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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第百一話 魂を漁る女(10)

 いや、アグニシュカへの感情だけは本物なのだろう。しかし、それ以外のすべては嘘だ。


 嘘嘘嘘嘘嘘。


 ジムプリチウスによって作られた華麗なる嘘の世界だ。


 カミーユはもう苦笑するしかなかった。


「ルナ・ペルッツ。許せん!」


「絶対に捕まえてやる。法律に従わせる!」


 もう群衆は何でもいいのだ。ルナに対する憎悪の餌さえあればなんでも食い付くそういう状態になってしまった。


 エルヴィラの話もこれ以上は面白くなりそうもない。カミーユは再び広場を出ることにした。


 これ以上この場にとどまっている退屈と、出て人殺しを続けることの面白さを天秤にかけたのだ。



 出てしまうとあきれるほど誰もいないのでずいぶんせいせいした気分になった。

「さてさて、どの人を殺そうかな」


 カミーユは慎重に品定めした。


 この近くで派手な事件を起こしてしまったらミュノーナに居続けるのは困難になる。


 カミーユは歩みを進めた。


 すると、しばらく木陰のなかの道を進んでいった時だ。


 周りを囲むようにたくさんの警察官が迫ってきた。


「おい、待て」


「お前に姿の似た人間だ人を殺していると連絡を受けている」


「さすがに無能警察じゃなかったね」


 カミーユは微笑んだ。


 だがこれだけたくさんの獲物が自分からやってきてくれるのだから、こんなにエキサイト出来ることはない。


「手を上げろ。撃つぞ」


 警察官は銃口をいくつも向けてくる。なめられてはいないようだ。


「はいはい、わかりました~」


 カミーユは両手を挙げるふりをした。


 そう。それはまさに『ふり』だ。


 カミーユは思いっきり地を蹴って、スカートを振り払った。


 体に仕込まれたいくつものナイフが、中を切って警官たちの喉笛を切り裂く。


 運良く当たらなかった経験は即座に発砲を始めたが。


 「遅い」


 カミーユはナイフを振るって接近していた。ナイフを一閃して首を背骨から剥ぎ落とす。


 血が吹き上がったが、カミーユはおきまり通りに退避していた。


 体が、とても軽かった。


  斬っても裂いても突いても。肉の脂で刃が鈍るこもないぐらいものすごい力を込めてカミーユはナイフを動かした。


「あ~楽しい!」


 ものの数分もしないうちにカミーユには迎えるだけの警官はいなくなっていた。


「誰か!」


 カミーユは必死に仲間を呼ぼうとする警官の首を逆側に折った。


 だがいくら殺しても焼け石に水で、警官は次から次にやってくるだろう。全員殺してもよかったが、そうなると町全体が大混乱に陥る。


 カミーユはそれは避けたかった。


 殺しを楽しめなくなるではないか。


「もうこの町にいられないな」


 カミーユは残念に思った。せめて選挙の結果ぐらいは見たかった。


「新聞とかで確認するしかないなあ」


 『告げ口心臓』という方法もあるが、今耳を傾けても、熱狂した叫びが繰り返されているばかりだろう。


 すでに周りの人も起っていることの異様さに打ち震えてカミーユを指さしている。


 カミーユは駆けた。


 逃げるわけではないが、しかし、結果としてはそういうことになる。


 カミーユはあまり良い気分ではなかった。


 自分がそこまで負けず嫌いだったとは驚きだ。

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