081.水晶竜の雄叫び
「ひえー! でっかー!」
メルキュールの嘆声が洞穴に響き渡った。
「すげぇ……」
マーカスも同じくあんぐりを口を開けて、巨大な水晶を見上げる。
水晶大洞穴という名を聞いて、なんとなく水晶のある洞窟なんだろう、くらいには想像していた一行だったが、その想像を上回る遥かに巨大な水晶に、思わず立ち止まって見上げた。
アルムシタッド王国王都マレソフィアより北へ五十キロ。水晶大洞穴に七竜の封印石があるという伝承を頼りに向かっていた。
あいにくの雨模様で、ごうごうと吹き荒れる風雨の中である。
洞穴の入り口は上空を旋回する飛空艇からではわかりにくかったが、険しい山間の中にポツンと王国の旗がはためいていたのが見えたことが幸いだった。
飛空艇が木々をへし折りながら強引に着陸すると、驚いた王国兵が駆け寄ってきた。
「ゼトラ様でございますか!」
「ええ! ここに水晶大洞穴があると聞いて!」
「その通りでございます! どうぞこちらに!」
大雨にうたれながら、ようやく洞穴に入ったのだった。
雨で衣服はぐっしょりと濡れてしまったが、しかしそれも直ぐに乾いてしまった。
その理由が――
「それにしても暑いわねぇ……」
「五十度くらいあるらしいしな」
「遮熱結界を張るわ。集まって」
人の十倍はあろうかという巨大な水晶があちこちの壁からいくつも生えて複雑に入り組んでいる。
まるで道を阻むかのようなその異様な巨大水晶を見上げて、頬を滑り落ちる汗を拭った。
王国兵から洞穴の中はかなり蒸し暑い、と聞いていた。
ちょっとしたサウナ、と思えば聞こえは良いが、周囲から溶け出すような熱は容赦なく体力を奪い、吐く息さえも熱がこもった。
メルキュールが張った遮熱結界によってようやくマシにはなったが、それでもじわりと熱気が伝わるのは、決して気の所為ではない。
体感三十度強程までは抑えられてはいたが、やはり暑い。
「大丈夫? なんなら僕一人でも行くよ」
ゼトラなりに心配して声をかけたつもりだったが、それはゼトラ以外の四人には大いに不評……不興を買ったようである。
「またそういうこと言う!」
フィオリーナがプンスカと腹を立てて、ペチンとゼトラの腕を叩いた。
アイビスもまた無言でゼトラの肘の薄皮をつねり、頬を膨らませる。
「ッたく、お前はなんでも一人で背負い込み過ぎなんだ。少しは頼ることを覚えろ」
「そーよ。それとも私達はそんなに頼りないのかしら?」
「そ、そんなことないよ。頼りにしてる」
ゼトラが頭をかいて、頬を伝う汗を拭った。
巨大な水晶の柱を迂回するように、足場の悪い岩場を越えていく。
フィオリーナが足を取られて転びそうになった所をゼトラは慌てて支えたが、当の本人は慌ててゼトラから離れた。
「?」
フィオリーナもまた汗びっしょりとなっている。
そんな汗だくの手でゼトラには触られたくない、恥ずかしい、という乙女心なのだが、ゼトラにはイマイチ理解できないようである。
ゼトラの心配そうな視線を躱すように、ポーチからハンドタオルを取り出して布越しに腕を掴んだ。
「それにしてもこの暑さで本当に魔獣なんかいるのかな」
「わかんないわ。魔獣って言ったって、元は獣よ。変異する前の基本生態は引き継ぐだろうし……」
「こんな熱気の中でも活動的な魔獣なんて、竜種くらいだぜ……」
マーカスの補足に嫌な予感が走る。
「いやいや、まさかねぇ。竜種だったら宰相も一言くらいは言うでしょ」
メルキュールの乾いた笑いに、ゼトラも思わず顔を引きつらせた。
「ニャン、封印石の場所はそこからでもわかる?」
ゼトラがオニャンコポンに渡された通信機に問いかけると、飛空艇に待機しているオニャンコポンのクリアな音声が返ってきた。
「そこから大体百メートルくらい下った所に反応あるぜー」
