青髪系ヒロインです、はい・・・恋愛戦たった今負けましたがいったいなぜこんなことに?
青髪系ヒロインです
「ねえねえ、母ちゃま、ローズにもいつか王子さまが来てくれるの?」
「そうねえ。でもローちゃんは公爵家令嬢だしいつかは、ね。」
王子さま・・・。それはお姫様を迎えに来てくれる白馬にしか乗れないおとこの人。ローズも早く会いたいなあ~。カッコイイんだろうなあ~。
~すやあ~~~~~~~~~
そう、そのときのローズという幼女が私である。現在私は数えとし18歳。
昔のロマンチックさはどこへやら。もうこの人でいいやと適当にアプローチ頑張ってたけど、所詮は上っ面の努力。お家のためになけなしの涙を流しながら歯を食いしばってあくびをこらえて頑張った私の10年間っていったい何だったのかしら?
まあ私でもピンクの髪のカミラ様を選びますわ。可愛げのない釣り目のクール系の女なんて可愛げがないですもんね。
うん。すごくわかります。
さてどうしたものかしら。荒みきってカラッからに乾いてるこんな心の私だけど、これでも公爵令嬢なのである。
両親は優しいのでまだ家においてくれているが私の役目はお家発展のための婚約である。
是が非でも殿方と婚約しなければ。
さてそんな私の外聞だが、実は思いの他悪くなかった。本当にいったいなぜなのかしら。
殿下へ思いを告げ続けた一途で儚い印象で近寄り難いですって。
本当にこんな私なのに大層な評価をしてくださり、大変恐れ多い。
一途なご令嬢・・・。1つだけ心あたりがあるとすればどうせなら努力は最小限にってことで殿下しか視界にいれて来なかった。確かにそうですわ。
沈黙は金雄弁は銀と言いますが、私の場合はなぜか勝手に美化されてしまい大変なことにもう取り返しがつきそうもない。
さて、選ばれなかった私が向かった先は皇宮の北塔の庭。昔カミラ様と殿下と良く遊んでいた思い出の場所に来ていた。
ここでゆっくりお花でも眺めて帰ろうと思っていた。(けっして時間つぶしに来ていたわけではないですわ。)
だが今日はお天道様のやる気が芳しくなかったらしい。次第に雨模様になり、私は重い腰を上げた。
さて実家になんてご報告しましょうかしら。困ったわねえ。
空を何気なく見上げると雨粒がダイレクトに目に直撃し思わず涙ぐんでしまった。
ツツーッと涙が頬を伝って地面へ落ちる。ちょうどそのタイミングでどうやら大広間から私を追って探していたらしい(自意識過剰だったらごめんあそばせ)我が王国4大公爵家が筆頭、モブ顔のジュノ(みんながそう呼ぶので私も便乗しております)が声をかけて来た。
「泣いているのか? ローズ嬢?」
「・・・。」
なんと答えるのが正解なのかしら。
「そんなこと・・・。今は何も言わないで下さいまし。」
「悪かった。」
危ないっっっ。なんかごまかせた気がしますわ。
「少し話をしないか。」
「ええ構いませんわ。」
そっと差し出されたエスコートの手をとり、私たちは雨宿りする場所へと急いだ。
ちょうど先に大理石のベンチがある。ジュノ様に場所を案内して腰掛けた。
「さて。これは私の本心なのだが・・・。実は3年ほど前からあなたのことが」
「ジュノ様私と婚約して頂けるかしら?」
「え!?」
「私を選ぶメリットがいくつかございますわ。1つ。ライガ公爵家は安定した領地ですわ。先祖代々受け継がれてきた領地経営のノウハウを履修している私はきっとジュノ様のご実家シェード公爵家にも貢献できると思いますの。」
「2つ。ジュノ様の領地の騎士団長が儚くなられたそうですわね。私の領地から何名か優秀なものを派遣いたしましょう。王国内での評判通りの精鋭たちです。どうぞお役立てになって。」
「あ、ああ。それは本当にありがたいな。」
「3つ。」
「まだあるのかい?」
「ありますわ。ジュノ様はとても印象の薄いお顔をされてらっしゃいます。なぜあの王国中でも有名な美形なご両親から生まれたのだろうかとばかりに。ご安心遊ばせ。私ジュノ様のお顔は好ましく思いますの。毎日どんな顔だったか思い出せずに早く会いたいと思わせてくれるお顔。ひとに関心のない私が唯一興味が湧きましたわ。」
「4つ。」
「話の途中すまない。ローズ嬢。あなたはどうやら口と性格ともに悪いのではないか。」
「お嫌でしょうか。」
「いや・・・。悪口なのになぜか私のことを好いてくれているのにどうしたものか好感が持てる。不思議なものだな。」
「私こう見えても尽くすタイプなのです。ですからどんなに可愛げがなくても世間体を保つくらいの最低限の扱いをして下さると非常に助かります。私からの見返りとしては、あなたが私を連れ出す際にけっして恥ずかしい思いをしないようにあなたのために美しくあろうと努力しますし、教養も磨き続けようと思います。」
