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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第四十一話 踊る一寸法師(4)

「わかったです」


 カルロは力なく答えて歩き始めた。


 そして口笛を鳴らす。


 すると、街路のあちこちから小人たちの小さな頭が姿を現した。


 「場所を変えるぞ。カルロ、尾いてくるように指示を出せ」

 と言いながらファキイルの元に歩いていき、


「もし連中が何か手出しをしてくるようなら躊躇わずに殺してくれ」


 と頼んだ。


「わかった」


 ファキイルは躊躇せずに答える。結局犬狼神に頼ってしまう己を責めたかったがオドラデクはあの調子で頼りにならないので、結局はお願いすることになる。


――俺が弱いと見くびられてはまずい。


 フランツは焦りを感じた。


 実際、フランツは自分があまり強くなった感じがしない。トゥールーズでグルムバッハを殺したときもロルカでテュルリュパンを討ったときもギリギリで勝ったようなもんだった。


 しかもいろいろな掩護を得ているわけで自分一人でとは言いがたい。


――功績を上げたい、何か大きな功績を。


 何も新しい報告を送れていないことが酷く気がかりだった。


 小人たちがぞろぞろと列を成して進むのを街の人々は嫌なものを見るかのように眺めていた。


「あまりみんなの前で歩きたくはないんです」


 カルロは小声で言った。


 フランツは答えなかった。スワスティカに組みした輩はどんな者であろうとまともに取り合う必要はないと思っていたからだ。


 やがて、街の郊外に出た。パヴェーゼに通じる狭い街道の上に草木が生い茂っている。


「とても街の中には住めません。いえ、昔は小さな家の屋根裏とかを使っていたんですが、だんだんそうも行かなくなってきまして」


 フランツは鬱陶しくなった。


――お前らの事情など知ったことか。


 やがて煉瓦を積み上げたボロボロな一軒屋が見えてきた。


「でかさだけは大人分ありますねえ」


 オドラデクは物珍しそうに余計なことを言った。


「みんなで暮らしているんです」


小人たちは家を前にして並んだ。


 フランツとオドラデクとファキイルはまるで審査官でもあるかのように一望した。


 数はカルロを含めて二十人ほど。男が十五人でほとんどだ。


 対して女が五人。


「家にも三人います。他に子供も六人いるんです」


 カルロが言った。


 三十人近くの大所帯となる。どうやって暮らしているのか不明だ。


「お前らの仕事は?」


 フランツは訊いた。


「ゴミ拾いや材木の伐採などの仕事なら貰えるので、それを請け追ったり後は芸を見せてお金を貰ったりしていますね」


 眼鏡を掛けた小人が進み出て言う。


――こいつはカルロと比べて学がありそうだ。どこで身につけたんだか。


「お前は何て名前だ?」


 フランツは腕を組んで訊いた。


「アメリーゴです」



「そうか。では訊くが芸ってのは何だ?」


 フランツは飽くまで冷たい口調に撤した。オドラデクも流石にその雰囲気を察したのか口を閉じたきりだ。


「ボクシングやプロレス、後は踊りを踊ったりです」


「踊ったりだと?」


 フランツは鼻で笑った。


 さすがにその態度にアメリーゴは気分を害したようだった。


「僕たちは一生懸命やっています。あなたのようなよそ者に笑われる義理はありませんよ」


 周りに緊張の波が走った。


 フランツは考える。

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