百合ハーレムの女王になろう系小説~女の子と仲良くなりたくて異世界転生したけどハズレジョブのせいで勇者パーティーから追放されたのでヤケになってチートを解放したら世界が平和になった件~
私は女性を愛したかった。
そして同じだけ女性から愛されたかった――
「わかるよ、その気持ち! 女の子が好きだっていう秘めていた想いをどうにもできなくて苦しかったよね。打ち明けて相談する相手もいないから感情の沼に飲まれていくしかなくて……でも安心して。あなたには幸せになる権利があるんだから!」
気付けば見知らぬ空間にいた私の前で謎の女性が熱のこもった演説をしている。
確か私は残業を終えて日付の変わった町を歩いていたはず。ここはどこでお前は誰だ。
「落ち着いて聞いて。あなたは過労が限界を超えて人生を終えてしまったの。働くことで現実逃避をしてお金は使い道がないから貯まっていく一方だったけど……増えていく残高を見るたびに心が冷えていたのよね。お金なんかより愛がほしい、って」
なんなんだこの人はさっきから。ベラベラと喋り倒して気味悪い。
何が気味悪いかって、言ってることが全部当たってるところ。
「それでね、あなたに幸せになってもらえる転生先を用意したの。そこはなんと女性しかいない異世界! 女性同士の恋愛が当たり前だから我慢する必要なんてないわ。その世界でレイナっていう学者の娘に今の記憶を持ったまま転生してもらうんだけど、この子実は将来勇者のパーティーに加わって魔王討伐の旅に出るのよ、すごいでしょ?」
「……あの、話が見えないんですが」
「大丈夫、全部任せて! ちゃんと神の力で知識と常識は脳内に叩き込むから! それともちろん、チートもあげるわよ。だってあなたには誰よりも一番幸せになってほしいんだもの!」
「いや、だから……てか、あなたは一体何者なんですか」
「私は神と呼ばれる存在よ。趣味は百合観察、特技は百合妄想。そして職務は妄想の具現化……さあ、見せてちょうだい。あなたの欲望を。思い描く百合の園を!」
瞬間、私の意識は暗転した。
* * * * *
転生した私はすぐにすべてを理解した。
あの言葉が何もかも本当だったことから自称神様が本物だったことまで。
チートとかいうよくわからない概念も確かにこの体に備わっている感覚があった。
もちろん新たに生まれた異世界の知識や常識についても。
生まれた瞬間にすべてを知った私が神童と呼ばれるまでに、そう時間はかからなかった。
幼くして天才と讃えられた私の名は瞬く間に広まっていく。
十七歳になった頃、私の家に訪ねてきた勇者直々にお誘いを受けた。求められることがなかった私は嬉しさのあまり肯定する機械になっていた。
君の知識は世界平和に必要だ、なんて美しい女性から口説かれて断れる人がいるのだろうか。
ちなみに今までチートは一度も使っていない。
知識という私の一面を買って勇者パーティーに誘ってくれたんだから使う必要もないかなと思っていた。
だって、仲良くなれただけで私は満足だったから。
こんなにも人との繋がりに飢えていたんだな、と客観的に思えてしまうくらいには。
学者として私は古今東西あらゆる知識を仲間たちに授けて助言をし、旅先で立ち寄った国や村などの問題解決にも奔走した。
そのたびに感謝され、認められ、承認欲求がみるみる満たされていった。
前世じゃ得られなかった快感、安寧、高揚感。
パーティーの仲間たちも私と親しくしてくれている。
いつも凛々しい勇者ちゃんも、様々な魔法を使いこなす賢者ちゃんも、お調子者だけど実は強い騎士ちゃんも……
旅をしながらワイワイと語り合うことで、私は青春をやり直して取り戻しているようだった。
ありがとう女神様。
私、新しい人生を満喫してるよ。
* * * * *
