海の家の店員と雑談するだけ
最後の1つはシンプルな白のワンピースだったが、これも試着してみるといい感じだった。ビキニと合わせて3着とも貰った。海に着ていくのはピンクのプランジングネックにした。
「このピンクの生地はなんていうの?」
「桃孔雀って言ってる」店員はニコニコしていた。
「どこで買える?」
「市場に行けばどこでも買えるよ。あたしはヘドンの店ってところがおすすめ」
「分かった。ありがとう」
「あー、あと先に言っておくけど」店員は海水浴場の方をちらっと見た。「ナンパしてくる男に目つきが変で眉の太い男がいるけど、そいつはエッチが下手だから気をつけて。ほかは大体うまい」
「おすすめは?」
彼女はニヤっと笑った。両手の手のひらを耳の上に立てて、「金髪メッシュの入ったクルーカットの男。ヒョケーバジッジって奴」と言った。ジェスチャーはクルーカットのことだ。
「ところで子供用の水着はある?」
「うーん。このくらいの年の子だったら水着は着ないなー。シャツとショートパンツでみんな泳いでるよ」店員は私の子供を見るとぐっと膝を曲げて視線の高さを合わせた。「なんかこの子供もめっちゃかわいいねー。母親似だわー」
6歳の娘は店員の前で堂々としていて、4歳の息子は姉の服を掴んで伏し目になっている。
店員は息子の方の頭をわしわしと撫でた。巻き毛がぴょんぴょんする。「かわいー」
引っこんでいたけど女の人に気に入られて気分がよくなったようだ。もじもじしているけどおとなしく撫でられている。照れているけど彼もビキニの店員が気に入ったのが分かる。普通に男の子っぽくニヤニヤしていた。こういう感じは本当にネゾネズユターダ君みたいだわー。
「私の名前はザラッラ゠エピドリョマス。『生理痛軽減』の魔法の開発者なんだけど、分かる?」
しゃがんでピュゴダ゠グスの頭を撫でていた彼女は、「生理痛軽減?」と言った。「開発者?」目の前の子供の顔に夢中なようだった。撫でていた手が止まった。「ってあの?」立ち上がって私の顔を見た。「開発者? あれって昔からある魔法なんじゃないの?」
「開発したのは13歳のときだからね。16年前」
「へー!」店員の女の子は大声を出した。「それすごい。私の生まれた年だ。あれの開発者がいるんだ。あんたがそれ!」
「そう。私がそれ」私は言った。「あははは」
「あはははは」彼女も大口を開けて笑った。「あたしはニョーピューピュ。初めまして」
それから挨拶をした。それにしても16歳の女の子ってもうこんなに大きいのか。そりゃそうだよな。そういえばネゾネズユターダ君って私が『生理痛軽減』を開発したとき何歳なんだっけ?
計算しようとして怖くなったのでやめた。
いや、3歳なんだけどさ。10歳差なんだから難しい計算じゃない。




