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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第百四話 死とコンパス(5)

「あの思想が出回ったせいで、僕たちは鼠獣人の多いロルカに出向いても歓迎されなくなりました。むしろ命まで狙われる始末。なんども酷い目に遭ったことありますよ。まあ簡単には殺されませんけどね」


「殺されても復活したしな」


 メルキオールは一度ルナに殺害されているが復活を果たしている。


 今ルナは睡眠中のためズデンカはそれをネタにメルキオールをからかうことが出来た。


「毎度復活できるとは限りません。何度か身体を新しくしてはいますけどね」


「話をコンパスに戻すぞ。こんなばかばかしいことをフランツ三世はマジで行ったのか?」


 ズデンカは訊いた。


「ええ、虐殺はきっちり行われましたよ。史書にも書かれているでしょう。これは大きな出来事だったらしく、後世色々話を聞いていますね。でも結構変なことは言われています。数を盛られていたり。数万単位とか語られていますが、実際は千人程度でしたね。当時は記録も残ってたはずですよ。飢饉に見舞われたその地域では、そこまでたくさん子供は生まれていませんでしたから」


 カスパールは思い返すように説明する。


 カスパールのほうがメルキオールよりも真面目な性格のようだ。ズデンカは話をしやすいと感じた。


 ズデンカが項目をざっと読んでみると虐殺は数万人に及び、フランツ三世の死まで続いたとあった。


「フランツのクソやろうが死ぬまで続いたのかよ?」


 ズデンカは挑発的に行った。もちろん多少はフランツをからかう目的でもある。


「フランツ三世と言え」


 予想通りフランツはくってかかってきた。


「どっちでもいい。クズはクズだ。実際は千人ぐらいだろうが万人ぐらいだろうが人殺しだ」


「そんなことを言うなら、歴史書に出てくる英雄はほとんど人殺しですけどね」


 メルキオールが皮肉っぽく言った。


「子供を理由もなく殺すなんざ悪党だろうが」


「理由があったのかも知れませんよ。その時代はね」


「どんな理由だ」


「推理してみたらいいじゃないですか。ズデンカさんが」


 メルキオールは小首をかしげ微笑んだ。


「どうやって推理するんだ」


「カスパールに話を聞けば宜しいんですよ」


「じゃあ話せ。フランツ三世は傲慢なやつだったろう?」


「いえ、支流の生まれ立ったため遅くに即位された方なので三十年の治世の末にはもう八十近いご老体です。これは現在も伝わってると思いますよ。終始フガフガとして家臣に従わされるままになっていました」


「なるほど、じゃあ虐殺及び、コンパスで円を描いての殺害は他のやつにそそのかされた可能性があるのか」


「はいはい。私はその頃王室に買われていたんですが、その談合を直接見た訳ではありません。でも、夜な夜ないろいろなささやき声が聞こえてきたりしましたよ」


カスパールは見てきたように語る。


「どんな話をしていた。詳しく話せよ」


 ズデンカは急かした。


「えーと、今思い出しています。そうですね例えば、殺すとか滅ぼすみたいな言葉は頻繁に聞こえてきてましたよ」


「それじゃ参考になんねえ。地図にコンパスで円を描いて殺してやるって言ったやつを探しているんだ」


「探したところで何になるんです。何百年も前の話でしょう」


 メアリーがあきれたように言った。


「たかだか何百年だろ。あたしは何千年前の殺人を推理したこともある」


「それはすごいですね。ぱちぱち」


 メアリーは全く勢いの良くない拍手した。


「容疑者を何人か挙げて見ろ」


 ズデンカはカスパールに言った。

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