「レイナ、あなたをパーティーから追放する」
私の最高潮は不意に打ち切られた。
「……えっ、どうして?」
「あなたは弱い。戦闘能力がない。戦えなければ……知識だけでは魔王は倒せない」
勇者ちゃんの意見は至極真っ当だった。
私は弱い。持っているのは知識だけ。剣も魔法も使えない。
モンスターの特徴や弱点はわかるけど、自分じゃ何もできないから後ろで情報を伝えてサポートするだけ。
戦えない。だから強くなれない。
仲間がモンスターを倒したら経験値が分配される、なんてのはゲームの話。この世界では自分の行動で結果を起こさないと経験値として認められない。
もちろん敵の情報を調べることで得られる経験値はある。
けれどモンスターを倒すのと比べたら天と地の差で。
気付けばどんどん置いていかれ。
レベルの低さは弱者の証。
今ではパーティーの他メンバーとの差は歴然。
自分でもお荷物になっている自覚はありつつも、目を背けていたんだけど……
「わかってほしい。私たちは真剣に世界平和を目指している。情けや綺麗事だけでは実現できないことも知っている。だから――」
突きつけられた現実。
だったらなぜ誘ったんだ、という当然の疑問が湧き上がる。
最初から誘わなければ、期待させなければ……こんな思いはしなかったのに。
疑問は絶望へと塗り変わる。
抗う術はない。
「――うん、そうだよね。しょうがないよね」
こうして私はパーティーから抜けた。
不要だと言われたら、いくら抵抗しても覆らない。
だって、向こうも思いつきの感情で言ってるわけじゃないから。
私の知らないところで結論が出されているからこそ、それありきで話は進められていく。
それならどうしようもない。
こんな時は飲み込みが早くて物わかりがいい無能を演じる方が傷も浅い。
でも、浅くたって傷は傷。
拒絶されたという事実は私をどこまでも苦しめる。
「マスター……もう一杯」
どうやってここまで来たのかも覚えてない。ここがどこなのかもわからない。
確かなのは、私がどこかのバーでカウンターに突っ伏しながらおかわりを要求していることだけだ。
「お客さん、飲みすぎですよ」
「うっさいなぁ……客がくれって言ってるんだからちょうだいよぉ……」
店員の気遣う言葉すら今は痛い。そこには拒否の色が見えるから。
今の私はそんなのいらない。ただ認められたい。求められたい。それだけなのに……
「マスター、刺激強めのカクテルをお願い」
透き通った声に顔を上げれば、隣の席に美人が座っていた。
酒の甘ったるい匂いとは違う芳香は、薄茶色の長い髪から漂ったものだろうか。伸びた背筋によって形作られる姿勢と体のライン。座高はもちろんのこと、スカートから伸びる脚も長い。
それはまさしく大人の女性だった。
モテるんだろうなあ、きっと。私なんかと違って。
ふと目が合った。まつ毛長いな……
そういえば社畜だった頃、こんな女性とバーで出会って一夜の過ちをしてみたり、なんて妄想もしたっけ。
結局、叶うどころかバーなんてところにすら行かなかった、てか行けなかった。
そんな暇なんてなかったから妄想を組み上げていくだけで私の前世は終わってしまったのだ。
「あら……飲みすぎちゃったのね。大丈夫?」
そうそう、こうやって優しく声をかけてくれたりして、そこから話が弾んで意気投合しちゃって。
「せっかくだし、もっと落ち着けるところで飲み直さない?」
なんて言葉でお持ち帰りされちゃってさ。
「まだ酔ってるみたいだけど……歩ける? ちょっと休んでいきましょうか」
とか言われてホテルに連れ込まれちゃって、お酒の力もあってそういう雰囲気になっちゃって、一緒にシャワーを浴びてキスして触り合って可愛い姿を見せてもらって裸のまま抱き合って眠って……
「……ん?」
いや待て。
どこから妄想でどこから現実だ?