「お。意外に近いじゃないか」
洞穴の入り口から百メートルほど歩いた所だったが、その声に従うなら、マーカスの指摘通り意外に近い。
自然と足を早めながら、崩壊して砕けた水晶の足場を下っていく。
しかしオニャンコポンの言う百メートルというのはあくまで直線距離であって、巨大水晶が入り組む洞穴の中では、進める道一つ見つけるのにも散々苦労した。
時折出没する小型の竜種魔獣を倒しながらようやくそれらしいところに出たのだった。
「おそらくこの水晶の向こうにあるはずなんだが……」
巨大な水晶が横たわり、洞穴を塞いでいる。
こころなしか伝わる熱気の温度も上がっているような気がして、吹き出す汗が止まらない。
「ちょっと水分補給だ。さすがにこれはつらい……」
フィオリーナが熱気で顔を上気させて大きく息をついた。
無論フィオリーナに限らず、アイビスとメルキュールも、肩で大きく息をしていた。
それを気遣ったのか、マーカスが真っ先に声を上げて、銘々ポーチから水筒を取り出した。
ただ一人、ゼトラはケロリとしていて横たわる水晶の向こうに行ける隙間はないか、しゃがんで探す。
辛うじて一人分が這って進めそうな隙間を見つけて、うーん、と唸った。
「……ここからいけるかな……? マーカス、どう?」
最も体躯の大きいマーカスが、ゼトラを押しのけて隙間を覗き込む。
「ああ、行けそうだな。んじゃ、俺が先にいってみるぜ」
「ちょっと!」
流石に無警戒すぎるマーカスを止めようと、メルキュールが肩を掴もうと手を伸ばしたが遅かった。
水晶の破片が散らばる足場をザクザクと音を立てながら乳白色の向こうに消えていった。
「ったくもー。あんたも大概でしょ!」
メルキュールがブツブツと呟きながらその後に続き、アイビス、フィオリーナ、そして最後にゼトラが隙間を忍び這った。
ゼトラがようやく隙間から顔を出すと、直立不動のまま硬直する四人に気づき「どうしたの?」と声を出そうとした瞬間、フィオリーナがゼトラの口を塞いだ。
「しー」
小声でゼトラに耳打ちして、黙って指差す。
その先に、赤く明滅を繰り返す封印石と――。
「ドラゴン……」
それを守るように、目を閉じて眠りにつくドラゴンがいた。
水晶を鎧のように身にまとい鈍い光を放つ竜。
全長は人の十倍程度、竜種としては標準よりやや大きめのサイズ。
その異様な姿は水晶竜とでも言うべきか。
「やっぱいるんじゃない……」
メルキュールがうんざりとした表情で呟く。
マーカスとメルキュールはこれまでも数こそ少ないがドラゴンを討伐した経験はある。
だがその竜は初めて見るようだ。
「グラハ宰相が言っていたのは、あの竜にねぐらを追われたさっきの小型竜種魔獣のことなんじゃないか?」
「かもね……」
相手の力量も分からないまま挑みかかるほど無謀なものはない。
慎重に、足音を立てないようにゆっくりと武器を構える。
幸いにも広めの空間となっており、戦いの場としては苦労はなさそうだ。
ふと上を見上げれば、ぽっかりと空が見えている。
どうやらこの水晶竜はあの穴からここに降り立って、ねぐらにしているようだ。
「やつが目を覚ましたらゼトラは封印石の解除に。残りは足止めだ」
「おっけー」
「わかった……」
もし敵わない相手なら、どこかに入り口ができるはず。
そこに逃げ込もう、と打ち合わせを済ませ、また一歩、ジリと歩みを進めた。
フィオリーナがポーチから手に馴染んだ長槍を取り出して、切っ先をわずかに水晶竜に向ける。
アイビスもまた、水晶竜が動けば即座に動けるように、防御体勢を取った。
水晶竜を起こさないように、じり、じりとすり足で封印石まで回り込む。
だが、封印石まであと少し……という所で、突如として水晶竜が目を覚ました。
