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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第四十一話 踊る一寸法師(7)

 その姿はやがて再構築される。


 小人のカルロそっくりの姿に変わっていたのだ。その髪は若干オドラデクの糸と同じような色合いを帯びていたが。


「フランツ、カルロを殺すのか?」


 ファキイルが近寄ってきて言った。


「カルロだけじゃない全員だ。ファキイルは反対か?」


 フランツは聞いた。


「いや、フランツの思うとおりにすれば良い」


 近くの木陰に身を隠し、フランツは夜になるのを待った。カルロが外に出てくるのを待った。


 酒も煙草も嗜まないフランツはただマンチーノに関する手持ちの資料を読むことに費やした。


 小人たちは決して善人ではない。


 マンチーノはシエラフィータ族の探索に小人たちを教育していたことは本人たちから聞かなくてもわかっている。


 屋根裏や地下に隠れた者にも見つけ出したようだ。マンチーノが英才教育を施したのだろう。


 スワスティカが実権を握る以前からシエラフィータ族を根絶させねばならないと言う思いを抱いていたマンチーノは自分が育てた侏儒たちにシエラフィータ族の文化などを学習させ、探索するノウハウを教えていた。


 マンチーノは知性を持った猟犬を多く引き連れていたようなものだ。


 結果、ランドルフィを中心としてシエラフィータ族は多く収容所に送られることになった。


 主がスワスティカの領内で戦死を遂げた後、ランドルフィに残った猟犬たちの行方は探索されなかった。だが、書類には粛清対象として何名かの名前がある。その中にアメリーゴが記されていたことを最初見落としていたことに気付いた。


 フランツは自分が抱いた鬱屈した感情を晴らすとっかかりが見つかったようで嬉しかった。


「まず俺がカルロを殺る。一人になったところを狙う」


「そう上手い具合にいきますかねえ」


 カルロの顔をしたオドラデクは笑った。


「あいつも何か用をしなければならないはずだ。絶対出てくるさ」


 そう言って小人たちの家を長いこと見守っていた。


 だが、出てくるとしても見知らぬ小人ばかりでなかなかカルロが出て来ない。


 逆にアメリーゴと仲が悪い方の小人が外に出て来た。


――チッ。なかなか上手いように話は運ばんものだな。


 フランツは舌打ちした。


「ヘイヘイヘイ! いらだってますねえ!」


 オドラデクが冷やかした。


 フランツは無視した。


「仕方がありませんねえ。この姿で僕がちょっと話をしてきますよ!」


 オドラデクは駈け出した。


 フランツが止める暇もなかった。


 アメリゴの元にそれとなく近寄り、話をしていた。


 カルロが室内にいるならまず疑われるものと思われたが、小人は気にしていないようだった。


――カルロの集団の中での地位は低いのだな。アメリーゴなら把握してるだろうがアイツはそうではないようだ。このあたりがリーダーとしての格が落ちると周囲に判断されているのかも知れない。


 フランツは冷静に考えた。


 やがてオドラデクが一人戻っていた。話していた相手はまた違う方に向けて歩き始めた。


「何か情報は手に入れたか?」


 フランツは訊いた。


「引き出すのには苦労しましたよ。こっちは当然知ってる前提で話さなきゃならない。だから、アメリーゴさんの生い立ちを聞いて色々思うところがあり、あなたの実家の話を聞いてみたくなったと話を振ってみました。そしたらうっすらと家族に名前を呼ばれた記憶があるらしくてポロッとセストって言いました。カルロとセストは顔見知り程度で交流がなかったようなのが幸いでした。不審に思われないようほんと冷や冷やしましたよぉ」


 フランツはオドラデクの手腕に舌を巻いた。


 そうこうしているうちに、カルロが家からこっそり出て来た。

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