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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第三十九話 超男性(5)

 確か、小学校の校庭だったと記憶していますね。


 私は友達数名と駈けっこをしていました。先ほどのようにです。


 もちろん、そのときから私は連中よりもうんと早く、すごい距離をとって走っていましたとも。


 ただ、今のように、少しも疲れないと言う訳にはいきませんでした。多少は息切れしていましたね。


 ところが。


 いきなり、身体中に激しい痙攣が走ったのです。


 そのまま私はぶっ倒れたようです。


 後から雷に撃たれたものだと他の人に訊かされてわかりました。


 黒焦げになりはしなかったようですが、痺れはまだしばらく残っていて、完全に健康になるまでに何日もかかりました。


 さて、起き上がってみると、変な違和感があります。


 いや、違和感というと何か悪いことのように聞こえるかも知れませんが、そうではありません。


 満たされたような感じといいますか、俺は何でも出来るんだぞ、というような、不思議な思いです。


 実際、枕元にあった机を試しに持ち上げてみました。


 そしたら、軽々と持ち上がるではないですか!


 持ち上がるのはそれだけではありません。ハンマーだろうが、家屋敷だろうが、何でもその気になれば持ち上げられるようになったのです。


 駈けっこでも誰にも負けないようになっていました。


 大人と競争しても、です。


私の名前はだんだん知られていくようになりました。


 常人離れした力を持つ小学生がいると。


色々な国から、私に競技大会に出場して欲しいとお願いが来るようになりましたね。


 最初こそ心惹かれました。


 でもじきに飽きてしまいましたよ。私が優勝してしまうのですから。


 年を取れば取るほど、私の力は強く、体格も大きくなって、誰にも叶わないものとなっていきました。


 幾つもの大会で一位を獲得してしまうと、その賞金だけで生きて行くことができるようになりましたからね。


 だもので、私は小学校しか出ていないんです。本なども読まずにやってきましたね。


 勉強などやらなくてもいいのです。


 大人になった頃に、このままではいけないと思い始めました。


 賞金稼ぎなど、男一生の仕事ではない。私は普通の男性を超えた男性、超男性なのだから、もっと人を救うために生きなければならない。


 また雷に撃たれたように私は心機一転して人助けを行うようになりました。


 さて、人助けと言われますと、どのようなことを考えられるでしょうか?


 実は私、聴覚もずば抜けているのですよ。だから、自分の周辺だけではなく、この世界のあちこちで起こったほとんど全ての出来事を一瞬にして察知することが出来るのです。


なので、必要であればこの脚力でそこま走っていき、あるいは海を泳いで、駆けつけていくのです。


 救った人は数知れません。


 もちろん、私は一人だけしかいないので、同時に解決することはできません。自然と取捨選択することもあります。


 超男性としてやるべきことはやっているつもりです。


 でも、悲しいこともあります。


 私の周りにはたくさんの人が集まってきますし、女性にも取り囲まれます。でも、私は一度として同じ場所にはいられない。


 いきおい、刹那的な逢瀬になってしまうのです。


 常に世界中を駆け回る生活を送っているので、仕方ないのですが、少し寂しい。


 私は、超男性です。なら、その相手は同じぐらいの力を持つ超女性であるべきだ。


 そんな二人の子供こそ、この世界を救う存在になるのはわかりきっているではありませんか。


 ところが、とうとう今日、そういう相手と出会ったのです。


 何を隠そう。


 あなたです、ズデンカさん。

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