「やっぱりダメか!」
水晶竜がつんざくような咆哮を上げて、煌々と紅い瞳を灯らせて、炎の息を吐き出した。
それに素早く反応して回避すると、まずメルキュールが氷の蔦を走らせて、足元を狙った。
同時にゼトラは駆け出し、封印石に向かう。
氷の蔦で絡みとって、一瞬だけ動きが止まった。
そこにゼトラから注意をそらそうと、マーカスが首元を狙って大剣を振り下ろす。
渾身の力で振り下ろした勢いがそのまま跳ね返ってきたのか、容易に弾かれて、大きく体勢を崩した。
「とんでもねぇ硬さだ!」
慌てて体勢を整えたが、水晶竜の鋭い爪が襲いかかる。
そのマーカスを横っ飛びでアイビスが突き飛ばすと、その爪を辛うじて躱した。
「やッ!!」
フィオリーナが恐れず水晶竜の懐に飛び込んで、一番柔らかそうな喉元に槍を突き立てた。
しかし、ガキィン!と水晶の鎧に弾かれる音ともに尻もちをついた。
今度はフィオリーナを狙って水晶竜の前足が振り下ろされそうになった所に、メルキュールの火球が顔面を捉えた。
水晶竜が一瞬怯んで動きが止まった隙を逃さず、フィオリーナも体勢を整えて距離を取った。
マーカスとアイビスが真正面に、メルキュールとフィオリーナが両サイドから挟み込むように、水晶竜の動きを牽制しながらじりじりと間合いを測りながら隙を伺う。
その後ろではゼトラはチラリと気にする素振りを見せながら、封印石に手を伸ばしていた。
水晶竜は逃げ出す様子もなく、ねどこを荒らす闖入者を追い払おうと低い唸り声で威嚇する。
「魔法は効いてるみたいよ!」
メルキュールが次なる魔法を繰り出そうと魔力を練り上げ、杖の先を向けた。
その杖の先端から雷が迸り、水晶竜を包み込む。
ギャォオ!と苦しむような咆哮を上げて水晶竜がメルキュールをにらみ、炎の息を吐き出した。
「おっと!」
しかしメルキュールはその炎をひらりと距離を取って躱し、ニヤリと笑う。
「どうやら雷系が苦手みたいね!」
水晶竜が顔を横を向けた隙に、今度はアイビスが雷をまとった掌打を顎に叩き込み、水晶竜が大きく跳ね上がった。アイビスの横からマーカスが雷の魔力を流し込んだ大剣で横薙ぎに払う。
今度は弾かれず、水晶の鎧が木っ端微塵に砕け散り、水晶竜の頬が大きく裂けた。
「効いた!」
水晶竜がもんどり打って、一回転、二回転、と床に転がり、這いつくばる。
その瞳がますます紅く輝いて、怒りの咆哮を上げる。
ギラリと睨みつけ一歩後ろに後ずさると、ごう、と大きく胸を膨らませて身体を反らせた。
特大の炎の息か、と察して距離を取ったマーカスとアイビスだったが、その懐に飛び込む稲妻のような影。
「フィオッ! 危ない!」
だが、その声に構わず、フィオリーナの鋭い閃撃。
「ヤーッ!」
フィオが裂帛の気合と共に、雷の魔力をまとわせた槍の穂先を、水晶竜の左眼めがけて深々と突き刺した。
水晶竜が苦悶の雄叫びを上げて、大きく反り返りもんどり打つ。
「きゃあ!」
反り返った勢いでフィオリーナが空中に投げ出された。
「おっと!」
体勢を崩したまま地面に叩きつけられる寸前に、駆け寄ったマーカスが滑り込んでギリギリの所でフィオリーナをキャッチした。
ガハァと火の息を漏らしながら、なおも立ち向かおうとする水晶竜の鼻面を、アイビスが大きく身体を捻り、渾身の魔力を込めた回し蹴りを叩き込む。
水晶竜の頭部が大きく歪み、床に叩き伏せられて、さらにメルキュールが氷の槍を上空から降り注がせて縫い付けると、雷の魔法で包み込んだ。
水晶竜が凄まじい雄叫びを上げて抵抗しようとしたが、執拗に注がれる稲妻に、ついに力尽きるように倒れ伏した。
黒焦げになりながらも起き上がろうともがき、苦しむ水晶竜に駆け寄ると、マーカスがトドメを刺して、ようやく決着が付いた。