「おはよう、レイナちゃん。昨夜はすごかったわ……見かけによらず情熱的なのね」
誰よりも近い場所で微笑んでくる綺麗な顔と美しい肉体が、すべて現実だと私に叫んでいる。
そうだ、思い出した。
正確には事実を理解した。
私は昨夜、この女性を抱いた。
会ったばかりのお姉さんの肉体を隅々まで堪能した。
今は淡く微笑む彼女の顔を歪ませながら何度も求めて頂上へと導いた。
対人でのそういう経験は初めてだったはずなのに、なぜそんな超絶テクニックを私が持っていたか、という疑問に対する答えは簡単。
チートを持っていたからである。
そもそも私がもらったチートは「意識した女性絶対オトすオーラ」とかいうふざけた名前の代物で、効果は字面の通り。
しかも体質として「女性同士の関係を深めれば深めるほどレベルアップする」というこれまたふざけたパッシブスキルが常時発動しており、付随して仲良くなるために必要な諸々のスキルも先天的に与えられていた。
昨夜披露した数々の技術もその中にあったというわけだ。仲良くって意味深な方向も含むのかよ。
てか意味深な方向じゃないとダメらしく、パーティーにいた頃に仲間たちとワイワイおしゃべりをしたくらいじゃレベルはピクリとも動かなかった。
そんな裏事情を踏まえて昨夜の出来事を回想すると――
私がバーカウンターで隣のお姉さんを見つめて変な妄想を広げたせいでチートが発動したのがすべての始まり。
今まではチートのネーミングセンスが最低だったから使うのをためらってたんだけど、酔っ払って前後不覚になっていた上に追放のショックで心が荒れていたせいでブレーキが機能しなかった。
それから濃密な会話を交わして、一人じゃ歩けないからと肩を貸してもらって、ホテルに入って、見つめ合って、愛を囁いて、触れ合って、達して、そのたびにレベルがぶっ壊れたように上がっていった。
レベルが上がればステータスも上がる。ステータスには「魅力」という項目がある。効果は説明するまでもないだろう。
私の魅力にあてられた、と言うのは嬉しいような恥ずかしいような複雑な気分なんだけど、ともかく彼女が瞳にハートマークを浮かべながら可愛くおねだりをしてきたものだから、私の理性が決壊するのも当然の話。
女性同士で関係を深めればレベルアップする、というのは制限がないどころか効果は累積されていくらしい。
なので私のレベルは指数関数のグラフも裸足で逃げ出すような上昇具合を見せた。深く繋がったまま愛を囁くだけでレベルの桁が変わるくらいの勢いだった。
レベルが上がれば魅力も上がり、魅力に酔った彼女は更に私を求め、私はそれに応じて交わり、レベルが上がり、魅力も上がり、彼女は求め、私は応じ、レベルが上がり、レベルが上がり、レベルが上がり――
そんな果て無き情熱の百合循環を終えた結果、私のレベルは数万単位で上がっていた。この世界にカンストという概念はないのか。
「レイナちゃん、好きぃ……」
意外にもタフだということがわかったお姉さんが、腕にしがみついてそんなことを言ってくる。おかげでまたレベルが上がった。
たぶん裸で胸を押し当てられているからボーナスポイントが入ったのだろう。
悪くない。
大きな胸には夢が詰まってるってのは本当だったらしい。
初めての夜を終えて気付いた。
結局のところ、私の本懐はこれだったのだ。
女性を愛し、女性に愛される。
こんなことなら、もっと早くチートを使うべきだった。
ごめんよ女神様。これからは軽率にチートを使い倒して女神様の言葉に従うよ。
なんて決意は置いといて、ともかくホテルを出よう。本当はもっとあれこれしたいけどチェックアウトの時間が迫ってる。
服を着て、鍵を持って、部屋を出て、フロントに鍵を返して……
「あのっ、もう少し滞在してくれませんか?」
突拍子もないことを言い出したのは隣で体を寄せて甘えてくるお姉さんではない。
今しがた鍵を差し出した先の受付さんである。その手は鍵ごと私の手を握っている。
「突然ごめんなさい。でも、なぜだかこの手を離したくなくて……あたし、どうちゃったんだろう」
握られた手から熱と緊張が伝わってくる。ついでにレベルも上がっている。
