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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第七十一話 黒つぐみ(12)

 絶体絶命の危機です。


 つぐみさんたちも、


「どうしよう」


「何かやれないのかな」


 といろいろ心配してくれました。


「ズラタンの弱点は何か見つからないの?」


「ランコはズラタンの仲間ではなく、脅されて側面があるようだね。ランコは賭博場に入り浸っていて、その胴元がズラタンだった。負けが重なり、借金が払えなくなって苦し紛れに前の院長が隠していた修道院の財宝のことを漏らしたらしいよ。ランコは昔院長が隠すところを覗きみしたんだって」


「そんなことまで!」


 私は黒つぐみたちの調査能力に驚くことしきりでした。


 でも、目的はわかっても対処の方法はなかなか見つかりません。


「と、いうことはズラタンたちは院長の部屋を目指してまずやってくるんじゃない?」


 私は突然思い付きました。


「そうだと思う」


 つぐみたちも同意しました。


「なら、部屋に行く道に罠を仕掛けられれば……」


 話に訊くと強盗団が襲撃してくるのは一月ばかりさきのようです。人員を整えるのに時間が掛かるとのことでした。


 時間は十分あります。


 なら、その隙に修道院を改造して、反撃できるようにしなければ!


 私は決意を固めました。


修道女たちを呼び集めて、私は宣言しました。


「一ヶ月後、修道院はズラタン率いる強盗団に襲われます。はっきり言います。このままでいれば私たちは皆殺しにされるでしょう」


 どよめきと混乱が起こりました。ズラタンの悪名は其れほど轟き渡っていたのです。逃げ出そうとする者までいました。


 私はあえて止めませんでした。この程度で出て行ってしまうようなら、とても役には立たないだろうと思いましたので。


 混乱しながらも私の元に残ってくれる者たちだけに話を続けました。


「司祭さまたちに頼んで……何とかして貰えば」


 より賢明な者たちは提案しました。


「難しいでしょう。助祭のランコが彼らと通じています。騒ぎ立てて司祭さままで情報が伝われば、かならずズラタンが知ることになるでしょう。そうなればもう何をしてくるかはわかりません」


 修道女たちは固唾を飲みました。


「でも、大丈夫です。私たちには神さまがついているのですから。皆で協力すれば、かならずやズラタンを撃退できるはずです!」


 私は力強く宣言しました。言葉とは裏腹に本当は勝算などほとんどなかったのです。


 でも、私には院長としての立場があります。これまでも、これからも、神さまの身元へ行く時まで。


「なら、どうすれば対抗できるでしょう?」


「修道院を要塞にするのです。皆で戦う準備をしましょう! 私が前に立って全力で指導します!」


 実は話をかなり盛りました。最初にお伝えしたとおり、罠をしかけるぐらいで押さえておくつもりだったのです。でも、皆に演説した関係上、そこまで言ってしまわなければならないと思ったのです。


「はい」


「怖いけど、院長が仰るなら!」


 逃げた数名以外は戦う道を選んでくれました。逃げた者たちも司祭に言いつけるようなことはなく、ひっそりと退去してくれたのは幸いでした。


 日頃から人心掌握に努めていた甲斐がありました。それもこれもみんな黒つぐみ立ちのお陰なのです。


 さあ、その瞬間から、来たるべき日に備えて修道院の改造が行われました。

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