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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第九十九話 うろんな客(3)

 他の連中もすべて外に出たので、オドラデクは元の姿に戻った。


 屋敷が燃える前後でいつの間にかいなくなったと言うハロスが気にはなったが、やつは吸血鬼だ。そう簡単に死ににはしないだろう。 


いずれ必要になれば追ってくるはずだ。このあたりはさすがに土地勘もあるだろう。


――そもそもなんで勝手に旅についてきたやつの心配をしなきゃなんねえんだ。


 ズデンカはげんなりした。


「シュルツさん、歩けます?」


 メアリーが訊いた。


「まだ少し痛いが大丈夫だ。歩けないことはない。猟人がこんなことでへこたれてはならない」


 フランツは歩き出した。しかしまだ震えている。


 あばら骨を殴ったズデンカはまた罪悪感を覚えた。


――衝動的にやっちまった。あいつがルナを危険にさらしたと思ったから……。


 フランツもどうやらルナを好きらしい。死して見ればわかるとおり、メアリーはフランツが好きらしい。


――ややこしくなってきた。


 ズデンカはルナと二人だけで旅をしていたのにいつの間にかぞろぞろとついてくる連中が増えた。挙げ句の果てにはジナイーダと言う娘まで出来た。


「ズデンカ、皆で行くの? すごい多くいるよ?」


 ジナイーダが訊いてきた。


「確かに……」


 ズデンカはちょうと思っていたところをピンポイントにジナイーダは指摘してくれる。同じ血をわけた吸血鬼ヴルダラクだから少しは考えていることがわかるのかもしれない。


「フランツとメアリーは残ってくれないか? あたしとルナとジナイーダと、それからオドラデクを借りていく」


 ズデンカは気易いメンバーを選定していくことにした。


「ちょっと待てよ。何でボクを除くの?」


 大蟻喰は表情を歪めながら言った。


「よく考えろ。お前をアデーレ・シュニッツラーに会わせられるか? 陸軍軍医総監だぞ? あちこちで人殺しをしているお前を」


「人殺しならズデ公だってしてるじゃないか」


 大蟻喰は鋭く指摘した。


――それは間違っていないが。


「だが……あたしらはアデーレと面識がある。お前にはない。だから怪しまれる。それだけの話だ」


「ふん」


 大蟻喰はそっぽ向いた。


――こいつは案外賢いところがある。


 ズデンカの理屈を受け入れたのだろう。


「オドラデクを借りていくのは返信がうまいからだ。お前も出来ないことはないが、お前は体を大きくしたり、他の人間にはなれるが、こいつは物にも化けられる。連れて行くならこっちにきまりだ」


「ちょっとー! なんでぼくがついて行くって決まったんですか? なんでこんな変なやつについてかなきゃならないんですか! フランツさん! あなたもなんか反論してくださいよ」


「別れた方が良いかもな。俺は剣を借りたい。エンヒェンブルグは武都だから、良い剣を売ってるだろう。旅の途中で折れてしまってな」


 フランツは淡々と述べた。


「じゃあお前らは剣を買ってこい。金はあたしが出す」


 そう言ってズデンカはルナの財布を取り出し、札束を引き抜いて渡した。


 結構な額がある。


「いいのか? 資金は俺のほうも足りてるが」


 フランツはためらいながら訊いた。


「出来るだけ強い剣を買え。高いやつをだ。そうでないとルナは守れない。だろ?」


 ズデンカはフランツをにらみつけた。 


「ああ」


 フランツは深刻な顔で応じた。


 こうして、隊を二つにわける計画は案外すんなりと決まった。

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