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魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
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進展

 夜は久し振りだったので大いに盛り上がった。裸になると1つになって互いの体をむさぼった。ネゾネズユターダ君は股間を固くしたまま何度も私を求めた。私は何がなんだか分からなくなり獣のような声をあげて彼の体に爪を立てた。すべてが最高だった。

 落ち着いてから私はメイドに言われたことを思い出した。こういう声を出していると男の方が好きって言われそうだよな。そんなつもりはないけど、嫉妬されても仕方ないとも思う。独占欲は昔から馴染みの感情ではあったけどストレートにぶつけられたのは結構久し振りだ。

 ネゾネズユターダ君は力尽きて私の横ではあはあ息をしていた。私の体に触れながら目を閉じて余韻を味わっている。汗がまとわりついていたが体の火照りは気持ちよかった。私が満足していて、彼も満足しているなら、付け足すことは何もない。

「ねえ」私は言った。そんなつもりはなかったけど甘い声が出た。

「ん?」

「今でも幸せで死にそうになる?」

「うん」彼は即答した。

 この会話は何度もしている。1年に1回以上している。

 中身が甘すぎるのでここではこれ以上のことは書かない。

 その代わり別の話を書く。

 私は男を誘うときは狙いをつけて告白させるように仕向けてきた。成功率は100%だ。仕草や態度でほぼ成功するし、それで無理なら『誘惑』『発情』『魅了』『欲情』『催淫』といった精神魔法を使う。この分野は精神魔法の中でも研究開発が進んでいるので手段がいくらでもある。そしてきっかけが魔法でも男というのはその後に何もしなくても夢中になるものである。気持ちは肉体の情報に左右されやすい。私も含めて。

 ネゾネズユターダ君の告白は私にとっては不意打ちだった。予兆に気づかなかった。あとになれば分かりやすかったと気づいたけど彼に関しては私が鈍感だった。出会ってから最初の2年は普通に私が諸国時代や古代の風俗や文化を教えるだけの関係だったからだ。

 彼の気持ちに気づいてからはこっちも遠慮しなかったけど。

 出会った頃から彼は私のことが大好きである。それはもう本当にそう書くしかないくらい正直に。彼にとっては長い片思いのあとで晴れて結ばれて、そこから今までずーっと夢の時間が続いている。私にとって夢の時間はベッドの上だけだけど、彼は私と一緒にいる時間が全部そんな感じになっている。子供が3人いるのにまだ実感がないらしい。子供はリアルなんだけど私には現実味がないとか。

 それが嬉しくも思うけど、たまにちょっとは醒めてもいいんじゃないと思うときもある。贅沢な話なのは分かっている。

 ベッドでだらだら話をしているうちに彼が復活したのでもう1回。

 次の日に私の不妊治療のコーナーが復活した。場所は神殿前の階段広場ではなく——宗教的にちょっとまずいということになったようだ——迷宮建築物ソヌーバジッジの外の市場いちばの使用許可が下りた。朝市の最初のピークが終わったくらいの時間から適当にやってくれという話だった。

 そこで私たちは悪童妖精からの伝言を受け取った。


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