされたが、私にとっても樹にとっても幸いだった。
どうしたっていつかは思い知るのだから、早いほうがいいに決まっている。
私のことを幼馴染として大切にしてくれている樹には悪いが、いつも通り接するにはいろいろこらえられない。
そっと立ち上がり紅茶の入った水筒を樹のそばに置く。
きっと麻生さんのものだろうから返しておいてもらえるだろうとそのまま校舎に歩き出した。
…はずだった。
「っ、待って!」
勢いよく腕を引っ張られてあっけなく逆戻り
。
文句を言おうと樹に顔を向けたが。
「ちょ…なんて顔してんの…」
「うるさい」
「いや、だって」
そんな泣きそうな顔されたらどうしていいか分からないじゃないか。
「いいから、今は謝らせて、話聞いて」
「謝るってなにを…」
「ごめん」
混乱してあたふたする私をおいてうつむく樹。
「ごめん、俺、馬鹿だ」
ぎゅっと握られた手が言葉を紡ぐことを躊躇させる。
言うべき言葉が見つからず黙っているともう一度、絞り出すような謝罪の後に。
「…俺が麻生に頼んだんだ、恋人のふりしてくれって」
「……え?」
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