「やった……か……?」
水晶竜が魔石昇華を果たして空中に煌めきを残しながら四散していくのを見て、片膝をついたマーカスが大きく息を吐く。
女性たち三人も息をつかせぬ攻防と、暑さに参ったのか、膝に手をついて、大きく肩で息をついた。
「危なかったけど、なんとかなったわね……」
「みんな! すごいね!」
封印を解除できたのか、ゼトラが笑顔で駆け寄りフィオリーナの手を取る。
「なんとか、ね!」
「フィオ、すごかった!」
「えへへ!」
ゼトラに褒められたのが余程嬉しかったのか、汗だくにも関わらずゼトラの腰に手を回して抱きついて、しかしハッとしてすぐに離れてモジモジとする。
「それにしても、フィオったら無茶するわね。あのタイミングで突っ込むとは思わなかったわ」
「ああ、少し焦ったぞ」
マーカスとメルキュールがフィオリーナを注意しようと口を尖らせる。
だがフィオリーナはニコリと笑い、首を振った。
「ゼトラなら相手が攻撃する瞬間こそ隙があるって突っ込むだろうなって思ってて身体が勝手に動いちゃった」
えへへ、と笑うフィオリーナが槍を拾ってポーチにしまいながら得意げに胸を張る。
どうやら最強の勇者の動きを常に間近で見ていたことで、その動きがフィオリーナにも自然と染み付いていたようである。
戦闘経験豊かだからこそ、つい慎重に動きがちなマーカスたちと違って超積極的、超攻撃的、勇気溢れる行動は、カバーしてくれる仲間がいるからこその芸当だった。
「まったく、ゼトラの動きを真似するなんて、無茶をする」
マーカスは苦笑しながらフィオリーナの頭をくしゃりと撫でたのだった。
ちなみに、ゼトラが水晶竜の相手をしていれば一撃の元に斬り伏せていたのだが、それをしなかったのは正解である。
一撃で斬り伏せた勢いで洞穴が崩壊して生き埋めになっていたのだから。
ゼトラはその大惨事を予見してマーカスの案に従っていた。
なにはともあれ洞穴の一角、崩れた壁から通路に入り、制御室に向かう。
起動用のパネルを操作すると――
「ようこそ七竜システム・風崔竜へ。現在本体は休眠状態中。山剴竜の警告発令に従い、起動準備に入っています。本体を起動するにはパスワードを入力してください」
「お。風崔竜ってなんか移動がすごく速いとか言うやつじゃなかったか?」
「ユピが言ってたやつだね」
マーカスが思い出したように指を弾く。
風の竜という以上は、他の七竜とはまた違った特性があるのだろう。
いったいどんな竜なのだろう、と一同は内心ワクワクしつつ風崔竜の強化外殻へと転送されたのだった。
風崔竜の核体は、髪が腰まで長く、緑色をしていた。
肌の色はベージュ色で、長い睫毛と、人のそれより大きく黒目がちな瞳が印象的だった。
「お久しぶりですわ、マイマスター」
「風崔竜でいいのかな」
「はい。カーリーという愛称もございますわ」
「よろしく、カーリー」
カーリー、と名乗った女性がずいぶんと人らしく、自然に微笑んでニコリと頷いた。
カーリーの開発者は、随分と人間的な所作にこだわっていたようである。
他の七竜は一見すると全裸にも見える素肌むき出しだったが、カーリーは座席の奥に仕舞ってあったの白磁色の絹のドレスをするりと身にまとい、ゼトラの元に跪いた。
「早速ですが強化外殻を起動させますわ」
「あ……うん。周囲に人はいないか確認してもらえる?」
「承知いたしましたわ」
カーリーは強化外殻起動準備に入りながら、コントロールパネルを操作すると、いくつものモニターが浮かび上がって周囲の映像を映し出す。
「強化外殻周辺五キロ圏内にヒト族集落はありませんわ」
「うん……じゃあ大丈夫かな」
「はい、では起動しますわね」
おっとりとした口調で素早くコントロールパネルを操作すると、制御室が微かに揺れた。
