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誘拐事件の真相2






「さてと・・・」




前野さんの家に着いた

着いたはいいんだけど・・・




「入りづらい」




高級住宅と言っても私の家みたいに普通の一軒家は所々ある

でも前野さんの家は政治家の家ですっていうぐらいデカくてお金持ちっていう感じが否めない




確かお嬢様だって言ってたよね

うーんとりあえずインターホン押すか




迷ってても仕方がないので、思い切って押してみる

ピンポーンと一般的なインターホンが鳴ったあと、しばらくすると女性の声が聞こえてきた




「はい?どちら様」

「すみません、A大学のものなんですが、前野さんのお宅で間違いないですか?」

「そうですが?」

「私松本というものですが、前野さんに借りていたノートを代行で返しに来ました」




大事な娘さんが誘拐されたとなれば、私の訪問はかなりお節介かもしれないと覚悟していたけど、思ったよりも淡々とした声が返ってきたため拍子抜けした

誘拐って嘘なのかな?まさか・・・




「わざわざごめんなさいね。今開けますので、中に入ってきてくださる?」

「あ、はい」




そう言われた次の瞬間カチャと扉の開錠音がなる

扉に触れればスッと扉は簡単に開いた




玄関と門構えまでの距離はそんなに遠くない

でも、近くの庭は軽くキャッチボールができるくらい広かった

金持ちはやっぱ住んでる世界が違うんだなー




玄関につくと見計ったように扉が開く

すると中からロングドレスをきた女性が出てきた




なんというか・・・あかっ

目がチカチカするほど眩しい赤色に染まったドレスを着ているその女性は見た目からして少しキツイ性格してそうだなと思った

初対面の人に対してかなり失礼だけど





「こんにちは」

「こ、こんにちは。あのこれ」

「あぁ、これ」




なにこれっていう風に受け取る母親と思われる女性

娘の私物なら大事に扱いそうだけど、まるでゴミでも見ているような感じだ

今娘さんいないんだよね?全然心配していますって顔じゃないんだけど




ノートを手渡す。すると少しだけ女性と手が触れたーーーーー







『最後の最後まで迷惑かけるのね、あのガキ。本当ムカつくわ』






「っ!」





脳裏に女性の声が響く

それは目の前の女性と同じ声で、とても冷たい




私はとっさに女性の腕を掴んだ




「ちょ、何?!」

「・・・」







『今すぐ出ていきなさいよ!あんたなんかいない方がいいわ』

『そんなっ』

『あんたがいるから私は愛されないじゃないの!あんたのせいでっ』

『いやっ、やめて!』

『仁さんがあんたのことばかり見るから!あんたさえいなければ』

『お父さんっ』

『うるさいっ!』







『おい由香は?』

『それが、これ・・・』

『っ!?』

『私どうしていいか分からなくて!』

『なんで早く知らせなかった!警察は?!』

『今連絡したわ。今から来るそうよ』

『そんなっ、由香・・・』






ーーーーーーーーー

ーーーー




「あーそういうこと」

「なんなのよ!離しなさいよ」




怯えた表情で私の手を振り払う目の前の女

今日は最低女に巡り合う日なのか、私は運が悪い

でもこれで大体の詳細はわかった




「娘さんは今どこにいるんですか?」

「なんなのさっきから!失礼じゃなくて?」

「質問に答えなさいよおばさん」

「なっ?おばさん?!」




気の強いおばさんは私の発言に憤怒する

こんなバカそうな女、おばさんで十分だわ




「前野さんはどこ?」

「知らないわよ!誘拐されたってニュースになってるでしょ?」

「誘拐されたわりには表情が全然暗くないけど?むしろ喜んでる?」

「何馬鹿なこと言って、」




狼狽るおばさん

ここまで深入りする気はなかったけど、事があれだからしょうがない

てか私の気持ちが治まらない



「母親なんだから、心配するのは当然でしょ?今だって気が気じゃないわ」

「そんな感じ微塵も感じられないけど?それに誘拐されたわけじゃないんでしょ?彼女は自分から出ていったんだから」

「何言って、」

「あぁ違うか。あんたが追い出したんだっけ?」

「っ?!」




図星をつかれたおばさんはなお狼狽る

なぜ何も知らない小娘が知っているのかと疑問に思っているようだった




彼女、前野さんは誘拐されたわけじゃない

このおばさんの暴力からただ逃げただけだ

日々続くDVに耐えきれなくなったのだろう

それでも父の愛した人だからと我慢していたのに、この仕打ちだ

仕舞いにはこのおばさん、誘拐事件にでっち上げて旦那さんからお金巻き上げてるし、マジ最低だ




「お金も返した方がいいんじゃない?バレる前に早くした方がいいよ」

「なんなのよあんた。なんで知ってるのよ・・・」

「顔面蒼白。そんなになるんだったら最初からしなきゃいいのに」




顔面真っ青になるおばさん

まるで化け物でも見たかの様な表情をしている

さっきまで綺麗にしていたのに髪は乱れ、元の姿は分からなくなっていた




「別に他人のことだから、チクったりとかはしないけどさー。最低なことしてるって自覚持ちなよ?」

「・・・」

「それじゃノート返したから」




警察にチクろうとは思わない

てかまず証拠がないから、どうすることもできない

由香さんももう大人だ

出ていったのなら、しばらくしたら帰ってくるでしょ




「本当に、知らないのよ・・・」

「は?」

「いつの間にか消えてたんだから・・・私は悪くないわ」

「悪くないってあんたね、」




まるで自分は追い出してないっていう言いぐさだ

反省もできないのかこのおばさん

怒り通り越して呆れるわ、本当




「はぁ・・・付き合ってらんない」




崩れるおばさんを置いて玄関を出る

他人のいざこざに付き合ってやるほど私も暇じゃないしね

おばさんは気付いてないのか、私を気にすることなく、ぶつぶつと何かを呟いていた






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