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「今日もこれで終わりにします。それでは、皆さん、気をつけて帰るように。それと、工藤。職員室へきなさい。」


 赤木が転校してきてから、一週間が過ぎた。そんな日のホームルームの最後に先生に呼び出された。


「何ですか?先生。」

 これといった悪さもしておらず、僕には、先生に呼び出されたことが疑問だった。


「実はな、工藤。赤木さんのことなんだが、一週間たったが、私から見て、どうもクラスになじめていないようなんだが・・・・・・。」

「先生。 それは、俺に言うことではないような気がしますが?」

「本来はな・・・。 本来なら、クラス委員の佐々木に相談することなんだが、今回はお前に相談した方が良いと思ってな。」

 先生の表情は神妙な感じだった。

 

 僕が考えるに、教職者が生徒に相談することは、少々疑問があったが、この先生にいたっては、まだ20代で、女子比率の高いこの学校においては、人気のある方であり、熱血とまではいかないが、生徒を思う気持ちだけは感じることが出来きた。僕も、この先生に好感を持っていた。


「佐々木さんは、結構何とかしようとがんばってますよ。何かと彼女のことを誘っているみたいですし・・・。」

「そうか! それで?」

「不発。」

「そうなのか~。」

 一瞬、先生の表情からうれしさが感じられたが、すぐに、落胆の表情へと変化した。

 他の連中だって、何もしていないわけじゃない。当初、入れ替わり状態で彼女に、声をかけている。僕以外は皆一度は彼女に声をかけたに違いないと思うほどだ。しかし、彼女のそっけない態度に、日に日に彼女へ近寄るものが少なくなった。


「それは、それとして、先生は俺に何を相談したいんですか?」

「この話は、いずれ皆も知ることになるが、あえて私は、お前にしか言わない。」

「もったいぶらずに!」

「スマン。実は、赤木さんも、工藤。お前と一緒なんだよ。」

「え!?それってどういう意味なんでしょう?」

「つまり、クラスの皆とは年齢が違うんだ。」

 その言葉を聞いても、特に驚きはしなかった。確かに、何か違うとは思ったが、そんなことか、としか思わなかった。


「そうですか。」

「なんだ? 私はてっきりびっくりするもんだと思ったぞ。」

「なんか、初めて見たときから妙に大人びた感じがしてたんで、特にびっくりすることもないですね。」

「それなら、いいんだが。」

「それで、先生。赤木さんの歳は?」

「今年、お前と一緒で、18になる。」

 少々考えたが、先生が何を画策しているかわかった。

「じゃあ先生は、同じ穴の狢同士で仲良くなって、そこからクラスになじむように仕組めって言いたいんですね?」

「理解が早いじゃないか。」

 思惑通りといった感じの表情で、どこかいやらしい大人のしめしめという雰囲気の笑みを先生は滲ませていた。


「こういうことは、先生が何とかするべきじゃないんですかね?」

「そういうな。できれば、同じ年代同士で仲良くなるように努力することが、一番良いことだと思っている。」

 まあ、一理ある。大人に指図されて、仲良くなれるはずがない。仲間は自然とお互いが魅かれあって仲良くなるものだから。しかし、お互いということが条件だ。向かい合ってこそ近づくきっかけになる。


「わかりました。やってみますよ。」

 しぶしぶ先生の申し出を受ける格好となった。


 もし、年が違うだけの理由でなじまないようにしているのなら、かなり嫌な女だ。きっと何か他にも理由があるんじゃないかと思った。




 今日はもう、彼女は帰っただろう。僕は、とりあえず明日にでも彼女へ声をかけることを決めた。どうやら、僕は、少しずつではあったが、彼女に興味を持ち始めたようだった。

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