王都マレソフィアから北北西におよそ五十キロ。
神の住まう地と呼ばれる剣峰があった。
赤道直下にありながら山頂は万年雪が溶けることはなく、王都からでも見えるその美しい山容は多くの民衆の目を楽しませていた。
その日、その剣峰が突如として崩れ、山から巨大な竜が現れた。
夕焼け空に照らされていて、はっきりわかる程に胴体は深緑色をしており、その姿は蛇のように細長かった。それ以上に巨大な翼が目を引いて、大きく開けば天に届かんばかりである。
しかし折りたたまれると、まるで巨大な繭のようにも見えた。
ゴウ、という咆哮はアルムシタッド王国だけではなく、その周辺各国に届いた。
また、それを目撃した民衆は大いに驚いて、終末が訪れたのかと頭を抱えて絶望を口にした。
だが事前に手を打っていたのだろう。
大勢の王国兵が騒ぎを鎮めようと各地の街に駆り出されていた。
「あれは伝説の七竜である! 危害を加えるものではないという事であるから、安心してほしい!」
王国兵の言葉どおり、山から現れた巨大な竜は暴れる事もなく、その場で静かに佇んでいたのを見て、民衆の騒ぎは次第に収まっていった。
一方その頃、風崔竜のメイン制御室では合流した火崙竜の核体と合流していた。
「よっ。カーリー。久しぶりだなっ」
「オニャンコポン、状況説明をお願いしたいですわ」
「ほらよ。ユーピテルとテュールの三人で構築した共有リンクが用意してあるぜ」
差し出された手を握ったカーリーとオニャンコポンの間で魔力の輝きが漏れると、カーリーが何度も頷いて、ちらりとゼトラを見る。
「テュールから連絡があり、山剴竜の強化外殻の修復は間もなく終えるそうですわ。終わり次第、テュール……水蒙竜の強化外殻は初期位置に戻るとのこと」
「そうなんだ」
「それからオニャンコポンも初期位置へ。『極めて深刻な脅威』の現在位置観測に入るそうです。ということで、ここから先は私がお手伝いいたしますわ」
「わかった。ありがとう、カーリー、オニャンコポン」
「いいってことよー。じゃまた後でな!」
それだけ打ち合わせをすると、オニャンコポンは飛空艇に戻ってさっさと飛び立ってしまった。
「さて、既に四体覚醒したことで共鳴|コールの精度も高まることでしょう。残りの三体……月威竜、花帖竜、草漠竜の封印されている地に向かえば封印石の位置も正確にわかるはずですわ」
「そうか、ありがとう」
「では向かいますわね」
「ちょっと待った!」
コントロールパネルを操作しようとしたカーリーを、慌ててメルキュールが止めた。
「なんでしょう、従者の方?」
従者じゃないわ、という指摘はひとまずグッと堪えて横に置いておき、少し大げさな仕草で、メルキュールが肩をすくめた。
「時差で感覚おかしくなってるけど、時間的には十二時間以上働きっぱなしよ。ちゃんと休まないと」
「確かに……」
ふとゼトラがフィオリーナを見ると、その目はどこかシパシパと眠そうである。
「うん。じゃあ休もう。ここから南に大きな街……王都があるんだ。そこに向かってくれる?」
「承知いたしましたわ。では小型飛空艇で参りましょう」
「ゆっくりでいいから」
欠伸を噛み殺すように目をギューッと瞑ったフィオリーナを抱き支えると、メイン制御室から上に続く階段に向かうのだった。
予告。
七竜を無事に復活させ一時の休みを取る『明けの明星』
星灯りの下でゼトラは国王と語らう。
自信なさげな国王陛下の悩みに対するゼトラの答えは。
次回「082.星灯りの」
お楽しみに。
ブクマ、評価をつけて頂き御礼申し上げます。
本当にありがとうございます。
ブクマ、評価、感想などいただけると嬉しいです。
次回更新は2020年11月24日お昼頃の予定です。
よろしくお願いいたします。