それなら答えは一つしかない。
「ありがとう。私を好きになってくれたのね」
「す、好きだなんてそんな……」
「違うの?」
「……違い、ません」
「決まりね」
差し出した鍵をそのまま引き戻し、両手に花を添えて私は部屋へと逆戻りした。
お姉さんの方も嫉妬なんてすることなく「またレイナちゃんに可愛がってもらえるのね……うふふ、楽しみ!」とノリノリだったので問題はなさそうだ。
ちなみにこの受付さんはホテルのオーナーだったらしく、料金はタダにしてくれた。
お礼としてたっぷり愛してあげて、たっぷりレベルを上げさせてもらった。
* * * * *
それから私は瞬く間にハーレムを形成していった。
なにせチートを解放したままその辺を適当に歩くだけでいいんだから楽な仕事だ。
レベルだってパッと見てもいくつかわからないくらいの桁数になっている。
だからモンスターも相手にならない。戦う以前の問題で、軽く睨んでやればどんな凶暴な魔物も本能で危険を察して逃げていく。
学者という戦闘力が低いジョブでも関係ない。レベルとステータスさえ高ければ魔法使いだってラスボスを一撃で殴り倒すことも可能なんだから。
モンスターに怯える必要もなくなって移動もしやすくなったので、あちこちの国を巡っては女の子を狙い撃ちし続けた。
身分や地位も関係なく私に惚れてくれるので旅費の心配もいらない。もちろん対価として私は愛と快楽を提供し、レベルアップというお釣りをいただいてしまう。
そんなことをしていたせいか、いつしか私の噂は世界を飛び交うようになった。
私が来るのを待っていた、なんて子がいたのは嬉しかったなあ……だから張り切っちゃって足腰立たなくしちゃったなあ……それでも喜んでくれたっけなあ……
あとは向こうから私に会いに来てくれたパターンもあった。
それも嬉しかったんだけど、意外というか予想外な来訪者もいたりして。
「レイナ……久しぶりだな」
私を追放した勇者だった。賢者と騎士も一緒で、見たことない子もいる。私が抜けた穴を埋めてくれたのだろう。
「ええ、久しぶり。どうしたの? 急に謁見を申し込むなんて。調整するの大変だったのよ」
今の私は誰もが気軽に会えるような存在ではない。多くの女性に愛を与え、愛されるのが私の使命。無駄な時間など一秒たりともないのだから。
「……人類と魔族の間で和平条約が結ばれた」
「知ってる。私がそうさせたから」
ハーレムを広げる過程で魔族領にも手を伸ばしたのはいつのことだったか。
魔族とはいえ根底は女性。私に逆らえる者は誰一人としていなかった。
それは魔王も例外ではない。彼女もあっさり私のハーレムへと加わり、魔族の王である証の角を撫でてあげるだけで甘い声を聞かせてくれる可愛い子猫ちゃんになっている。
だから私の言葉も簡単に受け入れてくれた。
人間との争いなんかやめて仲良くしようよ、と言えばすぐに頷いて和平会談の席に着いてくれた。
ちなみに人類側の代表者である女王様も既に懐柔済み。政務で疲れた日にはすぐ私に会いたがる甘えんぼさんなのが嬉しい悩みどころ。
そんなわけで。
いつ始まったかもわからない人類と魔族の戦争は、私が手引きしたことであっさりと終結を迎えたのだ。
今では人間も魔物も関係なく平和な生活を送り、なんなら異種族間の恋愛もちらほら出てきているらしい。
種族は違えど同じ女性。いいじゃないか。新時代の象徴としてどんどんカップルになってほしい。
カップルといえば、ハーレムメンバーの中でもいい雰囲気が出来上がっていたりする。
止めはしないし、なんなら推奨もしているから複数プレイをセッティングすることも多い。
理由はちゃんとある。
私は一人しかいないんだから、いくらチートがあると言っても全員を毎日相手にするのは物理的に不可能。
必然的に時間の格差が生まれてしまう。もちろん全員を愛すると決めたからこそハーレムを作ったわけだけど、手が回らない部分はどうしても出てくるもの。
そうして寂しい思いをする子ができてしまうなら、気を紛らわせる意味でも他の相手を見つけて楽しんでもらう方がいい。
