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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第八十二話 三つの願い(2)

「百通りもありゃあ、何度も失敗して、やり直すことができるだろう。三つとではえらい違いだ」


「トライ&エラー。いかにも遊びゲーマーの発想だ。でも、多くの人間はそう賢くないんだよ。もちろん、わたしも含めてね。だから百通り選択肢があっても千通り選択肢があっても、結局上手くいかない人ってのはいるもんなのさ」


 ルナは身振り手振りを交えて自信満々に語った。


「いや、失敗から学ぶだろう」


「ノンノン。学べるなら苦労しないさ。学べない人たちはたくさんいるんだよ。君が思っている以上にね。だから、わたしは願いは一つだけでいいと思っている」


「なら、その一つの願いを無限にしてくれとあたしなら願うけどな」


「それもゲーマーの発想だね。チートってやつかな。一つの願いを無限にするにはやはり賢さが必要なんだよ。それすらなく、即断即決で動く人はやはり存在する。この話の老夫婦はそうだったんだ」


「でも、三つって決まってるのは不思議ですよね!」


 カミーユが割り込んだ。


「あ、すみません。そのお話、私聞いたことなかったんです。ですから、とても興味深くて!」


 ズデンカは嫌な予感がした。カミーユはどこか血なまぐささを嗅ぎつけたのだろうか。


「誰でも子供のころには聞いたことがあるような話だよ」


 ルナは笑った。


「普通の子供時代ではなかったので……」


 カミーユは確かに皆が知っていることを知らなかったりする側面がある。前、パンに肉をはさんだ、どこにでもあるような食品を見て目を輝かせていた。


「ごめん。無神経だったかも」


 ルナの顔に焦りの色が差した。ルナは意外とこういう方面では脆いことは、ズデンカはよく知っている。


「いえいえ! そんなことないですよ」


 カミーユはそう言って不気味に微笑んだ。


「だがまあ、三つって決まってるのは不思議だな」


ズデンカは少し話の方向をそらそうとした。


「そうなんだよね。古来、三という数字は不思議なものだって言われてきた。洋の東西は問わないよ。鼠の三賢者だって、よく考えればそうだ」


「ポリポリポリポリポリ。確かに……僕らもなんで三賢者って呼ばれてるのかわからないんですよ。他の数でもいいのに」


「まあ、四とか五とか七とか数が良く使われる例もあるから、三という数字だけが特別でもないんだけど……でも、不思議だよね。われわれ人間の頭には生まれながらに数が刻み込まれているのかもしれない」


「生まれながらにかよ」


「あくまで冗談だけどね。でも、私は三つも願いを叶えてあげる必要はないと思う。だから叶えてあげる願いは一つあれば十分だろう」


「じゃあ、一つの願いを無限にしてくれと言われたらどうするんだ? さっきのあたしみたいに?」


「その場合には叶えられない願いもある、という留保をつけてるんだよ。できることは大してありませんよと、ってね」


 ルナはウインクした。


「まだいろいろ抜けは多い気がするぞ」


 ズデンカは言った。


「それはその時に応じてさ。君が一番良く見てきただろ?」


 ルナは笑った。


「面白い! わたしもお願いを三つ叶えることにしようかな!」


 カミーユがいきなりガタリと立ち上がった。


 ズデンカは警戒した。

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