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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第百二話 草迷宮(6)

 本当に鮮やかな色だ。


 ズデンカは手に持ってみた。


 ポンポン。


 宙にはね上げる。


 とても軽い。


「これを迷宮に投げるのか?」


「そうだね。もちろん糸は切って」


 ルナは言った。


「そんなんでいいのかよ?」


「わからない。でもやってみよう。面白そうじゃないか」


「オドラデク! バスを止めろ!」


 ズデンカは命じた。


「うっさいなあ。言われなくてもわかってますよーだ」


 オドラデクは急停止する。


「時間の無駄じゃありませんか?」


 メアリーは冷たく言う


「無駄じゃない。様々な方法の一つだ。ルナと旅してきていないやつにはわからんだろうが、あいつの思いつきで事態を打開してきたことはいくらでもある」


 ズデンカはなぜかルナを馬鹿にされたように感じてムキになった。


 ズデンカはバスの扉を開けて外に出、鞠の糸を指の爪で一気に切った。


 そのまま豪快に振りかぶって草むらの奥の向かってと鞠を投げつける。もちろん、切られたいとの先はちゃんと持って。


 勢いよく鞠は飛んでいった。


 ものすごい勢いで糸はズデンカの手のひらをえぐるが瞬時に治癒されていく。


「これで、いいんだな」


「いささか早く投げすぎだとは思うけど良いんじゃない?」


 ルナはおもしろそうに言った。


「チッ。お前が投げろよ」


「やーだよ。手がずたずたになっちゃうよ」


 ルナは手をひらひらと振る。


「しんどいことは全部あたしにやらせやがって」


 ズデンカは腹が立ったが糸の先を見送り続けていた。


 こつん。


 何かに当たったような気がする。


「行き止まりのようだぜ」


「そのままたどってください――いえ、私たちの民話ではそうなっています」


 キミコが説明する。


「やってみるか」


 ズデンカは糸をたどって歩き出した。


「私ちゃんも行きますよ」


 なぜかメアリーが競ってくる。ズデンカの横に並んだ。


「お前は死んだらそれでおしまいだろう。自分より強いやつが出てきたらどうする?」


「死ぬまで戦うのみです」


「おい待て、俺も行く。せっかく新しく剣を買ったんだ。ここで使いたい」


 フランツが尾いてきた。


「お前は邪魔だ」


「あなたでは無理です」


 ズデンカとメアリーの言葉がなぜかかぶった。


「いや、戦える」


 フランツは言い張る。


「ズデンカ」


 ジナイーダが尾いてきた。


「お前も来るのか」


「うん。もちろんやばそうだったら逃げるけどね。それでファキイルさんを呼ぶ」


「それがいい。斥候を務めてくれよ」


「うん」


 本当に草で出来た迷宮だ。


 前後左右、草むらで覆い尽くされて、外を見ることも出来ない。ズデンカは何枚か引き破いてみたがその向こう側も草が続いており、脱出は不可能なようだった。


「鞠を使うしか方法はないな」


 ズデンカは意を決して進んだ。


「ルナを残して良かったのか」


 途中でフランツが言った。


「ファキイルがいるだろ」


「ファキイル頼りにするのはいけない」


 フランツは起こったように言った。


「大蟻喰もいる。やつは人格に問題ありだが、ルナを守りたい気持ちだけは確かだ」


「あいつは得体が知れない。武器屋で殺人が起こったんだが」


 フランツは身震いするように言った。


「なんだと? その話始めて聞いたぞ?」


ズデンカは驚愕した。

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