私の気も楽だし、女の子同士が仲良くしてるのを見てると心がほっこりして眼福を感じられる。
どうやら私は自分が当事者でも観察者でも楽しめるタイプらしい。
理想の楽園に君臨する私は、毎日が幸せすぎて常に微笑みを浮かべるようになった。
だけど、目の前にいる勇者は苦々しく唇を噛んでいる。
その理由は絶望か、苦悩か、執着か。
「私たちが旅をする理由もなくなってしまった……」
勇者は魔王を倒すために選ばれ、旅をして、強くなっていった。
その目的を私は横取りした。
誰よりも強くなったから。
私を無力と切り捨てたこの子たちよりも。
だから勇者一行の活動原理を奪い取り、握り潰した。
私の存在をその身に、その心に、その存在に刻むため。
必要なのは、もう一押し。
「それで用件は? 何を望んで私に会おうと思ったの?」
近寄って目線を合わせる。
それだけで変化は明らかだった。勇者一行が揃って頬を上気させて瞳を潤ませていく。
私のチートに勝てる女性なんてこの世に存在しない。
これは女神様に授けられた力なんだから。
「……わ、私たちも、レイナのハーレムに入れてほしい」
「言いたいことはそれだけ? それよりも先に言わなきゃいけないことがあるんじゃない?」
口調は柔らかく、微笑みは崩さず。
けれど言葉は確実に届き、的確な場所へ突き刺さる。
私にはその感覚が手に取るようにわかった。
「……私たちが悪かった。レイナを、いやレイナ様を不要だなどと言ったのは間違いでした。どうか、どうか……私たちを許してください」
言い切った勇者ちゃんが頭を下げるのと同時に、他の三人もそれに続いた。
すかさず私はしゃがみ込み、勇者ちゃんの泣きそうな顔に笑みを向ける。
「うん、いいよ。許してあげる」
「あ、ありがとうございます……」
「ようこそ、私のハーレムへ」
手を差し出してもためらいがあるのか取ろうとしないので、私から勇者ちゃんの手を掴む。
顔のいい女が真っ赤になってる姿はいつ見ても楽しくて、可愛いと思えてしまう。
そう、勇者パーティーの皆はどれも可愛いのだ。
勇者ちゃんは羨ましいくらい起伏に富んだ体をしているし、賢者ちゃんは声が高くて可愛いからどんな風に泣いてくれるのか楽しみだし、騎士ちゃんはツリ目でショートカットっていう私の趣味ど真ん中の顔だし、新人ちゃんは深窓の令嬢みたいな姿で期待値がストップ高だ。
もちろん可愛いのは見た目だけじゃない。
かつて私を切り捨てておきながら、今はその切り捨てた相手を求めてこんなに物欲しそうな目をしている――
そんな本能に逆らえない精神が可愛い。いじらしい。愛でたくなる。
だから手放す選択肢なんかない。
道が一つしかないのは私もこの子たちも同じ。言ってみれば運命共同体。
これからずっと一緒なんだから、その言葉はきっと間違ってない。
「ほら、おいで」
促せば、四人がおずおずと私に体を預けてくる。
私はハーレムの主として、新人たちをぎゅっと抱き締めた。
望むのであれば受け入れてあげる。愛を求められたら愛を与える。
それが私という存在。ハーレムを築き、主として君臨する者の義務。
でも、愛の形は一つじゃない。
循環するのは愛だけじゃない。
私の心に刻み込まれたあの仕打ちは今も忘れていない。
とりあえず、この子たちは他の子じゃできないことを試すモルモットにでもしておこう。
たとえば……そう、ずっと私のオーラを全力で浴びせ続けながら愛してあげたらどうなるんだろう。
壊れて発情しっ放しとかになっちゃうのかな……とても興味深い。
文句ないよね?
いらないと切り捨てたのはそっちなんだから、外様以下の扱いでも満足でしょ?
私に見捨てられる方がよっぽど怖いもんね?
世界は平和になった。
無益な争いは消え、私という存在を軸にして世界は回り続ける。
でも終わりじゃない。
わからないことはまだ多い。知りたいこともたくさんある。やりたいことは数知れず。
世界を手中に収めてもまだ足りない。
私の力はこんなところじゃ終われない。
まずは新人歓迎会を開こうか。
もちろん「意味深」な方向で。
ハーレムの皆で、いーっぱい「可愛がって」あげるからね。