「・・・。ローズ嬢。君が私のことをどう思っているか良くわかったよ。」
「5つ。」
「全く世間の噂ほど当てにならないものはないな。もう話さなくても良い。私はもうとっくに君の虜なのだから。」
「作用でございますか。青髪なのに?」
「ああ。私は好きだよ。きれいな色だ。ローズ」
「では見て確かめて、いえ外ですのでまずいですわね。それに初夜のジュノ様の楽しみがなくなってしまうのも困りますし。私こう見えて凄いんですの。」
「なにがだ?」
「お手を拝借させて頂きまして。あ〜。じっとしてて下さいまし。」
「どうですか? 私の足はすらっとしてて細く太ももには程よく引き締まっております。それにそうここ。この腰のクビレは自前ですわ。コルセットでのごまかしなどではなくてよ。それにあんまり大きくないのですが…。」
スッ。手は無情にも振りほどかれた。
「私はいったい何をさせられているんだ?」
「ふふっ。確かめてもらったまでです。私性格以外は良い女だと思いますの。お飾りの妻にでもして頂けると幸いです。」
「だから私は君のことが好きなんだよ。信じてもらえないかもしれないが。」
「ふふっ。嬉しいことを言ってくれますね。」
「喜んでくれてなによりだ。」
「ジュノさまは性格がとても良いのですね。」
「そうだろうか。」
「ええ。とても・・・。」
頬を赤らめ袖をそっとひいた。
「な、私は君にもう触れないぞ? 結婚式上げるまでは。」
「私にだって羞恥心はありますわ。」
「本当に?」
「こう見えて貞操も固く守りますの。」
「だから・・・。なにかと結婚したらお得だと売り込むのやめようか。そろそろ。」
「だって。やっぱり青髪なんていらないって言われたら私だってショックですのよ。」
「言わないよ。」
「返品は受け付けておりません。」
「君・・・。ひとの話聞かないなと言われたことないかい。」
「そんな・・・。毎日お母さまに言われておりますわ。」
「なんてことなんだ。まあ良い。ローズ嬢との毎日は退屈しなそうだなあ。それより一つ聞いていいかい? 青い髪の君の偏見と自虐が気になるのだが。」
「私のご先祖さまは異世界出身でして・・・。私は恋に敗れる運命なんですの。そういう言い伝えがありまして。」
「そうか。泣いているかと声をかけたのだが、あまり落ちこんではいないようだな。こうして君に求婚されて。今日私はとても幸せだ。」
「・・・。ジュノさまは甘いものは好きですか?」
「なにかくれるのか?」
「はいどうぞ。」
「ああ。ありがとう。」
もぐもぐ。
「あ、もう口の中に黙って入れてくるのやめてくれないだろうか。」
「美味しいですか?」
「もう、口のに入らな、、、く、苦しい。」
なぜこのご令嬢は口の中にクッキーが消えていくのだろうか。自然な流れであーんされることになったのだが、口の中に1秒もたたずに消えていくご令嬢と同じペースで他のひとも食べられると思わないことだな。
ポポポポポ・・・。クッキーが彼女の口の中に消えていくのを恨めしく見つめながら意識が遠くなっていった。
私はこの日ローズ嬢にプロポーズをされ受け入れたその30分あとにはクッキーを口の中に詰め込まれすぎて窒息死しそうになり私は気づけば医療室のベットの上だった。
信じられないことにローズ嬢には悪気がなかった。私が意識を取り戻すまでベットの横で私の手を握っていてくれたらしい。
優しいんだか怖いんだか。
目を覚ましてとっさに取った行動はローズ嬢の手をふりはらい逃亡をすることだったのだが、握力が強すぎてで手の骨が悲鳴をあげるだけに終わってしまった。
部屋にいた使用人たちがあらあらお熱いですわとニコニコしながら退室していった。
その時に私をおいていかないでくれと助けを呼ばなかった私は過去一賢い行動をとれていた言えるだろう。
なんせそのおかげでローズ嬢と結婚できる未来になったのだから。
*****
溺愛生活123日目。私は立派な愛妻家としてその名を王国中に轟かせていた。私たちの夫婦仲は2人の努力あってこそだが世界一だと自負している。
なにかと卑屈になりがちでどこかずれていて、身体能力が熊ほどのどこが儚げなクール美女だと突っ込みどころしかない私の妻だが、そんな秘密も私と彼女の両親とその関係者たちしか知らない一面である。
そこに愛おしさを感じてしまう私は変わっているのかもしれない。だけどやっぱり食事どき彼女は暇を持て余し私の口の中にフォークでいろいろ突っ込んでくる、どこか風変わりで口の悪い彼女が私は世界一好きなのである。
だから・・・。ローズ君は嫌がるかもしれないけれど。青髪でいてくれたおかげで私と君が結ばれたのなら。
青髪でいてくれてありがとう。そんなあなたが大好きですと声を大にして伝えたい。
読んでくれてありがとう♪