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アルカナゲーム  作者: アルカナゲームマスター
フール・ザ・フール
6/6

検証

「早速、脱落者が出たようね」


 震える声で綾香が言った。


「どちらが仕掛けたかわからないけれど、アルカナフォンの仕様上戦闘痕は必ず残るはずよ。明日からの行動指針ができたわね。先に潰しておきたいハイナンバーじゃないのが残念だけど……」

「桃園、ステイステイ。説明が足りなくてオマエさんの言ってることがわかんないって」


 宗一の静止に綾香がハッとした。何事もなかったかのように肩にかかった黒髪を払って説明を始める。


「ハイナンバーって呼ばれているのは単独でのアルカナナンバーが一四以上の連中よ。審判を除いた、節制・悪魔・塔・星・月・太陽・世界の七人のことね。彼らは一三以下のローナンバーより優れた能力を保持しているわ」

「うわ、ズルくねぇかそれ」

「そうでもないみたいよ。強力な代わりに何かしらの代償があるみたいだし」


 ふーんと流しそうになった宗一だったが、ある違和感に気づいた。目の前にいるこの女は何故そのような詳しいことまで知っているのだろうか。自分とは違い、ゲームマスターに説明を受けたとはいえ、ゲームマスターがそこまで踏み込んだデメリットまで説明するだろうか。

 気になった宗一はとりあえず疑問点をつついてみることにした。


「やけに詳しく知っているな。ゲームマスターが教えてくれたのか?」

「……え、ええ。私にだけ特別にね」


 嘘である。直感的に宗一は悟った。この女、隠し事が致命的に下手だ。目は泳ぎ、声も上擦る欺瞞の満貫だ。宗一は嘆息し、後頭部をガリガリと掻いた。


「俺とオマエは同盟組んでるって話じゃなかったか。隠し事はなしにしようぜ」

「――できるわけないでしょう。全てを話すなんて」


 やけに暗い表情の綾香が言った。


「いや、全部とかどうでもいいんでなんで知ってるかだけ教えてくれる? いちおう味方同士なのに情報ソースを疑いたくないんだけど」


 そして、その言葉を宗一が一蹴した。

 心底どうでもいいから話せと視線で訴える宗一がやけに面白く見え、綾香は我慢をしていたが耐えきれずに噴きだす。


「なにわろてんねん」

「ごめんなさい。そうね、誰がとは言えないけれど、第六回のアルカナゲームに参加した人から聞いた確かな情報よ。安心していいわ」

「へぇ、だったら――」

「残念だけど、その人はもう亡くなってるから話はできないし、そもそも能力に関してはプレイヤーが参加していない人間に語ると聴きとれなくなる情報保護機能が発動するらしいのよ。

 だからなにひとつとして他アルカナの能力に関しては私は無知ってわけ。お生憎様」

「そう上手くはいかねぇってわけかぁ」


 たはーっと気の抜ける声をあげ、宗一は階段を降りて草の生えている河川敷のグラウンドに立つ。綾香も宗一に倣って横に並ぶ。


「ま、魔術の行使と能力の無効化があれば誰であろうと優位には立てるはずよ。頑張りましょう」

「だな。じゃ、実験始めるか」


 そう言って、河川敷の電灯で強く照らされた場所で準備を始めた。





 実験は淡々と進められた。

 一つ目の実験内容は無効化の距離測定。魔術師の能力を使った測定で、宗一が能力者に触れていると能力が発動しない。発動された能力も宗一に触れる寸前で無効化される。物理的な概念捜査まで無効化できるのかは不明の三つの結果を彼らは得た。


「まったく……無法な能力ね。やんなるわ」

「当然のことだが、攻撃力には直結しない能力だよなぁ」

「盾役で出雲君、攻撃役で私って振り分けるって考えればバランスはかなりいいと思うわよ」


 生み出した水球を川のほうへ発射した綾香が笑って言った。

 綾香は宗一の能力を試す過程で自身の能力について説明している。彼女が行使する魔術師の能力は『魔術操作』、自然現象で起こりうる結果を魔術と称し扱える能力だ。

 故に、彼女の生み出した炎や水は宗一には一切通用しないのである。


「無効化についてはわかったけど、副次的な作用に無効化が聞くかわからないのはいけないわね」

「だからって笑顔で炎球構えないでくれよ……」


 二つ目の実験は魔術本体ではなく、魔術によって引き起こされた環境の変化を調べることである。とりあえずといった風に綾香は小さな炎球を生み出し、いくわよと言って宗一に向かって飛ばした。

 直線で飛んでくるそれを宗一は左手の手のひらで受け止め無効化する。無効化された炎球は多少の熱を残してフッと消える。


「どう?」

「熱は残るな。雷なんか落とされると俺は無事でもスマホとかは死ぬと思う」

「なるほど。あくまで消せるのは能力本体だけ、間接的な衝撃なんかはそのままってわけか……」


 うーんと唸りながら綾香は右人差し指を顎に当てて思案する。


「本当に愚者って受けの能力なのね。

 言っちゃなんだけど、ハイナンバーに勝てるポテンシャルがあるのにそこらの一般人にボコボコにされる能力なのは正しく愚者って印象よね」

「勝てる喧嘩をしないと愚か者、ってか?」

「ま、実際はアルカナフォンの充電身代わり(バッテリーアライブ)があるからそうそう一般人には負けないと思うわよ。

 そうだ、バッテリーの残量は? 無効化できてもダメージが通ってるなら意味ないじゃない!」


 そう言って綾香は宗一に駆け寄り、彼が持っていたアルカナフォンを覗き込む。残量は一〇〇パーセントのままだった。


「完全に無効化で決まりみたいだ」

「そうね。これで安心して盾にできるわ」

「ひでぇな、オイ」


 綾香が上品に、宗一が大口を開けてカカカッと豪快に笑う。

 夜も更けてきたので二人は明日にでも連絡を取り、別のアルカナ使いを捜索することを約束してその場は解散した。




 その翌日、事態は急変した。





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