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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第百二話 草迷宮(10)

――出し方はわからん。


 返ってきたのは、何とも無責任な答えようだった。


――お前が入れたんだろうが。


 ズデンカは怒るのをこらえた。今怒ってしまったら元も子もなくなる。


――入れたのかもよくわからん。ひたすらおびえていたら、いつの間にか誘い込んでしまったのかも知れない。


 要領を得ない返事だ。


――ともかく、入れたのはお前だ。何とかしろ。


 ズデンカは強情になった。


――……。


 返事はなかった。


「埒があかねえな」


 ズデンカはフランツとメアリーに言った。


「他の方法を探してみるってのは?」


 聞かれていなかったジナイーダが答えた。


「他の方法? この迷宮の主は覚だぞ」


「でも、他に抜け道があるかも知れないよ」


「草をめくってもめくっても外にはたどり付けねえよ」


「抜け道ってのは物理的にとは限らないよ。気持ちの持ちようってところはあるかも知れない」


「な、なんだよお前ちょっとは難しいこと言うじゃねえか」


 ズデンカはたじたじとなった。


――気持ちの持ちようか。


 もちろん、意味自体はわかる。いやわかりすぎるほどわかる分野だ。


 なぜならゴルダヴァでルナがカスパー・ハウザーに操られたとき、心のなかに入って気持ちの持ちようで全てを好転させた。


 やはり思いが物事を変えることはあるのだ。しかし、いざやってみようとしてやれるものではない。


 タイミングなど、さまざまな要素が絡んでくる。


 この草迷宮を出るイメージがなかなか思い浮かばない。いや映像としては浮かぶのだが、どうもそれだけではだめのようだ。


「さあ、探してみよう!」


 ジナイーダは勢いよく走り出した。


「おいちょっと待て! ジナ!」


 ズデンカは手鞠を持っているので動けず、見送ることしか出来なかった。


「勝手に行ってしまいやがった」


「活発でよろしいことじゃないですか。あなたの娘さんでしたっけ」


 メアリーが半笑いで言った。


「なんか腹が立つな。まあ娘と言えば娘だが」


 ズデンカはメアリーをにらんだ。 


 ズデンカはジナイーダを吸血鬼ヴルダラクにしてしまった。死ぬか生きるかの瀬戸際でそれしかなかったからだが、長い時間を同じ姿のまま生きさせてしまう決断が本当に良かったのかとたびたび不安になる。


「年頃の娘さんもいらっしゃるんですから、シュルツさんに絡むのはおよしになればよろしいですのに」


メアリーは敵意ある皮肉をたっぷり見せながら言った。


「だから絡んでなんかいねえよ。自然に会話になるだけだ。お前ともそうだろうが?」


 話してばかりで本質に至らない。ズデンカは焦り始めた。


 覚によればここでは時間が流れないと言うことだが、ホントかどうかはわからない。


 戻ったとき時間が経っていたらどうしてくれるのか。


 刻一刻が争われるのだ。


 デンカは考えに考えあぐねた。


「なにか方法は見つからないか……」


「あ、考え方を変えれば良いのかも知れませんよね」


 メアリーが突然何か思いついたように言った。


「ここは草でできた迷宮。どこもかしこも草だらけ。下を見ても草ばかりです。でも、草ではない場所がどこかにあるとしたら、どうでしょうかね?」


「はあ? 草以外の何がこの場所にあるって言うんだ?」


 と反論しようとしたとき、ジナイーダの明るい声が響いた。


「ズデンカ!」

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