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魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
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行くことにする

「学内で結構な話題になってますよ」そう言った助手の顔はなんとも言えない複雑な顔をしていた。

「独占欲が顔に出てるけど、ちょっとニヤニヤもしてるね?」

「お嬢様がいまさら夜の街でボーイハントするとは思いませんが、今の実力がどのくらいなのか興味もあります」助手は淡々と言った。独占欲は否定しないんだ。「行くなら私も見学したいです」

「今の実力ね。あははは」私は言い方が面白くて笑ってしまった。

 最近の私——というかネゾネズユターダ君と付き合うようになってからのここ6年——は満ち足りている。不満は不満がないことくらい。もっと渇きというか欲望というか、若い頃の意味もなく叫びたくなるような怒りと渇望をたまに取り戻したいというのが唯一の不満だ。そんな生活なのでいざとなると夜に出掛けるのがめんどくさいという気持ちもある。

 夜の生活のローテーションはこの2年間で何度か見直していて、今はオトコ・オンナ交互に寝ることにしている。オトコというのはネゾネズユターダ君のことで、今朝までが彼との日だ。朝に馬車でもやっている。腰まわりも肌もいつでも絶好調だ。健康的な生活でつやつやしているのが自分でも分かる。

 今晩はメイドの1人と寝る女の日となっている。夜の相手をするメイドはローテーションで週1くらいになるので、それで私が真っ直ぐ家に帰らず夜の街でボーイハント——助手がわざとダサい言い方をしたというのは私にも分かる——するとなったら嫌な気分になるだろう。別にうちのメイドたちが嫌いになったわけでも飽きたわけでもないし。

 ……飽きてないといえば嘘になるか。昼食会でも話したことだけど、うちのメイドたちの基本的な嗜好が『お嬢様、私をめちゃくちゃにしてください』なので、受け身の私と相性がよくない。

 満ち足りていると思いながら、ちょっと普段と違うこともしてみたいというこの感じ。

「よし。お前もメイドも呼んで夜の街に繰り出そう」たまにはメイドと外でするのもいいもんだ。そして男でも女でも別に1人くらい引っかけよう。「決まり決まり」

「分かりました」助手は言った。「私も通用門に行きます」

「ん、着替えてから行くから」

「はい」

 私は研究室をあとにした。


 昼食会の話をメイドたちは把握していたので準備はできていた。家に行くと速攻で着替えさせられた。

 服については迷ったが、背中と胸元が大胆に開いているナイトドレスで、色は紺。腰のベルトに金細工があり、暗い場所でのワンポイントにした。スリットが深いので脚を上げるとガーターストッキングのベルトが太股と一緒に顔を出す。歩くとちらちら目につく感じだ。ストッキングにもワンポイント欲しくて刺繍に竜が入ったものを選ぶ。

 ネゾネズユターダ君は今晩は私の相手をしないので、子供たちと遊んでいる。事情を話すとさすがに複雑な顔をしたけど、焼き餅をやいて「浮気は許さないよ」と言ってきた。「ベッドでは分からせてやるから」

「私の体はあなたのものよ」と耳元でささやいて彼にキスをした。こういうじゃれあいは何回やってもいい。たまらん。彼の股間が固くなっているのを確認した。

 予定で今晩の相手だったメイドに声をかけた。暗い顔をしていた彼女は、外でやりましょうと言うと明るくなった。今夜はキャンセルになったと勘違いしていたのだろう。彼女は私服を持っていなかったので、メイド服のまま私と同伴することになった。

 準備が整うと、私と侍者たちは徒歩で通用門へと向かった。


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