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前世の記憶が戻ったものの、婚約破棄された後でした。ヒロインも自力でざまぁ返しした後でした。これからなにしましょう。

作者: 下菊みこと

前世の記憶が戻ったものの、婚約破棄された後でした。ヒロインも自力でざまぁ返しした後でした。これからなにしましょう。

「…幸せになるのよ」


ふと、亡き母の言葉を思い出す。…いや、違う、お母様は今も元気に社交界に繰り出しているじゃないか。死んでなんかいない。


「お父さんとお母さんはいつも玲奈を見守っているよ」


ふと、亡き父の言葉を思い出す。…あれ、違う、お父様は自分のことをお父さん、なんて言わない。


あれ、私、なんでこんな天蓋付きのベッドで寝てるの?…なんで私こんなことを考えているんだろう。いつもこのベッドで寝てるのに。


だめだ、変な夢を見たせいか記憶が混乱してる。…あれ、変な夢ってなんだっけ。







ー…


思い出した。


私はセレスティーヌ・ヴィルアルドゥアン。公爵令嬢であり、この国の王太子の婚約者“だった”。


そして。


転生者だ。といっても今思い出したばかりだけれど。


前世の私は、日本という国で乙女ゲームという遊戯にはまっていた。そして事故に遭い、父と母に庇われて一時的には命拾いしたものの、結局その後助からずにこの世界に転生したのだ。この世界は、前世で遊んでいた乙女ゲームの世界そっくりだった。


その乙女ゲームでは、ヒロイン、セシル・ポミエが王太子、ガエル・ド・ブルボンを始めとして数多くの貴公子と恋をする。逆ハーレムルート、なんていうのもあった。


そして、私が生きる現実であるはずのこの世界でも、セシル・ポミエは現れた。私の婚約者であったガエル様を含めて数多くの貴公子と恋に落ち、見事に逆ハーレムを築いていた。


その乙女ゲームの記憶がなかった私は、平民であるセシルは何も知らずに貴公子達に囲われそうになっているのだろうと考え、セシルが悪意のある噂を流されていればそれを正し、セシル自身にももっと考えて行動するように注意した。ところが、セシルはそれを良く思わなかったようで、わざわざ自分で悪い噂を流したり、余計に貴公子達といちゃいちゃするようになった。私が諦めてセシルに絡まなくなると、自作自演し、私があたかもセシルを虐めたように装ってガエル様に言いつけた。ガエル様は公衆の面前で私との婚約破棄を言い渡し、私を身分剥奪のうえ国外追放すると言った。今考えればセシルも転生者で、悪役令嬢である私を陥れようとしたのだろう。


しかしそんなことを知らない私は、あまりのセシルの所業に頭がきて、国王陛下に直接訴えた。


「王太子殿下を始めとして、数々の貴公子達がひとりの平民に籠絡されています。これは由々しき事態です。王太子殿下を退位させ、王太子位を第二王子殿下に譲るべきかと。さらに、他に籠絡された貴公子達も次男などに爵位を譲らせるべきだと思います」


「…ああ、話は聞いておる。すまんな、セレスティーヌよ。バカな息子が迷惑をかけた。その辺はお前の進言も加味して考える。お前のこともちゃんと守るから安心していなさい。今までよく王太子の婚約者として、この国のために尽くしてくれた。ありがとう」


「もったいないお言葉です、ありがとうございます」


とまあ、そういうことでセシルの逆ハーレムは崩壊した。セシルの逆ハーレムメンバーが地位を失うとセシルはみんなを捨てて他の令息方に擦り寄り、それを重く見た国王陛下によって牢に入れられた。内乱罪、らしい。


…ということで、前世の記憶が戻ったものの、婚約破棄された後でした。ヒロインも自力でざまぁ返しした後でした。これからなにしましょう。


とりあえず前世の趣味のお菓子作りでもしようかな。


ー…


ということで、早速まったりスローライフ中です。婚約者探し?どうせお父様が用意した人と一緒になるんだろうから大丈夫大丈夫。


「お前さぁ、いい加減学園に戻ってきたら?」


そう私にいうのは幼馴染で侯爵令息のジルベール・ギレム。私がガエル様の婚約者になるまでは、私の婚約者候補だった。


「そうは言うけど、まだ悪意まみれの噂だらけでしょ?」


「そんなの俺が守ってやるよ」


意味もなく自信満々なジルには悪いけど、私はまだ学園に戻るつもりはない。


「でも、学園の寮に戻ったらお菓子が焼けなくなるわよ?」


「えっ…もったいない!やっぱり卒業までこのままでいいんじゃね?」


責任感のかけらもない言葉を投げつけてくるジルは、美味しそうに私の作ったお菓子を頬張る。まったくもう。


「そういえばお前聞いた?」


「なにを?」


「俺たち、婚約するんだって」


思わず口に含んだ紅茶でむせる。なんだそれ聞いてない。


「え!?本当に!?」


「ん。俺は嬉しいけど、お前はどうよ?」


毎日でも美味いお菓子が食えるとか最高!とジル。もう!ロマンのかけらもないわね!


「…まあ、嬉しいけど」


…こういうジルの気安いところが好きだ。これからゆっくり、ジルに恋をしていければと思う。


「あれ?脈あり?もっと梃子摺るかと思ったんだけど」


「なに?なんか言った?」


「なんでもなぁーい!」


まあ、たまにはこういう恋の始まりも、一つの選択肢だよね!


ジルは長年の片思いが叶いそうです

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