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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第七十二話 もう昔のこと、過ぎたこと(4)

「……お前がそこまで言うなら」


 ニコラスは昔から何かあっても、フランツが頼み込めば頷いてくれた。


 とても優しい性格なのだ。


 だから、気難しいと他人からはよく言われる性格を持つフランツと付き合っていられるのだろう。


「ありがとう」


 フランツは感謝した。


「礼には及ばないよ。俺もお前と一緒に戦いたい。ストレイチー家のやつは気に食わないが、スワスティカと直接関わった訳でもないし、今は捨て置く」


 フランツはメアリーがルスティカーナ卿を無惨に殺害した過去は秘しておくことにした。


この件に関わる報告書をシエラレオーネ政府に送っているのだが、犯人がメアリーだとは書かず、正体不明のスワスティカの残党によりと偽ったのだ。


 なぜ、そうしたのかはよくわからないが、勘が自然と働いたのだ。まさかその時はメアリーと一緒に旅をすることになるなどとは思ってもいなかったが。


「さあて、それじゃあニコラスさん、早速ですがあなたは何が出来ますか? 実技試験では弓が得意だったという話ですが、現代はあいにく銃の時代です」


「なぜそんなことまで!」


 ニコラスは顔を青ざめさせた。メアリーの情報通ぶりが怖くなったのだろう。


「あなたとは一応同国のよしみです。だからいろいろ話は伺ってますよ。生まれた場所も同じメレディスですし」


 メレディスはオリファントの主要都市だ。フランツは一度も行ったことがない。ルナから何の役にも立たない土産物を幾つか貰った記憶しかなかった。


「だからと言って信用はしないからな」


 ニコラスはメアリーを睨み付けた。


「信用はいりません。あなたは自分の得意な分野を言ってくだされば、それに応じて調整しますので」


「俺は後方支援は得意だ。最初はパウリスカと組んでいたんだが……はぐれてしまって……すぐに……ジムプリチウスと遭遇して……」


「へえ、パウリスカさんも近くにいるかも知れないんですね。そこは知らなかった」


 メアリーは馬鹿にするかのような歪んだ笑みを浮かべた。


「俺の不手際だ……」


 ニコラスは全身を震わせた。


「仕方ない。また会えるときもあるだろう」


 フランツは慰めた。


 パウリスカのことも気になった。だが、それよりも今は目の前にいるニコラスが大事だ。


「後方支援とは、具体的に?」


 メアリーは何食わぬ顔で聞いた。


「煙幕とか薬品で相手の視界を遮断したり、動きを止めたり……ジムプリチウスに仕掛けたけど全て躱されて……」


 ニコラスは口惜しそうに続けた。


「願ったり叶ったりの能力ですね。相手は吸血鬼がいますが、なにか対抗策ってあります?」


「聖水なら幾つか持っている。吸血鬼とは遭遇したことはいが、類似の不死者に襲われた際は撃退に成功している」


 ニコラスはメアリーと視線を合わさずに答えた。


「ミスター・スモレット。合流して頂き感謝します。ズデンカをしばらく食い止める役はあなたにお願いしてもよろしいでしょうか」


「ちょっと待て、ニコラスを危険な目に遭わせるつもりか」


「いえいえ、フランツさんもご一緒に当たって頂きましょう。私はカミーユ、大蟻喰やヴィトルドが来た場合はオドラデクさん、ファキイルさんという感じで」


「ちょーっとまったー! キサマなんで勝手に仕切ってくれちゃってるんですか! 誰が言うことを聞きますか!」


 オドラデクが割り込んだ。

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