表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いザラッラ  作者: 浅賀ソルト
“評価不定”の2つの自立
102/189

誘拐未遂の話

 初等教育の学校は小学校という名前だけど、レシレカシ魔法大学、レシレカシ魔法学校が壁の中の1つしかないのに対して小学校はいくつもある。なのでレシレカシ小学校という名前の小学校はなく、ニピゴ小学校とかヒャブカノ小学校といった風に地区の名前の小学校がある。最近はニピゴ東小学校とかヒャブカノ第二小学校といった名前の小学校が開校されたりしていて区別がつけにくくなってきている。私の1人目の子供が通う小学校も正門西小学校という名前だ。もちろん正門東小学校という小学校も別にある。

 正門西小学校が他の小学校と特別ということはない。ついでに言うと小学校に貴族用のお高い私立小学校みたいなのはない。小学校は全部公立で、市民の子供が等しく通っている。それが嫌な貴族は家庭教師を雇って子供に自宅学習をさせている。そんなわけなのでうちの娘が公立の小学校でその辺の鼻たれのガキンチョと一緒に勉強していたわけで、警備とか警護は色々大変だったと思う。

 私が放逐されて王位継承権もない、いまはただの魔法大学の研修生であることは何度も説明した通り。じゃあ私もその子供もただの子供でただの一般市民かというとそういうわけでもない。ただの人だからといって実家が私のことを無視したり見殺しにしたりしたら、市民は「うわー、ギュキヒス、実の娘に冷たーい」となって評判が落ちる。評判が落ちるとなんとなく言うことを聞かなくなる。あるいは昔は一回ですぐに命令が通じてたのに、二回目とか三回目までは通じなくなったりしてしまう。だから勘当するとか放逐するとかいってもそれで何も面倒を見なくていいかというとそうもいかない。市民が納得するかは別問題なのである。簡単に世間体が悪いということだ。

 まあ、ぶっちゃけ、私は自分の政治的価値というものはよく分からない。それを言うなら母も兄も分かってない。レシレカシに来て学んだ身も蓋もない理屈を言えば、何の価値もないとも言える。ギュキヒス家が消えて別の人間が国を支配してもほとんどの市民の生活には関係がない。心配するのは現状において既得権益を得ている人だけということである。私の政治的価値を認めるのは政治的関係者だけであって、どうでもいい人にとってはどうでもいいということだ。

 あと、私が目障りとなったら私が兄に暗殺されちゃう可能性もある。とはいえこれは心配のしすぎで、本国から遠いレシレカシでちょっと好き放題やってるだけであれば、私を殺す意味はない。消すデメリットの方が大きい。私は別に物語に出てくるわがまま姫のように金遣いは荒くないし、暴君のように人を殺しまくったりもしていない。私生児は生んでるしスキャンダルは多いけど、それは別にギュキヒスの家名を一方的に落とすばかりではなかった。これは最近になって分かってきたことだけど、偉い人の——公人ではなく——私人としての問題点については、市民は割と娯楽として歓迎してしまうのである。歴史上の金遣いの荒い人物というのは私などの比ではない。趣味で戦争を起こすような本当の馬鹿も世の中にはいるのである。

 話が長くなってしまった。まあ、まわりくどい説明になってしまったけど、私の娘を誘拐する合理的な理由はあまりない。あるとすれば感情的なものだ。私に恨みがあるとかギュキヒス家に恨みがあるとか。本家には手出しできないからレシレカシに手を出すのだ。そうでなければレシレカシ魔法学校やレシレカシの貴族生徒への恨みなど、ギュキヒスと関係ない感情の可能性すらある。

 誘拐未遂犯はギュキヒスへの恨みが動機だった。娘が移動するときに馬車を強襲しようと計画していた。しかし計画段階で発覚し、犯人たちは一部を除いて殺されてしまった。生き残った犯人は身元を割り出され、地元では粛清を受けたということだが、私は事後報告で聞いただけである。

 私は自分の娘に護身用の魔法をかけていたのだけど、このときの襲撃では実行未遂で終わったので効果を知ることはできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