7 美栄(1)
私は今、壁にぶち当たっていた。
ある日、赤木という、転校生がやってきた。私はそんな彼女に不自由な思いをさせないためにも、クラス委員として、何かと気にかけるように心がけた。しかし、そんな私の思いとは裏腹に、彼女は挨拶こそしてくれるが、それ以上には、何も話には付き合ってはくれず、私は嫌われているのかと思うほどつれない態度である。
私だけじゃない、クラスの皆も、彼女に声をかけたが、彼女と仲良くなったものはいない。
ただ、一人は除く。
工藤誠一。彼だけは、なぜか最近、彼女と時折話をしているように思える。
―― どうして?! 私には疑問だった。誠一は、1つ歳が上という立場であったが、それ以外は、特別なところはない。成績はそこそこで、運動は並以上、ルックスだって際立っていいもんでもないし、右耳がなんかぷっくり餃子のように膨れてて気持ち悪い。性格として、一年少々の付き合いの中でわかっていることは、暗くはないが、決して前に出るような明るい性格でもなければ、面白みのある話術を持っているわけでもない。
それに比べ私は、成績だって、テストのたびに上位だし、社交性だってある。友達だって男女問わず多くいて、そんな皆が私をクラス委員にと推してくれた。そしてクラス委員として、このクラスを引っ張ってきたという自負もあるし、それが何より私の役目だと思ってきた。皆が皆、私を必要としてくれている。
誠一は、1つ上の年長者として、クラスの皆から少なからず一目おかれる人物であるかも知れない。そんな誠一に私も時折、頼ることもあるが、逆に誠一も私に頼ってくれるときもある。だからこそ、正直面白くない。
―― こんなことを思っていることがいけないの?
―― それとも私そのものがいけないの?
私自身、客観的に見たら、いきがったおせっかいの塊の嫌な女と思われてしまうかもしれない。だけど、これが私。皆が認めてくれている私。その中には誠一だって含まれている。他の皆だって、私と同じで彼女に相手にされていない。私だけが例外というわけじゃないだろう? それとも、彼女と誠一の間には何かあるのか?
・・・・・・男女の仲で何か特別なことが?
こんなことを、ずっと思い悩んでいた。
明日、先生に相談してみよう。それとこんな状況で少しためらいがあるけど誠一にも・・・・・・。