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月(ルナ)は笑う――幻想怪奇蒐集譚  作者: 浦出卓郎
第一部

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第九十五話 死後の恋(7)

 再びエレベーターで一階に降り、受付嬢に挨拶をした後、二人は警察署へと向かった。


 コンクリートの無骨な建物だ。まあ警察はそのほうがいい。


 ズデンカは急いでなかに入り、こちらの面会室へ行って殺人課の刑事を呼び出した。


 実はこっちも知り合いがいる。


「お前か」


 強面のゴリラのような男がやってきた。


「久しぶりだな、ローベルト」


 ルナも色々事件に巻き込まれることはあった。その際に対応した刑事がローベルトだ。もう一年半ぶりぐらいになる。


「さっき出版社によったんだが、事件の証拠になるようなものを預かってくれと言われてな」


「はあ、証拠だと。なら動かすなよ」


 ローベルトは嫌そうに言った。


「あたしは仕方なく渡されたんだ。本来ならお前に来て貰った方が早かった」


「じゃあまあ、見せろ」


 ズデンカはアルバムを机の上に置いた。


 ローベルトは『死後の恋』をめくり初めて直ぐに青ざめた。


「こりゃひでえ……」


「どこから送ったのは知らないが、殺人が行われているはずだ。何か手掛かりはないか?」


 ズデンカは訊いた。


「守秘義務がある、と言いたいがお前の頼みだし調べてやる。あとルナ・ペルッツについて訊きたいこともあるしな」


「訊きたいことってなんだよ?」


ズデンカは面食らった。


「ヒルデガルト共和国でちょっと前にリヒテンシュタットっていう有名な劇作家が死んだ。ルナ・ペルッツがそれに関わっているという噂が最近広がっているんだ。それだけじゃない。ルナ・ペルッツは旧スワスティカ残党のビビッシェ・ベーハイムだって話まである。馬鹿馬鹿しい話だと思うし、警察が調査するほど証拠が集まっていない、おっと是こそ守秘義務だな」


 ローベルトは顔とは裏腹にずいぶん口が軽い。


「関係ねえよ。どれだけルナに恨み辛みを抱いている奴がいると思う? いちいち相手している暇はない」


 ズデンカは嘘を吐いた。


 ルナがリヒテンシュタットの死に関わったのは確かだが、殺したのはズデンカだ。


 『鐘楼の悪魔』によって化け物に変化したリヒテンシュタットと激しい戦いを繰り広げて勝った。


 それだけのことだ。だが刑事事件化すればルナが殺人者の汚名を着ることになるかも知れない。


――もうオルランドにもいられねえかも知れない。


 ジムプリチウスが『告げ口心臓』で広めている情報とどれだけ関係があるのかわからなかったが、もし警察や国が動くようならルナはこの国には滞在しづらくなる。


 元より根無し草のルナではあったが、『仮の屋』のあるオルランドに入れなくなるのは痛手だ。


 いろいろな原稿や、これまで数多く集めたガラクタもある。


「まあねえよな。噂なんて幾らでも流れるもんだ。気にするな、ガハハハハハハ!」


 ローベルトは豪快に笑った。


「さっさと調べてこいよ」


  ズデンカは急かした。


「ああ、わかった」


 とローベルトは『死後の恋』を持って部屋の外へと飛び出した。


「ああ、やれやれ辛気くさいな。ボク疲れちゃった」


「なら早く戻れ。『仮の屋』が大丈夫か見てこい」


「やだよ。『死後の恋』の謎が解明されるのは見届けたい」


「今日解明されるわけねえだろ。警察が捜査してそれからだ」


「ズデ公が解決しないの?」


「何であたしが」


 ズデンカは呆れた。


 大蟻喰はズデンカが推理をした時、一緒にいなかった覚えがあるのだが、どこかで見られていたのだろうか。

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