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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第九十九話 うろんな客(4)

 ズデンカの初期案の通り、ルナ、ズデンカ、ジナイーダ、オドラデク、それからキミコが加わることになった。


 残りのメンバーとはそりが悪いように思われたからだ。


 キミコは役に立たない魔法のランプも持ってきてはいた。


 しかし、これは本当に役に立たない。


  なかにいる魔神ジンはいろいろ理由をこねくり回して絶対に願いを叶えようとしないのだ。


 キミコはいつも振り回されてばかりいる。ズデンカもなんとか手立てはないかと思っていたところで、ルナと長い旅路に出てしまった流れがあるのだ。


 残りは大蟻喰、バルトロメウス、フランツ、メアリー、ファキイルと言った面々だ。


 一触即発になるかもしれない不安定さはあったが、ファキイルが圧倒的に強いため、他は妙に騒ぎ出すことはないだろう。


 とくにオドラデクのような不安要因が取り払われたなら、なんとか穏やかにやっていくことは出来るだろう。


 市中でいらぬ争いを引き起こすことだけは、ズデンカは絶対に避けたかった。


 ルナの地元と言っていいオルランド公国で何か起きるとすぐにルナが疑われてしまう。既にミュノーナでの火事のニュースは全国各地に広がっているはずで、ルナの顔を見ただけで反応される可能性は高い。


 マスクなり何なりで顔を隠したかったが、あんな目立つ顔がそう簡単に隠せるわけがない。


 本人も隠したがらないだろう。ルナはマスクが嫌いなのだ。


「アデーレ久しぶりだなあ。ラミュ以来だっけ。懐かしく感じるよ」


 ルナは目を細めて言った。


 アデーレ・シュニッツラーはルナが好きでたまらないらしいが、ルナはそうでもなく、むしろ利用しているような側面すら見受けられる。


 だがルナも友情のようなものは感じているらしい。オルランドにいた頃は何かあればすぐに頼りにいっていたのを思い出す。


――好きなやつではないが、信用は出来る。身分だけは確かだからな。


 ズデンカは内心で思った。


「アデーレってやつは名前こそ有名だけどあんまり訊きませんねえ。他の連中の方が有名じゃないですかね。たとえば最近、オルランドの国務大臣を狙って与野党ともに大きな選挙が行われるらしいじゃないですか。アデーレ何とかは、職を辞して立候補すら考えてないって訊きますよ。野心もないしずっと同じ席に坐っているだけ、愚鈍とも表されています」


 オドラデクは妙に事情通だ。だがズデンカもアデーレのそうした風評は以前から自然と耳に入っていたので、反論する気は起こらなかった。


 しかし、このオドラデクの発言は別の意味でズデンカの興味を引いた。


――そうか、選挙が始まるのか。


 今まで社会の流れとは全く離れて暮らしていたズデンカにとっては、新しい情報だった。


 オルランド公国には大公がおり、軍の統帥権自体は握っているが、政治全般は国務大臣我になっている。


 つまり国務大臣はオルランドの国政を担う重要な役職だ。


 先日、前大統領が在職中に病没したという話はズデンカもどこで聞いた覚えがあった。しかし、名前も知らなかったし、詳しく調べていられる余裕はなかった。


「大統領の有力候補はいるのか?」


 ズデンカは訊いた。

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