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二度目は行けない場所

作者: 出藍の外れ

「一度行った場所ならもう一度行けるはず。」

「今、行けないのは最初からその場所に行ってないから。」

少女はつぶやいた。

男は驚き言葉に詰まる。

まだ小さな少女の世界では何度でも行ける場所にしか行ったことがないはずだから。

そしてその言葉が周りの大人から借りた言葉に過ぎないと知っているから。

その少女を否定せずに、説明する言葉を選ぶには時間が必要だった。


「答えられないのは私の言ったことが真実だからでしょう。」

少女はさらに言葉を重ねる。

少女の中には既に答えがあり、それを確認する作業でしかなかったのだ。


それを見ながら別の男は考える。

代わりに答えを届けたい。少女の世界を広げたい。

既に見えている世界にすらヒントはあふれているのだから。


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地球上にすら二度目は行けない場所がある。

いや二度目が保証されない場所がある。

もっとも分かりやすいのはエベレストの頂上だろう。

年間数百名の登頂者を出しているが、同時に死者もそして断念者も出している。

そして過去の登頂者にも再度の登頂の保証はない。

確かに行ける場所だ、そして同時に行けることが保証された場所ではない。

そんな場所は普通にあるのだ。

登頂には費用がかかる。自ら用意できなければ出資者(支援者)が必要だ。

一度目の登頂に支援してくれた人が二度目の登頂の支援をしてくれるとは限らない。

支援に値する何かが必要なのだ。

例えば前回とは違う要素、それこそ単独無酸素登頂のような話題が必要になる。

あるいは歴代最高齢、芸能人初、最多登頂記録の更新など何かしらが必要になる。

もちろんその人に惚れ込み、その人の意欲がある限り支援を続ける場合もあるかもしれない。

しかしそれは奇跡のようなできごとだ。


少女の否定したあの場所に行くにはエベレスト登頂より多くの費用がかかる。

もう一度訪れるには、それに見合う新たな特別が必要なのだ。

前回よりも長い滞在期間かもしれない。

前回よりも多くの採取物かもしれない。

あるいは安定した観測基地の構築かもしれない。

それらを実現するためには前回よりも多くの費用がかかる。

そしてそれに見合う大義名分が。

もちろんより難しくなる安全性を確保する技術も。


あの時から多くのものが変化した。

国際情勢も科学技術も倫理観も。

あの国に対抗し、先に成し遂げる必要は薄くなった。

遠隔制御技術などが発達し機械でもできることが増えた。

「はやぶさ2」がサンプルを持ち帰った作業を人が代わりにやることはできなかった。

かなり高い確率で人の安全が保障されないプロジェクトは進められなくなった。

人類の進歩のための尊い犠牲などは許されなくなった。

万が一にでも失敗し人命が失われれば、国が失うものが大きくなりすぎたのだ。


だからもうあの場所には行けないのだ。

あの場所に行けるのはあの場所を開拓しなければならないほど

地球の終わりが近づいた時。

でもその選択を決断することが出来ず、余力をなくして不可能にしてしまう。

そんな未来が近づいている気がする。

だからもうあの場所には多分行けない。

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