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龍(どらごん)になった先輩

「私、どらごんになるから」

それが先輩の口癖でした。


以下,先輩のセリフから引用。

「私、どらごんになるから読書家なの」

「私、どらごんになるから強いの、ステゴロなら負けるきがしない」


と、まぁこんな感じ。ちなみに先輩の握力は30kgらしいです。先輩曰く,「どらごんになるから嘘はつかない」らしいので本当なのでしょう、、。嘘をつくほどの数値でもないですし。


そんな先輩と私は数年の間,付き合っており,同棲までしていました。しかし,不思議なことにそこに至る過程を思い出すことができません。先輩のどこが好きなのか,逆に先輩が私のことをどう思っているのかもわかりませんでした。


先ほどは同棲と言いましたが,先輩との生活は同棲というよりも介護のようなものでした。先輩は働きもしなければ,家事もしないのです。1日中何をしているのかわかりません。しかし,なぜか私は気になりませんでした。


「私、どらごんになるから魚料理は嫌いなの」

「私、どらごんになるから朝起きれないの」

「私、どらごんになるから部屋でタバコ吸うの」

「私、どらごんになるからクーラーは17℃以下にして欲しいの」

「私、どらごんになるから宵越しの金は持たないの」

「私、どらごんになるからクレカ使っちゃったの」

「ほんの少しだよ。この玉きれいだったから。」


翌日,バスケボールくらいのサイズのガラス玉が届きました。引き落とし金額6万円。


ふざけやがって、、。一瞬はそう思うのですが,悪びれる様子のない先輩の顔を見ていると,なぜか怒りが鎮まるのでした。注意をしたら2週間くらいは聞いてくれますし。こんなのおかしいでしょうが,大抵のことは許せるくらい,私は先輩のことが好きなのだと思っていました。


そんな生活が続いていたのですが,ある日,

先輩がとんでもないことをほざきました。

「私、どらごんになるからつい浮気しちゃったの」

この爆弾発言が,私の中に存在していないとさえ思っていた堪忍袋をぶち破りました。夢から醒めたようにこれまで先輩がしてきた悪行に腹が立ち,勢いそのまま先輩を振りました。


先輩はこんな時でさえ何を考えているかわからない顔のまま,謝罪するわけでもなく「最後の思い出に散歩しよう」と言ってきました。

こいつ、、「どらごんになるから歩くのとか嫌い」なんじゃなかったのか?


予想外の返しに少し頭が冷え,まぁ最後にそれくらいならと先輩の希望する海岸通りへ散歩に出かけました。特に会話もありません。前を行く先輩をぼんやりと見ながらついていきます。空が赤くなり始めて,そろそろ解散するかと思っていたとき,橋の上,先輩がぴたりと止まりました。 


「私,どらごんになるから謝らなきゃいけないことがあるの」


またふざけた言い訳か?


「私,どらごんになるためにあなたを洗脳していたの。」


?????


「私,どらごんの幼体なの。成体になるために準備が必要なの。私たちの種族は人間を洗脳して養ってもらいながら成体になるの。」


「そして今日。どらごんになっちゃうことがわかったから,お別れしないといけないって思ったの。だから洗脳を解いたの。」


「ごめんなさい。」

意味不明な内容に

初めて見る先輩の顔。

言葉が出ない私。

夕日は水平線に差し掛かり

突如,発光する先輩。


✖️✖️✖️✖️


\龍/


ほ、本当にどらごんになるやつがあるか!!!!


どらごんになった先輩はまだ体の扱いに慣れていないようで,手を使ってとぐろをほどいています。


「よし、」


解けたようです。


「ありがとう。」


そう言い残すと,先輩はぎこちなく天へ飛び立ちました。


橋の上,ひとり,棒立ちの私。

あたりはすっかり暗くなり, 

大粒の雨が私のひどい顔を隠してくれました。


✖️✖️✖️✖️


後日,

風変わりな配達物が届きました。

差出人の住所,天界。


「私,どらごんだから礼節を尽くすタイプなの。これ、ほんの感謝のきもち。」


きれいなガラス玉が入っていました。

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