表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/1320

第八話 悪意(8)

「やめてっ、やめてええ!」


 ルナは繰り返すばかりだった。


 腕を押さえられ、頬を舐められた。ナメクジに這い回られるように感じた。


「ぎもちわるい! たすけてぇ! たずけでぇ!」


 命乞いをするかのように叫んだ。もう、まともに考えがまとまらなくなっていた。


 口を塞がれた。ルナは息ができなくなって顔が真っ赤になった。


 男の手を掴んでどけようとしたが、全くビクともしない。


 力の違いを思い知らされた。


「もしかして、こいつ生娘かぁ?」


 手が離された。


「ぶふぁ……はぁ……はぁ」


 ルナは息を吐いた。床に崩れ落ちる。


「男とやったことはないはずだよ。使い物にならないんで『通して』おいてよ」


 エスメラルダは笑った。


「いやだぁ! やぁだぁ!」


 ルナは咳をしながら喚いた。


「へっへ、そいつぁ良いぜ! 誰が貰う?」


 ルナから離れて男たちが円を作り、話し合いを続ける中、エスメラルダはルナの首根っこを掴んで言った。


「あたしが毎日どんな思いしてたか知れば、傲慢なあんたも少しは変われるんじゃない?」


「いぁやだっ、絶対にいやだぁ! いやあだああ!」


「あたしはね、それしかなかったんだ。そう生きることしか出来なかったんだ! それをあんたは心の中で馬鹿にしていた。悪意のある、蔑む眼であたしを見てきてた! それが許せなかったんだ!」


 エスメラルダは突然真顔になって、叫んだ。 ルナは体が震えるのを感じた。


「ごめん……えすめらるだぁ……ごめんなさぁい!」

「謝ってもムダ。あんたは娼婦になるんだ!」

「それだけはぁ……かんべんしてぇ……おねがいぃ!」


 ルナは眼の周りを赤くしながら叫んだ。


 話が付いたのだろう。男たちが一斉に振り返り、近寄ってきた。


 悪意に満ちた笑みで。


 ルナはうつろな目でそれを見ていた。


――おしまいだ。

 

 安穏とあの善き夜に身を任せてはいけない

 老いぼれは日の暮れにこそ 燃え 喚け

 怒れ 去りつつある光に 怒れ

 

 どこかから、声が囁くのが聞こえる。

――ああそうか、そうだ。怒ればいいんだ……でも。


 ルナには、もう怒る気力すらなかった。


 だらんと、力なく肩を落とす。


――もう、ダメなのかな。


 男たちに立ち上がらされた。


 その時。


「ルナ! ルナ! 大丈夫か?」


 どこからか、別の声がした。


 聞き覚えのある、優しい声だった。 


――ズデンカ?


 ルナは上を見た。


 天井の電球の放つ光がひときわ大きく広がって部屋の中に満ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