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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第百六話 死人に口なし(11)

「ジムプリチウスとオイレンシュピーゲル、後はカミーユ・ボレルと、それから先日襲撃してきたロミルダも連中の部下になるのか? あとミュノーナの高台で襲ってきたやつもいたな」


 フランツは考え込んだ。ジムプリチウスはいったいどれほどの勢力を従えているのか、全く定かではなかったからだ。


「いえ、おそらくカミーユ・ボレル、ロミルダ、それから襲ってきた輩のどれもこれもジムプリチウスの部下じゃないでしょうね。あくまで私ちゃんの推測ですが」


 メアリーは腕を組んでクールに答えた。


「なぜそう言い切れる?」


 フランツは問うた。


「それなりに情報は入手してましてね。ジムプリチウスはあくまで自分の友人はオイレンシュピーゲルのみだと言っている。これは事実なのでしょう。あとは『告げ口心臓』を使って煽動している。ロミルダさんあたりもおそらくその一人に違いない」


「じゃあ、ジムプリチウスに味方するやつは無数にいるのか?」


 フランツは驚いた。


「そうでしょうね。カミーユ・ボレルがどう思っているのかはよくわからないのですが、ジムプリチウスの部下とは言いきれない存在だと私は考えています」


 思ったより敵の数は膨大らしい。誰が襲いかかってくるかわからない状況なのだ。


 ズデンカが終始焦りを見せていた本当の意味がやっとわかった気がした。おそらく自分の認識は甘かったのだ。


 ジムプリチウスは選挙で勝とうとしている。国務大臣になろうとしている。そしてこの国を乗っ取ろうとしている。支持者を作ってルナ・ペルッツを追い込もうとしている。


 おそらくそうなのだ。


 よく考えればルナ一人を追い込むためにここまでするのはばからしいのだが、ジムプリチウス本人の権力欲と国を盗りたいというかつての野望がない交ぜになっているのかも知れない。


――どちらにしろ、やつは生かしておいちゃ危険だ。


 この要塞のなかにすらジムプリチウスに組するものはいるかも知れない。


 『告げ口心臓』一つあれば情報が伝わり、居場所も筒抜けになる。


 いや、カミーユがやってきたということはおそらく筒抜けなのだ。


 フランツは急に不安になった。想像以上に事態は切迫している。


 それを自分は気づかないふりをしていた。


「シュルツさん、顔色が悪いですね」


「そりゃ悪くもなる」


「『告げ口心臓』は本当に厭なアイデアでしたよ。あんなもの思い付いても誰も作ろうとしない。関係ない人間同士を通信出来るようにするなんて」


 メアリーは少し苦々しく笑っていた。


「ご安心ください。この要塞にいる間は全力でお守り致します」


 ヴォルフは請け合ってくれる。


 だが、フランツは心配だった。


 オドラデクやメアリーに言われて袂を分かつ方に説得されかかかっていたが、逆にメアリーの情報を得て、絶対にルナの元を離れてはいけないと思うようになった。


――もしここで俺がルナの側を離れたら、その隙に殺されてしまうかも知れない。


 フランツは息をのんだ。自分の双肩にルナの命がかかっているのだと実感すると恐ろしい気持ちになった。

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